
『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 物価高でも「デフレ」なの?
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
★メールまとめ
すごい物価高。ホントにまだ「デフレ」?
★メール本文
このところの物価高は本当にいやになります。スーパーのレジに並んでいる時、だいたいこれくらいかな…」と考えた額の、ヘタすると1.5倍くらい、お金がかかります。
でも石破政権は「デフレ脱却」を唱えているそうですね。今がもしデフレなのだとしたらそこから脱却したらとんでもなくまた物価が上がるのでは…どっちがといえば、デフレにしてほしいくらいなのですが。
(三浦市 かぼちゃん(50歳 女性))さん
インフレの方がいい理由は
難しいね。なんかね、あんまり経済学者のいうスッキリした話みたいに言えなくて悪いですけど。デフレだと、価格が下がって、一般的には儲からなくなって、賃金も下がって…デフレ・スパイラルっていうんですけど、どんどん縮小してよくないね、という話をするんですね。じゃあインフレだったらいいのでしょうか。物価が上がるのに。経済学者の人がそっちの方がいいっていう理由は、会社が儲かって賃金が増えるはずだから、市場が活性化して儲かって、プラスのスパイラルになるっていうんですけど。そう思う? 残間さんは思わないと即答されました。なんかねえ、その二つぐらいの意見しかないんですよね。もちろん物価が安くなって賃金が上がって…モノが安く買えるのに潤うっていう世界があったらいいけど、論理的ではないかもしれないですね。
もっと不労所得に課税すれば
ただ閉じた中で考えてるとそれくらいしか出てこないけど、もしかしたらやり方があるとしたら、デフレ脱却っていうより…。一つはね、やっぱりいま株主を儲けさせ過ぎてるという話。その議論で出てくるのが、株の儲けにもっと課税しろという話で。それはなんでかっていうと、いま20%しか払わないで済む仕組みになってるから。だいたい1500万ぐらい以上の年収の人は、所得税とか税金全部合わせて20%以上かかってるので、お金持ちの人は株で儲けるほどお得なんです。そういう働かないで儲かってる人の話は、重ために課税してもいいだろうと。確かに20%かかって困る人もいるんですよね。たとえば、たぶんですけど、あの…大学の先生ぐらいだと税金は20%いってないんですよ。そうすると、株で儲ける方がとられちゃうって感じなんです。
NISAとIDECOの意義は
それで、NISAっていう…そのほどほどに貯める人たちには課税しませんよっていう仕組みとか、年取ってから引き出そうっていう人はIDECO。もう そもそもその部分、貯金の分には課税…所得として所得控除っていって所得から引いて、それでやりましょうっていう。普通の人用の制度はもうほとんどかからないようにしてあげたんだから…っていうところを石破さんはちゃんと説明しないで、株に課税するとかいうからマスコミの人も最近は知能が低いんじゃないか…って、きつい言葉を使いたくなるんだけど。最初からキャンキャンに叩いたでしょう。でもあれ、論理的に言うと、なんで不労所得に課税しちゃいけないんだ。もっと課税すべきだっていう議論のほうがあっていいんだと思います。石破さんは説明不足だったとは思うけど。岸田さんも説明不足だったんですよね。最初にそれ、盛り上がって言っちゃって。最初のころ同じ問題で叩かれたでしょ。だから、あれもうちょっとマジメに説明したらいいと思うんですね。
不労所得の人は儲かり過ぎ
なんか、そう、不労所得の人が儲かり過ぎ。いまの億万長者系の人とか、超億ションみたいのに住んでる人って、給料が高いわけじゃなくて、株で儲かってるわけですよね。昔はほら、土地成金だったじゃん。最近は上場成金みたいな感じになるわけでしょう。そこどんどん儲けてくださいってなると、何が起こるかっていうと、利益はそんなに上がってないわけじゃないですか。そこがバシバシに儲かってたら、ちゃんと給料上がってくから正しいインフレになるんですけど。ところがそういう風になってない。でも株主が儲けたいっていえば、当然、給料減らして人件費減らして費用減らして利益出して株価上げる…って、経営者はそうなりますよね。経営者のボーナスはほぼ全部株でもらってますから。だからそうやって株価が上がれば。じゃ俺は給料下げるから、給料ゼロでいいやって言ってもちゃんと株は上がるから儲かる構造になってるわけで。そこらへんを変えてかないと、経済学者の人が言うほど簡単じゃない気がするんですね。
「お金じゃない生き方」へのシフト
で、もうちょっとだけ言いたいのは、これ全部お金で考えてるじゃないですか。僕らのもうちょっと若い時って、こんな贅沢してなかったじゃないですか。できなかったけど、すごく不幸だったかっていうと、そうでもなかった。お金いくら使うかでそんなに幸せの度合いって変わらないから。それで、もっと下の子たちは、お金使わないように変わっていくと思うんですよね。当然、これまでの消費を続けるのが難しくなる。買い物の仕方が違う。そうやって構造が代わってくると、同じ幸せ度なのに、お金がかからないから特段賃金が上がらなくてもいいってなって、それでデフレになるかどうか知らないけど、それはもう生き方全体が変わっていく話なので、なんかもうそっちへ動き出してるんじゃないかな、って気がしてます。いまの切り口でやってるとおかしくなるんですよね。テレビで言ってることぜんぶ、中途半端で無責任だなって思うことが多い。国のトップの考えは変えられないですよ、成長しないといけないから。でも、もうそろそろ「成長しない生き方で考えてみませんか」みたいな人が出てこないと。誰もいないと思うけど。
今日は「デフレとインフレ」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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