『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「残価設定型住宅ローン」スタートから2年

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「残価設定型住宅ローン」スタートから2年

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

意外と普及しない残価設定型
ずっと残価設定ローンの話をしてきましたが、2年ぐらい経過して、どういう状況になっているでしょう。いま住宅を買う人のローンはほとんど、35年とか40年以上になってるんです。作った側としては、退職の時期からそのあと、ずーっと10年も返すのは大変だろうとおもんぱかって、残価設定型を借りる人が増えるだろうと思ってたら、実はあんまり使われていないんです。なんでかっていうと、一つは営業の方があんまり説明しないことも大きい。難しくて、っていうのもあるんです。でも、それより大きいのは、家を買うときって 何より盛り上がって気持ちが高揚してる。業界には「結婚と家を買うのは勢いがないとできない」という格言があるそうです。確かに盛り上がってるので、あんまり考えない。将来のこと。自分が30の頃を思い出してみると、60になったとき、どうしてるか…なんてあまり思わないじゃないですか。だから、案外それが魅力にならないんだって。

とはいえ住宅価格は高騰の一途
ただ、何が起きているかっていうと、2015年ぐらいから比較して、もう家の値段が3割上がってるんです。急上昇しています。それで調べてもらったら2000年ごろの住宅ローンの借りた方の平均の借入額というのが、だいたい5万社分ぐらいの平均で2800万ぐらいだったんです。ところが、これが最近は5800万。3000万も上がってる。超大手メーカーじゃなくても。この数字は、戸建てだけなので、マンションなんか入れたらもっと激しい金額になるわけです。借入額は、倍になってます。
誰も言わないんだけど、今回の選挙で一番わからなかったのは、国民が一番困ってるのは、キャベツが買えないことじゃなくて家を買えないことじゃないかと思ってて。キャベツは我慢できるじゃないですか。でも家はもう、倍の金額を借りないといけないっておかしくないですか? これやっぱり政治問題だと思うんです。国民がもっと家を買いやすくすることに知恵を使います、といった人一人もいないです。国土交通大臣を出している公明党も含めて。なんか、ものすごく失望しています。

なぜローンが借りられるのか
そんなことになっているのに、なぜローンを借りられているか、要因は二つあります。
一つは借りる方の年収が急にここへ来て1千万超えてきてるんです。これって何かっていうと、実は1千万以上の人しか買えないわけじゃなくて、奥さんの収入も足さないと買えなくなっている。それで、機械的に増えちゃうんですね。確かに足せば1千万くらいになる方、けっこういらっしゃいますよね。それで、ペアローンっていって、二人で借りないといけない、だから離婚したら相当ややこしいことになる。
もう一つは返済期間を長くしてるんです。長くしないと収入の審査が通らないので。なぜかっていうと、収入の審査っていうのは返さないといけない金額を年収で割って、それが35%以上ないといけないという考え方をします。月の払いだけ単純に減らすと審査を通るんです。それで、住宅ローンの返済期間を長くする。なので、40年はスタンダードになっちゃってて。そうすると35歳で35年借りると75歳じゃないですか。それでも足りないと80歳迄伸ばせるので。そんな方が普通になってきてるんです。

そのうち冷静になれば…
つまり「これだと借りられませんから、返済期間を長くしましょうね」と言われたら、「それだったら買えますね」ということになってるだけなので。大垣先生としてはもう、ちょっと、いいと。買うときは盛り上がってるから。
でもきっと、3年ぐらいしたら、ちょっと不安になる人がいると思いませんか。3年でならなくても、10年ぐらい経ったら…ちょっと不安になってきますよね。で、新しい制度を始めました。12月から、いくつかの大手さんと、あと実は、仙台の北洲っていう会社があって、大手さんではないんですけど、とってもいい家を作ってる。社長さんが同感してくださって「うちは全件やります」って新しい残価がはじまってるんです。こういうというところも出てきています。
新しい残価ってどういうことかというと、もう最初は残価で借りないでいいです。何でもいいから住宅ローンを借りてください。ただ、この後も残価をずっと保証しているので、いつでも残価設定型ローンに変えるときは、再度審査はいりません、そのまま言ってください、そしたら変えられますから、っていう証明書を出しています。「この証明書がある人は、いつでもJTI指定の金融機関から残価ローンを借りていまのローンから借り換えができます」という証明書を査定した家には全部つけるという風に変えました。

支払いの負担を減らすために
まだ乗ってこない会社さんも多いんですけど。これからは、この証明書を付けるかどうかが家を売る会社がどのくらいお客さんのことを考えているか、というリトマス試験紙だと思っていて。これを付けることで家が売れるようになるかどうか知らないけど、査定はしているので、つければお客さんはあとで確実に楽になります。特に追加でお金がかかるわけでもありません。そういう制度をスタートさせました。
家を買う皆さん、いま安いけど長いローンを借りるなら、借りてください。でも、こういう保証がついてる家をこれから増やしていきますので。この保証は家に付くものですから、売るときもその権利が付いていきます。長い人生、何が起こるかわかんないじゃないですか。でも、そういうのが付いていれば、みんな定年には絶対なるわけですから。苦しい時にちょっと楽になれるんじゃないか、ということで、大垣先生最後の挑戦。もうこれで国民がやらなかったらもうやめようかなと思って。40年のローン借りて、勝手に大変になってたらいいじゃん…って、だんだん思うようになってきてます。(笑)
でも、本音としては、そういう使いやすい制度を作りましたので、世論が「こういうのやるべきだ」と言ってほしいな、と思います。

今日は「残価設定型住宅ローンの現在と新制度」について考えてみました。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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