【アナコラム】斉藤一美「みのもんたのダンディズム」

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文化放送メールマガジン(毎週金曜日配信)にて連載中の「アナウンサーコラム」。週替わりで文化放送アナウンサーがコラムを担当しています。この記事では全文をご紹介!

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▼3月7日配信号 担当
斉藤一美アナウンサー

 みのもんたさんの”カバン持ち”をさせていただいたことがあります。2003~2004年のナイターオフに放送していた『斉藤一美の爆発NIGHT!』の体験企画でした。
 当時、日本一忙しい司会者としてメディアに君臨するみのさんのお世話をする方はどのようなことをなさっているのか…という興味が湧き、実現したものです。
 金曜昼「おもいッきりテレビ」から土曜昼「ウイークエンドをつかまえろ」までの足かけ二日間、本職の付き人さんの隣に居続ける形で関わらせていただきました。

 まずは汐留の日本テレビへ朝のうちに入り関係者駐車場で車をお出迎え。ご挨拶を済ませるとニッコリ微笑んだみのさんから小さめの手提げカバンを渡されたのを合図に、私は付き人さんの後を追いかけるようにエレベーターホールへ小走りで向かいました。少しでも早く上階行きのボタンを押して待ち時間を短くしなければいけません。若い頃の私にとって急ぎ足は苦にならなかったのですが、あまりにもカバンがズッシリと重かったことを記憶しています。取っ手を右手で握りながら自然と左手を底に添えてしまうほどの重量感は、みのさんの存在感そのものだったように思います。

 高級な畳が敷かれた和室の楽屋でみのさんは寛ぎながらスタッフとの打合せを終えると、マネージャーさんが持ち込んだ衣装に着替え始めました。仕立ての美しいシャツ、艶やかなネクタイ、スタイリッシュなスーツを身につけるとみのさんは付き人さんの前にやってきて直立不動。全身をデジカメで撮影してもらっていました。スタイリストも兼ねる妻の靖子さんが写真を整理して”いつ、どこで、どの服を着たのか”を把握するためです。豪放磊落な夫を支える細部への配慮を見せていただきました。

 当時の付き人さんが心に刻んだみのさんの信念は『暑い。寒い。眠い。疲れた。この四つの言葉は絶対に言わない』でした。どおりで、事務所の前に車を停め2時間近く車内でみのさんを待っていてもアクビ一つしないわけです。大いに納得しました。みのさんがあれだけのバイタリティを発揮する源はそういった部分にあったのです。

 一夜明け、土曜の日の出前に「サタデーずばッと」に出演するみのさんを赤坂・TBSの正面玄関でお迎えして、すぐさまエレベーターへ先回りしようとしたところ『あ、大丈夫。一緒に行こう』と初めて話しかけられました。足を止め、恐縮しながら隣でゆっくり歩いていると、みのさんは私を見て一言だけ小さな声でこうつぶやいたのです。

『寝なければね……稼げるんですよ(笑)』

 その瞬間、言葉はカバンよりも遥かに重く感じました。もう二十年以上経っていますが、あの時のことは忘れようがありません。私は番組でご一緒したことなどないに等しいのに”稀有なアナウンサーのダンディズム”を存分に注入された幸せ者です。みのさん、大切なことを教えて下さり本当にありがとうございました。

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