
東日本大震災から14年 進まない福島への帰還
3月11日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、東日本大震災の避難地域への帰還について意見を交わした。
復興税が一部の人の既得権益になっている現状
東日本大震災は、3月11日で発生から14年を迎える。東京電力福島第1原発事故で一時、全域に避難指示が出た福島県内7町村では、直近の居住人口が計約1万2300人で、震災当時の17%にとどまっている。月日の経過とともに住民の生活基盤が避難先に移り、避難が長引いた地域ほど帰還の動きは鈍い。
毎日新聞が各自治体に取材して集計した。住民登録者の約8割は、今も避難先の自治体で暮らしている。
各自治体が避難指示の解除前に設定した人口予想や目標は、軒並み達成されていない。富岡町は2020年春までに居住人口を「3000~5000人」とする目標を立てていたが、5年が過ぎた現在も届いていない。
浪江町も住民への帰還意向調査を基に5000人が住むと想定していたが、半分に満たないままだ。
(寺島アナ)「福島第1原発事故後に避難した住民の帰還が進んでいない、というこの現実ですが、田中さん、この辺りはどうお感じになっていますか?」
(田中氏)「避難先あるいは転居先で新しい生活基盤を築いた人たちが、また元の住居に戻る時には、そこで得られる期待所得が重要になると思います。そういった点で、“仕事がない”“自分の適性を活かせる職場がない”ということが大きなネックにあると思いますし、あと一部には高齢化もあると思います」
現代の日本で、被災地に住民が戻らない理由を考える。
(田中氏)「もともと日本は“被災地に元の住人が戻る”という傾向が顕著な国なんです。例えばポンペイでは火山の噴火から1700年くらい放置されたままです。それと比べたら、江戸時代の浅間山の噴火からかなり住民が戻ってきているんです」
(寺島アナ)「被害を受けましたけどね」
(田中氏)「それは地域に密着した家の制度が機能していた時代には言えたんですが、核家族化が進展して高齢化もありますから、戻りにくくなっているのは社会制度の変化からも言えるんじゃないかと思います」
また、放射線量が高かった帰還困難区域の一部を優先的に除染する「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)は6町村の計27・5平方キロに設定され、22~23年に避難指示が解除された。
だが、復興拠点の居住者はまだ計833人にとどまり、震災前のわずか5%。2年前に解除された飯舘村の復興拠点には、まだ1人も帰還していない。
6町村は復興拠点での解除5年後の人口目標を立て、国がそれを認定して国費で除染を進めたが、いずれも達成は厳しそうだ。
一方、復興拠点などから外れた帰還困難区域内で、国は帰還希望者の宅地周辺に限った「特定帰還居住区域」を新たに設定。29年末までの避難指示解除を目指し、除染が進められている。
(寺島アナ)「被災地の復興支援、さらに進んでいく計画のもと、具体的に何が必要なのか?もありますね」
(田中氏)「実態に合わせた政策を打たなきゃいけないですよね。残念ですけど、あまり戻ってくる人がいなければそれに合わせた支援策、我々国民ベースで言うと税金の在り方も含めて考えないといけないと思います。一部、復興特別税は森林環境税に鞍替えしちゃって、復興税が一部の人の既得権益になっている現状もありますから。それは高い目標を設定している一つの側面だと思います」
〈出典〉
福島、進まぬ帰還 居住人口、震災前の17% 東日本大震災14年 | 毎日新聞 (https://mainichi.jp/articles/20250310/k00/00m/040/162000c)
「おはよう寺ちゃん」は平日朝5~8時、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。