【3月3日今月のシネマログ】

【3月3日今月のシネマログ】

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上地    上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。
今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。
映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、そして映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。

荒木・東  よろしくお願いします。

上地    3月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、そして荒木さんの三人が「これはおすすめ!」と思った作品をご紹介していきます。では早速3月公開作品に注目していきましょう!まずは映画ソムリエの東紗友美さんのおすすめ作品です。お願いします。

東     はい。私が紹介するのは3月20日から公開の『ジェリーの災難』という映画です。これ、映画の中身すべて実話のお話になります。
長年アメリカに住んでいて、このアメリカの土地で成功することを夢見てきた中国系のジェリーという69歳のおじいちゃんがいます。今や妻と離婚して定年退職をしています。
育ててきた3人の息子とも離れてひとりで暮らしている状況です。ある日そんな彼のもとに中国警察から緊急の電話があり、国際的なマネーロンダリング事件の捜査でジェリー本人が第一容疑者になっていることを突然知らされるんですね。ジェリーがフロリダに持つ銀行口座を通して、128万ドルが違法に移動されているといいます。逮捕したのち、中国に強制送還されると聞いたジェリーは、中国警察のスパイとして事件の捜査に協力させられることになります。
その後数週間、銀行を監視して写真を撮ったり、極秘の送金を送ったり、さらには隠しマイクを着けて窓口係を探ったりですとか、国際的なマネーロンダリング事件に関する捜査を手伝うはずだったんですけども、数か月の間、この潜入捜査について家族に隠していたんですね。でもある時、ついに家族にこの潜入捜査をしていたことを告げることになるのですが、そこからどうなるか・・・?
というお話なんですけども、これ、すごいんですよ!まずですね、普通の余生を送っていた普通のおじいちゃん、主人公。これ自分で主演して脚本までやって!


© 2023 Forces Unseen, LLC.

上地    すごすぎる~!

東     はい。たしかに大きな災難が起きるんですけど、それを自分で映画化してスラムダンス映画祭ですとか、サンタバーバラ国際映画祭など話題の映画祭で40もの賞にノミネートされて、ものによっては最優秀男優賞も含むいろんな賞を受賞した作品なんですけど、まあ本当にひどい、ひどい災難なんです。あとでちょっと詳しくおふたりからも聞きたいんですけども。でもこの映画にみなぎる人間の立ち直る力ですとか、困難をギフトに変える方法があるんだなって教えてくれるこの力強さに、本当に私はグッときて。
もう持っていかれました。あとね、驚きの実話っていう表現は映画で古今東西たくさんあるんですけど、本当に驚きの実話だとこの話に関しては思っています。
この事件があった後、ジェリーに起きた災難があった後に、この災難をジェリーが映画化して自分で出演したりしているということなので、これ69歳でジェリーはそういう新しいことに挑戦している姿を見せてくれる映画にもなっているところがグッときて。
例えばなんですけど、私も最近そういう人の活躍を知りたくて、ちょうど調べていたんですよ。やなせたかしさん、50歳過ぎて『アンパンマン』を書き始めたのを知っています?

荒木    あっ、そうなんですか?

東     そうなんですよ。で、『アンパンマン』がテレビドラマでヒットしたのって
69歳の時らしいんですよ。あとですよ、あの地図を作ってくれた伊能忠敬、あの人50歳まで商人で、その後測量と天文学を学んで55歳の時から17年間かけてあの地図を作っているらしいんですよ。やっぱそういうのって本当に、私、今38歳なんですけど、これからまた第二の全く新しいことが始められるのかもしれないと思って、また違った勇気を自分とは世代が違う方が主人公なんですけども、ものすごく勇気をもらえる作品になっていたなあと思ってグッときました。由真さんと荒木さん、どうでした?

上地    いやあ、でも本当に挑戦するのにね、年齢は関係ないんだなって。

東     よく言うけど、本当にそうなんだなって。

上地    本当にそうだなあって。本当に強いなあっていうふうに思いましたし。最後、なんかね、温かい気持ちになって。すごくいい映画だなって思いました。

東     いや~、いいんですよね。荒木さん・・・?

荒木    まあたしかに私と同世代で・・・

上地・東  ああ、そっか~!

荒木    そういう面もあるんですけど、やっぱりでもね、年寄りになると、それなりにやっぱり若い人に従わなきゃダメだなっていう点もありますよ。いろんな面で、判断力の面とかね。人に相談するという恥ずかしさ。みんな年を取るとね、ある程度プライドを持っているから、全部自分でできると思うわけ。だけどダメなの。特にほら今、最近電話かかってきたり、いろんなところから「銀行です」とか「罰金払ってください」とかかかってくるでしょ。

東     そうなんです、そういうお話なんですよね。詐欺というかね。

荒木    そうですよね。いわゆるこれは特殊詐欺のお話なんですよ。で、騙されちゃったという、ちょっとネタバレになっちゃうと怒られると申し訳ないんですけど、そういお話を自分で経験して、自分で作ったというね、本当恥ずかしい、本来なら恥ずかしくって人にも言えないし、とても家族にも打ち明けられないことを勇気をもって打ち明けて、こういうものまでに昇華した、作品にまで。
そこがすごいですよね。由真さんなんかも、一日警察官とかやって・・・

上地    ああ、そう。この間一日警察署長で特殊詐欺の、それこそ。

東     そうだったんだ。

上地    はい、やらせてもらって。やっぱり警察官の方がおっしゃっていたのが、本当にもう年々増えているんですって。特殊詐欺の手を変え品を変え、いろんな口上手く。
本当に騙されちゃうんですって。だからやっぱり家族内でコミュニケーションをとるのがすごく大事。

荒木    だから65歳以上とかになると個人によって違うんですけども、まあ判断能力とかね、やっぱりそういうものがね、ちょっとプライドだけが強くなるみたいなところがあるので、そのあたりは気をつけないと。今、特殊詐欺、いいましたけど、日本だと年間、ちょっと2年ぐらい前で440億円ですよ。

上地    うわあ・・・

東     大企業みたいな金額になっちゃって、許せない。

荒木    そう。65歳以上の被害者の割合は78%、約80%。

上地    やっぱね、自分は大丈夫!って思っている人が一番危ないんだって。

荒木    そうなんですよ。世界で一番多いのは、ちょっとこれ本当かどうかわからない。アメリカで7000億。ほぼほぼみんな高齢者でね、もっとすごいのはアメリカの高齢者団体のAARPというところの調査によるとですね、60歳以上の被害者は4兆円だって、アメリカでは。その連邦取引委員会による被害者、被害届が出されていない被害額の見立てでは、なんと22兆円という、ちょっとにわかには信じられない金額。ほとんどが高齢者というふうにいわれるので。まあね、私も高齢者ですけど立派な。

上地    でも自分は大丈夫っていう荒木さんみたいな人は本当に・・・

荒木    あっ、もう全然。自信ある!

上地・東  ほら!

上地    危ないよ!

東     今ね、それが危ないって、警察署長やった由真さんが言っているのに。若い人も最近増えてきていますし、やっぱり互いに本当は言いにくいことで責められてくる電話かもしれないけども、相談し合ったりすることって本当に大切なんだなって。

荒木    そうですね。この映画はね、観ていただくとちょっと警察で時々見るような犯罪防止だとか交通事故防止のための映画っぽくも見られるんだよね。こういう手口がありますよ、という。他にも映画でいうと、2016年に韓国で実際に起きた事件をモチーフにした『市民警察官(正しくは捜査官)ドッキ』。これ去年ぐらいに公開だったのかな?
振り込め被害にあった主婦が詐欺メンバーに助けを求められたんですよ。いわゆる使われている人に。彼女が詐欺集団に立ち向かう姿を描いた作品なんですけども、ちょうど今やっているミヤンマー、タイ国境のいわゆるセンター。何ていうの・・・特殊詐欺マフィアのインターナショナルセンターだよね。ああいうところに行って、その使われていた人たちを救出するという作品。これも大変おもしろかったですよ。

上地    おもしろそう・・・。

荒木    まあ実話でしたけどね。中国の青島が舞台です。そのまんま。

東     見てみます。

荒木    はい。あと昔でいえば、一番私が引っかかりやすいのはロマンス詐欺だと思うんですけども。

上地・東  ・・・。

荒木    何、その間は?

上地    ロマンス詐欺~?(笑)

東     まあ・・・(笑)

荒木    『クヒオ大佐』とかありましたよね。

上地・東  ああ~!

荒木    あと『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』なんかもそうなんですけども、あなたたちもロマンス詐欺には気をつけてください。特に38歳とかね、そういうふうになるとですね、ちょっと火遊びとかしたくなるでしょ。

上地    気をつけよう(笑)

東     気をつけます(笑)でも本当にね、いろんな見方ができる映画ですし、何より勇気をもらえる、純100%本当にあった話だからこそ、ジェリーの言葉っていうのは直球に言葉に刺さるし深く残る映画になっていると思います。私が紹介したのは3月20日から公開の『ジェリーの災難』でした。

上地    続いて荒木さんのおすすめ作品をお願いします。

荒木    はい。まずこの映画のキャッチコピーからご紹介しますね。「地獄へようこそ」。

上地    おお~!恐ろしい(笑)

東     そんなんでしたっけ?(笑)うわあ、ぴったり!

荒木    そして「クズとワルしか出てこない!」ね、いいですよね。なんか我々みたいなね。

東     いやいや・・・(笑)

荒木    違うか?

上地    荒木さんだけね!

荒木    ・・・ということで、3月20日公開のタイトルは『悪い夏』というのがご紹介する作品です。北村匠海主演のちょっと群像劇っぽいですね。まあサスペンスエンターテイメントといっていいところだと思いますけども。
ストーリーからいきますね。
佐々木守くん、もちろんこれ北村くんですね、26歳。彼は市役所の福祉課に勤めています。いわゆる生活保護関連のケースワーカーということで、生活保護受給者の判断とか、管理をしているんですけども。ある日、彼は同僚の女性から職場の先輩の男性が生活保護受給者の女性に肉体関係を強要しているらしいという相談を受けます。彼は「え~?面倒くせーな」と思いながらも、断りきれずに真相究明を手伝うことになります。
そうするとその当事者、つまり先輩の男から迫られているらしい、そのシングルマザーの愛美ちゃんという、これ河合優実ちゃんがやっていますね、彼女の家を訪ねると、彼女は「いえ、そんなことはありません」と否定します。その後 彼女の家を訪ねるうちに、愛美との交際に発展してしまうんですね。ところが実はそれは裏社会、ヤクザの男、窪田正孝さんなんかがやっているんですけども、彼らが仕組んだ罠だったんですね。
実に真面目に生きてきた気弱な公務員の守くんが、どんどんどんどん転がるように破滅への道へ転落していくということを描いたのが、この長くて暑い悪夢のようなタイトルの『悪い夏』という、そういう話ですね。


©2025映画「悪い夏」製作委員会

俳優さんは北村さん、河合さんの他、竹原ピストルさんとか、毎熊さんとか生きのいい俳優さんがずいぶん出ていますよね。そして『アルプススタンドのはしの方』で有名な城定秀夫監督がメガホン、向井康介さんが脚本を取っています。これは37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した染井為人さんのミステリー小説が原作なんですよ。
昨年、いろんな賞を獲得したあの『正体』の原作もこの人なんですよね。この人、芸能マネージャーとかね、それから舞台演劇とかミュージカルのプロデューサーなんかもやっていろんなことをしてデビューした人で。私、この人の作品結構好きで、ほとんど読んでいるんですけどね。これも早いうちに読んでいて、でも原作とはこの映画、かなり違っています。

東     あっ、そうなんですね~。

荒木    うん。そもそもね、小説では主人公の佐々木守くんのイメージ、もっとなんかひ弱で小柄で、もう本当にビジュアルでいうと誰なのかな・・・のび太くんをね、26歳にしたような、ちょっと情けない感じ、だったんですよ。

上地    あっははは!

東     わかる!すごいリアル~。

荒木    ところがもっとしっかりした感じの匠海くんができちゃって、始めはちょっと違和感あったんですけど、あとでまた話しますけどね、ぴったりな役柄でしたね。
他にもね、この映画には描かれないんですが麻薬だとかね、それから同性愛なんかも、もっとエグくて、もう、毒がたくさんある、隠れているんですけど、まあ脚本家の向井さんのね、腕がいいせいか、原作の味を失わずにとても面白い群像劇になっているんですけども。
いかがでしたでしょうか、由真さん。

上地    いや~、でも本当、クズと悪い人、こんなに出てくる?!っていうぐらいだったんですけど、荒木さんがさっき言っていたように、なんか全然そこまで映画を観ているだけだと重くないっていうか。ところどころちょっと笑っちゃうような、クスッとくるような場面とかもあるし。もう最後のシーンとかも私、ちょっと爆笑しちゃいましたね。お前もクズやったんか!みたいな(笑)

荒木    そうですね。映画の方はね、どちらかというと笑いもあったりね。だからこれは悲劇と喜劇が同居しているっていうかね。

上地    そんな感じでしたね。

荒木    染井さんの言葉なんですけど、よく城定監督が理解していて上手く作っていますよね。中身はね生活保護不正受給から始まって、育児ネグレクト、恐喝、万引き、売春、無理心中、暴力、殺人。考えられるかぎりのこの世の不幸が本当にすし詰めですもんね。

東     悪のごった煮みたいな要素。ラストスパートにね、畳みかけていくにつれて。

荒木    東さんはどうでした?

東     ねー、すごかったですよね。夏の映画って、さっき『サマーフィルムにのって』ですとか出てきたけど、なんか爽やかで明るいものをパッと思い浮かぶけど、夏のあの嫌な部分、ジメっとした嫌なところ。でも夏って、ああいうところあるじゃないですか。ああいうものがスクリーンによく抽出されちゃったなっていうような、季節感とかも嫌な部分の季節感とかも捉えられていたし。

荒木    そうですよね。首筋を垂れる汗の不快感ね。

東     ああ、そうそう!

荒木    あれがよく映画を象徴しています。

東     ちょっとびっくりしたのが、結構ラストシーンが印象的な作品で、みなさんも言っているけど、ラストシーンが印象的な作品って、どんでん返しとかにわりと使われがちな印象なんですけど、最初から最後まで同じテンションで嫌なまま、もっとどんどん加速する悪みたいなのが、もうどんどん強めていく感じ。これちょっと新鮮な体感だったなという感じがしましたね。

荒木    そうですよね。役者さんについてはいかがでした?

上地    北村さんはどんどんこう、落ちていくっていうか・・・

東     闇落ち演技がね。

上地    表情がどんどん変わっていくお芝居がすごいなと思いました。

荒木    もともと目に力がある俳優さんで、その力強い目がだんだん、だんだん、こう力を失っていくっていうところがとても面白かったですけど。あんなかっこいいので「お前、童貞か?」って言われる筋合いはないよね。

上地・東  (笑)

東     でもね、今回それっぽさを・・・それっぽさってなんかおかしいけど、なんかね、出していましたよね。モテないよ感が出ていたかな。

荒木    観てしまうとね、この佐々木守くんって彼しかいないな、って思ってきちゃう。

上地・東  うんうん。

荒木    それから河合優実さんもね、今年も彼女の年かなっていう感じの演技でしたよね。まともな人間出てこなくて、まあ悪さの強弱はあるにしよ、悪い奴しか出てこないとね、東さんも言いましたけど、まあいろんなクズが集まって・・・

上地    いろんな種類の本当いろんな種類のクズを見られた。

東     いろんなクズ・・・(笑)

荒木    面白かったですよね。クズの動物園でしたよね。

東     本当に、図鑑みたいになっていましたよね。

荒木    あとね、まあそういうことばっかしじゃなくて、社会のテーマですね。社会的テーマ。セイフティネットとしての生活保護がテーマになってくるんですけども。生活保護の不正受給の問題ね。苦しくても生活保護の受給ができない人、それから本当に救済措置なのに本来救われる人がね、救われるはずの人が救われないことっていうのを見るとね、ちょっと苛立ちますよね。まあね、いろんな人間の弱さだとか制度の弱さみたいなものを同時に見せつけられたような気がした、この映画でしたね。3月20日公開の日本映画『悪い夏』というのを紹介しました。

上地    続いては私、上地由真のおすすめ作品です。私がご紹介するのは3月7日から東海3県先行公開(全国公開は3月14日)の『春の香り』という映画です。この映画はですね、実際に脳腫瘍と闘いながら漫画家を目指した坂野春香さんの実話を基にした青春ドラマになっています。
あらすじです。主人公・漫画家を目指す女子高校生の藤森ハルカ。ある日、自分が描いているマンガのキャラクターと同じ名前の少年・巧と運命的に出会います。そして二人は惹かれ合います。でもそんな幸せな時間も束の間で、ハルカは悪性脳腫瘍の再発という過酷な現実に直面してしまいます。手術の影響で右手に麻痺が残って、思うようにマンガが描けなくなってしまいます。そんな絶望の中、彼女は巧に別れを告げ、夢を諦めてしまいます。
それでも家族の愛に支えられながら懸命にリハビリを続けるハルカ。そして巧への思いを胸に、もう一度マンガを描き始めるのです。この作品のモデルとなった坂野春香さんは18歳という若さで生涯を閉じました。でも彼女は最後まで夢を追い続けた強さ、そして支えた家族の深い愛がこの映画にはたくさん詰まっていました。


© TTGlobal

ということで、私も妹がいるので、ちょっと私、お姉ちゃんに感情移入して。もし妹がね、こういうふうになったら、私はどういうふうに支えてあげられるのかなあとかいうふうに考えさせられる映画でした。どうでしたか?

東     家族の絆が素晴らしかったですね。もうお父さんもお母さんもお姉ちゃんも妹も、それぞれの気持ちが痛いほどわかる時間で、本当に目の前にいる人、大切にしないとなあと改めて日常を振り返る時間を過ごさせてくれる素敵な映画だったなと思いました。あとはですね、この映画でボーイ・ミーツ・ガール、初恋の要素があるんですけど、それを実際はなかったかもしれないようで。それを、映画を通して監督、脚本家の方がプレゼントしてくださった要素がある物語になっていて。それがまたすごく素敵だなあと思っていて。そしてそのマンガの要素が映像にもちゃんと・・・カリグラフィーっていうんですかね?
何て言ったらいいんだろう、マンガのテイストも入っているからこそ、そういうところが見やすいシーンになっていたり、とか。ドラマと、そういうマンガっぽいシーンが混ざっていて、そこらへんもまた引き込まれる映像だったなあと思いましたし。
本当に春香さんの強い生き方にはひたすら勇気をもらう時間でしたね。

荒木    難病ものというと、ちょっとあの「ここで泣くんだよ」みたいな押しつけがましい演出がちょっと鼻につく場合があるんですが、この作品に関しては、むしろ淡々と撮っていて、押しつけがましいそういった演出を、監督の力量もあるんでしょうけど、本当にさり気なく、それでいて伝わってくるという、非常に雰囲気のいい作品でしたね。
役者さん、さっきのこの姉妹はほとんど新人さんというかね、初めての映画といってもいいぐらいの人たちですけども。

東     えーっ!そうなんですか?

荒木    ふたりは、一生懸命いろんなところを見たり、その現場に行ったりして、どの実際の姉妹の気持ちを自分に入れたと。そういう努力もすごいですよね。
さっき、由真さんが妹さんがいるので、お姉ちゃんの気持ちになったというふうに言いましたけど、私はもう親の気持ちになっちゃいますよね。親の気持ちになって、もし病気だったら、自分がね・・・あ、親じゃないか、おじいちゃんか。まあいいや。

上地・東  親ね(笑)

荒木    親の気持ちになって、娘がそんなふうになったら、自分が本当に代わりたいと、そういう気持ちをお父さんなんかと共有できたなと。感情を上手くお父さんとお母さんに伝えてくれたな、と。そういう感想を持ちました。

上地    人生、長いも短いも、長さは関係ないと思いますけど、こう漫画家の夢だったり、家族の愛とか本当に楽しく幸せな日々があったことは本当になんか、良かったなというふうに思います。

荒木    そうですね。タイトルもいいですね、「春の香り」と書いて「春香」と読むというね。

東     彼女の生きてきた証のような。

荒木    はい、ということです。

上地    はい。私、上地由真がご紹介したのは3月7日から東海3県先行公開(全国公開は3月14日)の『春の香り』でした。本日紹介した3本、どれも魅力的な作品です。この春も注目の映画が続々と公開されるので、みなさんもぜひ映画館に足を運んでみてください。
それでは映画評論家の荒木久文さん、映画ソムリエの東紗友美さん、ありがとうございました。

荒木・東  ありがとうございました。



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上地由真がメインパーソナリティを務め、アシスタントとして文化放送・山田弥希寿アナウンサーが進行役を務めます。 番組では毎週テーマを設け、“由真的”テイストで進…

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