『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    湯山重行さんを迎えて

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    湯山重行さんを迎えて

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

今回は特別編。「人気建築家と考える50代からの家」の著者、湯山重行さんをゲストにお迎えした、2024年11月16日放送のダイジェストをご紹介します!

<湯山重行さん プロフィール>
1964年神奈川県生まれ。建築家・一級建築士。アトリエシゲ一級建築士事務所代表。リゾートでヴァカンスを楽しむように暮らせる「ホーム・ヴァカンス」をテーマに、開放感あふれる家づくりを得意としている。2016年に発表したシニア世代のための小ぶりな平屋「60ハウス(ロクマルハウス)」がテレビなどで話題となり、独自の視点と語り口で講演会やセミナーでも人気。

動かなかった団塊世代
残間 湯山さんて、最初の東京オリンピックの年に生まれてるのね。

湯山 そうなんですよ。

大垣 昭和39年、日本が先進国になった年ですね。

湯山 そうなんですよね、いちばん盛り上がってるときに生まれました。

大垣 「60(ロクマル)ハウス」って、いつごろから流行りだしたんですか?

湯山 本を出させていただいたのが8年前、2016年です。それから3年ぐらい、かかってだんだん認知されるようになって…。

大垣 ご本の中でJTIの借上げ制度をご紹介くださいましたが、これが20年前なんです。それで私はホントに自分が浅はかだったなと思うんですけど、当時団塊世代が60世代になってきていて、きっとこんなものを作りまくるに違いないと想像して、マイホームの後始末を考えたのですが、誰も何もしなくて(笑)。でも60ハウスを建てている人は、もはや団塊じゃないですよね。

湯山 団塊の人もいます。

大垣 2016年といえば、団塊世代は60代後半。このぐらいの年だと、もう動かなくなるでしょう。

湯山 おっしゃる通りですね。

残間 あれは、やっぱり大垣さんが読み違えたのよ。還暦になったころに、湯山さんのような方が「これからはこういう…」と提案してくれたとしても、そんなの関係ないと思ってたの。で、70の中盤になって、突然 後悔してくるの。

大垣 でも、あの当時調査をしても、既に子ども部屋は物置になってた。で、団塊の方々って、案外自分の部屋がないんですよ。だからホビールームとか書いてある、アイロン部屋みたいのがあって。男はそもそも家にいない前提のつくりになっていて…。

残間 書斎をもつのが夢です、なんて言ってたけど。結局居間で涅槃仏みたいにずっとテレビ見てるだけ。

大垣 やっぱり書斎って何かわかんなかったんだよ。ゴルフ行って、麻雀やって…。
そうするとちょっと動いてきたんですね。

湯山 今のほうが、動きます。だいたい、60代前半の人が多いですね。

大垣 そうそう、僕らは考えるもんね。やっぱり。

ローン25年世代は動けるが
残間 でもやっぱり若いころにローン組んで建てた家が、60ぐらいになると古くなるじゃない。それで建て替えようと思うんだけど、また同じような2階建てを建てたりするんですよね。

大垣 ちょうどね、僕らよりちょっと後までが、住宅ローン25年の世代。この後は35年になるから、実は案外動けない。僕らはちょうどローンもなくなって家が自分のものになるから、次に動ける。リバースモーゲージってあるじゃないですか。残間さんとかが最初に日本に普及しようとしてくださったころは、家を担保に生活費を借りようという紹介だったんだけど、いま一番多いのは、新築を手に入れるための資金なんです。戸建て新築とマンション購入を足すと、利用者の半分を越えるんです。金利しか返さなくていいので…。

残間 リバースモーゲージとリースバックをごっちゃにしてる人、多いよ。

大垣 気を付けてください、全然違うものだから…。

残間 湯山さん自身は結婚したときに…

湯山 30年ぐらい前に結婚した直後は、自分で設計事務所立ち上げたばかりだったので。自営業で1年未満なので、お金も借りられませんよね。だから安くできないかな、500万で家が建たないかなと思って、自分で設計して、見積もってもらったら、なんとか500万でできたんです。
それから時間が経って、東日本大震災の後に、500万の話を聞いていた編集者の方に「500万で家が建たないか」とお話をいただいて、2011年バージョンに書き直したんですが、500万で建てられました。なぜ500万かというと、震災で家が流された方の地震保険の金額がだいたいそのくらい。家がなくなったのにローンが残っていて、生活が立ち行かないですよね。そのときにもう一度、コンパクトな家が建てられれば生活の立て直しもきくし、ということで。

残間 いま500万なんて、とんでもないよね。

湯山 そうですね、とんでもない。

大垣 昔に比べると、3割ぐらい上がってますからね。

人生を楽しむための60ハウス
鈴木 さて、話題になった60ハウスについて伺いたいと思います。

湯山 一言でいうと、60歳から人生を楽しむためのコンパクトハウス、ですね。もともとはシニアが楽に楽しく過ごせる平屋をイメージしました。土地のない都市部なら二階建てでもいいんですけど。小さくても庭があって、開放感があって、夫婦が快適に過ごせる家。二人の個室を含む2LDKぐらいのコンパクトな平屋はいかがですか、ということを提唱してます。広さも60㎡前後です。

残間 60歳のシニアを対象にしてるのね。

大垣 どういう場所に作られる方が多いんですか?

湯山 様々ですが、前提条件として平屋は2階建てに比べて土地が倍必要なんですよね。屋根の面積も倍だし基礎も。土地も豊かじゃないといけないんです。いわゆる住宅地では、土地に対する建物の割合、建ぺい率6割が基本なんですが、そうすると土地がだいたい45坪以上、130から135㎡くらいないといけないんです。それぐらい土地がありますよ、ということであれば、可能なんです。

大垣 この仕事を始めた時に調べてみたんです。今もそうじゃないかと思うんですけど、あの当時 都市部ですと、公共交通機関で1時間ちょっと超えたあたりで通えなくなるので、そこで地価がガクンと下がる。

湯山 私、小田原なんですけど、正に、相模川を渡っちゃうと、ガクンと下がるんです。

大垣 それから地方ですと、今は違うかもしれないけど、お酒飲んだ後、代行で帰れる距離…20分ぐらい、とよく言われていて。でも地方の場合、そのぐらいの場所になるともう取引がないから、ほぼタダになると言われているような地域なんです。

おしゃれな家に建て替える
残間 ご本を拝見したら、女の人が一人で60ハウスを建てたケースで、芝生にして、自分の居室はすごく小さくして、近隣にいい影響を与えたという話が出ていましたね。この家ができたおかげで、周りもみんなきれいになったと言われたって。印象的なお話でした。

湯山 そうなんですよ。僕も一番印象に残っています。ただリフォームするだけだと、外観はそんなに変わらないですよね。ところが、建て替えちゃって、なおかつ、どうせ住むのであれば、ただ暖かいとかバリアフリーとか機能性だけじゃなく、ちょっとおしゃれじゃないといけないと思うんです。そうすると自分もなんとなく気持ちも引き締まったりとか、表に出ようとか…。

大垣 建て替えるのがいいんだ。動くんじゃなくて。

湯山 そうなんです。動いてもいいんですけど、土地はもう残債がないので。

残間 私の友達で、お母さんが亡くなって一人になって。もう売ってマンションに行こうと思ったけど、この親の家を解体して、一人だから平屋のちっちゃな家にして、その代わりちょっときれいな、周りに対しておしゃれな家にしたいな、という男の人がいて。だから紹介しようと思って。

大垣 60㎡だったら、上物だけで、そんな無茶苦茶な金額になりませんよね。

湯山 コロナ前までは、退職金とか自己資金でいけたんだけど、いまは1.5倍くらいまで上がってます。いま建物だけで2500万円から。どんなにちっちゃくても、キッチン、お風呂、お便所、必ず一つは必要ですよね。だから限度があります。

大垣 それでもだいたい2000万台だったら。60代で、自分の土地がその倍くらいの価値があればね。そうするとリバースモーゲージで全部借りられちゃうから。5000万まで貸してくれるんです。そうすると案外、月の払いが安くなりますよね。そうか、建て替えいいですね。平屋だと地震も怖くないし。

湯山 怖くないし、すぐ逃げられるし。

大垣 これ、もっと広がらないかな。

湯山 一戸建ては、かなえたかったことを、かなえられるような環境がありますよね。たとえば、フラメンコしたいとか。大声出したいとか、バイクいじりしたいとか、大型犬買いたいとか。一戸建てじゃないとできないですよね。庭で菜園つくったりとか。

残間 犬はちょっと隣近所にも…フラメンコもわかんないけど(笑)。

大垣 下をガレージみたいにしちゃって、上に住むとか。最近、洪水も多いし。

残間 そういう人いるよね、「マン・ケーブ」みたいな、自分だけの洞窟みたいにして。

リフォームは建て替えより割高!
鈴木 でも、建て替えは無理、リフォームだったら…という方もいらっしゃると思うんですけど。そういう方にお勧めのプランはありますか?

湯山 ご相談を受けるときはただ「建て替え」一辺倒でお話しするのではなく、クライアントの希望、どんな生活を送りたいのかなと伺ったうえで、アドバイスしています。極端なことをいうと、ここを売り払って駅前の中古マンションでいいんじゃないですか、といったお話もします。実際、そういう方が多いんです。8割、9割はマンションに引っ越す方が多いんですけど、中には絶対に一戸建てに住みたいという人もいますが、リフォームしか無理という方もいらっしゃいます。
でもリフォームって、新築に比べて割高なんですよね。住みながら部分的に壊さなければいけない。壊して解体して…いま解体も分別しなきゃいけないので。費用がすごく上がってしまっています。それから今度は大工さんが入って一つ一つの寸法を測ります。新築なら工場で既製品を組んでいくからいいんですけど、リフォームはすべて特注なんです。

大垣 図面もなかったりしてね。

湯山 そうなんです。それに、耐震性も、断熱性も、上げたところで新築のレベルには及ばないんです。がんばっても。

大垣 思い切って、建て替えちゃうほうがいいんだ。

湯山 そうです。

残間 雰囲気を変えるにしても、壁紙を代える程度だと…。
でも壁紙代えても人生変わらないのよ。登場人物が変わらないんだから。

大垣 壊すだけなら100万かからないくらいでしょう。こういうのに対応できる工務店さんって、けっこう増えているんですか?

湯山 リフォームは群雄割拠で大丈夫です。建て替えも大丈夫ですが、ただお値段的にね。

大垣 この「60」に対応してくれないとね。

湯山 そうですね。

「60ローン」を作ればいい
大垣 これどんどん、やったらどうかなあ。金融の仕組みとか作れそう。全然問題ないような気がします。銀行の人が、そういうことを考えるということをしなくなったのですが…簡単ですよ。そうか、それいいな。

残間 この顔つきを見ると、何かを考えだしそうな…。

大垣 もう、思いついちゃってる。ちょっと。

鈴木 リフォームがそれだけ大変なら、建て替えられる仕組みがあればいいですよね。

大垣 じゃあ、60ローンとか作ればいいんだよね。

湯山 いいですね。

大垣 やっぱり動くんだったら、60代だよね。

湯山 健康とお金と時間が3つ揃ってるのって、60代じゃないと。なかなか合わないですよね。人生の黄金期だと思うんです。健康年齢の15年とか20年というのは…。

残間 元も取れるしね。それぐらいだと、いろんな意味でね。

湯山 服を着替えるように、家も新しく着替えれば…自分の輝きが増すと思うんですよね。

大垣 でも若い子たちは、いま逆に高くなりすぎてみんな40年でローン組んでるわけ。でも25年くらいでしょ、子どもと一緒に住むのは。残り20年くらいローン返し続けて…。

湯山 この家どうするの? って

大垣 思いますよね。やっぱり家を代替わりさせてかないと…人間が動いていくようにしないと。家を代えていくんじゃないとね。そういう意味でも我々60代が「60」いっぱい作っておけば、ここ来ればいいじゃん…って。ちょっと頑丈めの「60」を。

鈴木 湯山さんの著書「人気建築家と考える50代からの家」は草思社から、1870円で発売中です。ぜひお買い求めください。ありがとうございました。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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