トランプ関税 世界経済への影響は?

トランプ関税 世界経済への影響は?

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2月4日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、トランプ政権のカナダ、メキシコ、中国への関税について意見を交わした。

経済的な不合理を追求して、政治的な合理性を取るトランプ政権

アメリカのトランプ大統領は2月1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を、中国には10%の追加関税を、それぞれ課す大統領令に署名しました。課税の開始はいずれも2月4日からで、アメリカに流入する不法移民や薬物などを食い止めるための措置だとしています。

カナダ、メキシコは対抗措置の実施を明言しており、関税引き上げの応酬につながる恐れがある。

大統領令では、日本時間午後2時1分以降の輸入分から関税を適用し、不法移民などによる「米国の危機が緩和されるまで」続けるとした。

ただ、直前となったためトランプ大統領はメキシコへの関税の発動を1カ月間延期することで合意したと発表。カナダのトルドー首相とは再協議に臨むとしている。

(寺島アナ)「カナダ、メキシコ、そして中国への関税ですが、改めて田中さん、この辺りどうご覧になりますか?」

(田中氏)「メキシコが1カ月延期されていますけど、それも含めてすべて実行に移されたとしたら世界経済に与える影響は大きいです。そもそもアメリカ国民が海外から高いものを買わなきゃいけないので、そういった意味ではアメリカ経済に対してもマイナスですよね。関税の価格の上昇分を打ち消すくらいエネルギー価格を下げてアメリカ国民の家計を助けるのがトランプ政権の方針ですけど、でも簡単に石油や天然ガスが出てくるわけではないですよね? 開発しなきゃいけないので、そのときはシェールオイル、シェールガスそれぞれの生産地では深刻な環境問題、言い方を変えると訴訟問題を抱えているわけです。そういったものとの絡みで増産が簡単にできるのか?」

田中氏はエネルギー価格を下げるための現実問題を考える。

(田中氏)「トランプ政権側も分かっていますからOPECプラスに増産を要求していますが、OPECプラスはそんなことしたら価格が下落して自国の財政が悪化しちゃいますから飲めませんよね? だからアメリカが自分の思い通りにやれるかというと、そうでもない。ただメキシコに対しての1カ月の延期っていうのは、かなり面白い取引だったと思います」

田中氏はメキシコへの関税の発動が1カ月間延期した意味について指摘。

(田中氏)「すでにメキシコからの不法移民の流入は、バイデン政権の終わり、つまり去年の夏の終わりくらいから急速に減っているんですよ。たしか月に30万人くらい不法移民がいたのが、去年の終わりくらいには10万を切るくらいになっています。さらに今回、国境にメキシコ側の軍隊が派遣されることで激減しますから。そうなるとメキシコ側もトランプ政権側も成果を訴えることができる機会になると思います。そういった意味では1カ月くらいでは失うものが少ないのですが、ただこれが長期化すると話は別ですよね? 国境に軍隊を張り付けたままでは、メキシコ側にとってもお金の点で苦しくなります。またメキシコは麻薬のカルテルが色んなところで暗躍していますから、それを抑えることができるのは事実上軍隊ですからね。仮に軍隊の精鋭を国境に送ってしまうと、国内の治安が不安定化してしまうデメリットもあります。トランプ政権が関税政策をなぜやるか? 表向きは、麻薬や不法移民をシャットアウトすること。それを公約したからなんですよね」

(寺島アナ)「なるほど! 大統領選挙のときの公約ですね?」

(田中氏)「実際に今回は公約を守っているわけですよ。経済学者からすると“それはアメリカ国民にとって明らかにマイナスだろう”と分かっているんだけど、公約だからやったわけです。そしておそらく成果も出るわけです。トランプ政権の立場だと、今のところ近視眼的には大正解でしょうね。ただ長期的にはどうなのか?」

(寺島アナ)「アメリカの国や地域別の輸入額を見るとメキシコがトップ。中国が2位。そしてカナダが3位なんです。経済関係が深い3つの国との経済的な対立。これは世界的な貿易の停滞や経済成長の鈍化につながる、という指摘もありますが、田中さんこの辺りはどうでしょう?」

(田中氏)「時間が長くなればなるほど関税の悪影響が出る。その一方で、先行きは分かんないですけどサプライチェーンが大きく変化する可能性がありますが、メキシコやカナダはアメリカの隣国ですからね。最も取引額が大きくて当たり前なんですよ。国際貿易の重力理論といって、貿易量というのは距離と経済規模によって決まる、という理論です。それで言うとメキシコとカナダは距離は一番近くて、経済規模もカナダはそこそこ大きいですし。中国は遠いですけど経済規模が世界第2位です。そこら辺の国々との貿易を、政治的な思惑で不都合なことをしてしまうと、アメリカ経済にとってデメリットが大きく上回ると思います。ただ政治的には分かりません!」

田中氏はトランプ政権の政治的な思惑を指摘する。

(田中氏)「トランプ第一次政権のときも中国に対して関税政策やりましたよね? 明らかに経済的にはマイナスだと各種の統計で出てましたけど、ところが政治的にはトランプ政権に対しての支持率が上がったこともはっきりしているんです。つまり経済的な不合理を追求して、政治的な合理性を取っているのがトランプ政権なんです。そこを見誤っちゃいけないです」

 

〈出典〉
トランプ大統領 カナダ メキシコ 中国に関税 報復措置や反発も | NHKニュース (https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250202/k10014709961000.html)
カナダ・メキシコ・中国へのトランプ関税、4日から発動…「不法移民や合成麻薬の流入を阻止」 | 読売新聞オンライン(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250202-OYT1T50058/

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