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東京大学で売れたベストセラー作家は、なぜ明治時代に注目したのか?
お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜13:00~15:30) 3月3日の放送は、ちくま新書から発売中の『歴史学はこう考える』を著した、慶應義塾大学経済学部教授で歴史家の松沢裕作氏を招いてお話を伺った。
大竹「『歴史学はこう考える』という本は『東大年間新書ランキング』第1位にもなった!すごい。私には、ちょっと難しいところもあるんですが、いろいろ伺っていこうと思います。松沢さんは大学の卒業論文で、明治時代の村についてお書きになったそうです。なぜ明治時代に注目なさったんですか」
松沢「明治の前半というのは、いろんな社会運動が起こるんですね。その中には現代の常識はちょっと考えられないような、例えば借金をした農民が、借金が返せない時に、返すのを待ってほしいと。今だったら、もちろん借りた金は返さなきゃいけないのが常識だと思うんですけど、それはおかしいだろうと。計画的に厳しいときは、借金を返すのは待ってくれて当たり前だろうと、そういうことを言って運動を起こす。そういう運動が結構起きたりするんですよ。それが現代と違うと。それが非常に面白くて、どういう理屈でこういう運動が起きてくるんだということに興味をもったのがきっかけですね」
大竹「そういう運動は、当時の農民の間で年貢がきつくなったり、そういうような事情で起きた?」
松沢「年貢というか、景気が悪くなるんですね。急に景気が悪くなって、今で言えばデフレーションですね。物価が下がっちゃう。そうすると、売る物の値段が下がっちゃいますから、その前に借りていたお金が返せなくなっちゃうんですね。それが原因で起こるという具合ですね」
大竹「大きな運動はどこで起こったんですか?」
松沢「一番大きな運動は、今で言うと東京都の多摩地域。町田とかあの辺でかなり大規模な運動が起きたり。あと有名なのは埼玉県の秩父地方で起きた『秩父事件』。これは完全に武装蜂起の形を取って起こるわけです。そういった運動が知られていますね」
大竹「それが明治時代に起きていた」
松沢「そうです。1880年代ですね」
大竹「当時は、かなり不安定な時代があって、貧富の差もかなりたくさんあって、それが広がっていったんですか?」
松沢「はい。貧富の差はもちろん、明治時代の日本社会というのは今よりも全体として貧しいわけです。不安定という点では、江戸時代の仕組みが急に壊れていってしまうわけですね」
大竹「うんうん」
松沢「のちの時代から見ると、日本の近代化はこの年にこういう制度改革があって、と教科書に書いてあるように分かるんですけれど、その中で生きている人たちからすると、先がどうなるか全然わからないわけですよね。
大竹「はい。いろんな改革があったけど、それは今まで続いてきたものが全部打ち崩されていっちゃうと」
松沢「そうです。これまで当たり前だと思っていた、標準的な社会のあり方というのが全然入れ替わってしまう。どこまで行くのか全然わからないわけですね。そういう中で不安が広がっていく。先の見えない不安みたいなものが、明治時代の特徴なんじゃないかと思っています」
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