日銀 追加利上げのねらいは「金融システムの安定」と「見えないインフレとの戦い」
1月28日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、日銀の追加利上げについて意見を交わした。
“円安抑制で物価上昇を防ぐ”という大義名分は、今は成り立っていません!
日銀が半年ぶりに利上げし、政策金利は17年ぶりの0.5%となった。2%超のインフレが続く中で日銀は段階的に利上げする構えだ。
日銀は1月24日まで開いた金融政策決定会合で、賃上げの動きが広がり経済・物価情勢も見通しどおりだとして政策金利を17年ぶりの水準となる0.5%程度に引き上げることを決定した。
(寺島アナ)「田中さん、このタイミングですが、改めてこれはどう評価されますか?」
(田中氏)「経済の見通しが“日銀の予想通り”とか言うんですか?これって本当におかしくて、日銀そして政府もそうですが2024年通しておそらく日本経済はマイナス成長になる可能性が高まっているわけですよね。それを2023年の終わりくらいに予想したか、というと全然そうじゃなくて、プラス成長を予想していて。3カ月に1回くらい成長見通しをするんですが、どんどん下方修正していくわけですよ。結局1%以上、下方修正する結果になったんです。そして修正するたびに“予想通り”とか言っているんですよ?いやいや修正してるじゃん!修正した後の数字を見て“予想通りでした”は絶対に間違わないじゃないですか!」
(寺島アナ)「そうですよね。全部自分が正しい方に持って行ってますもんね」
(田中氏)「例えば、自分が自動車事故を起こしたときに“事故を起こすのは予想通りです!”って言っているようなものですよ。つまり言ってみれば日本経済の実態、消費・投資・雇用などを見ないで、なんらかの原因で金利を引き上げているわけですよ」
田中氏は、日銀が追加利上げをする理由が大きく二つあると考える。
(田中氏)「一つは“金融システムの安定”。つまり銀行経営にプラスになるから、ってことです。たとえば中国が半導体や生成AI関連の銘柄を大きく下げて、日経平均もアメリカの市場も大きく不安定化させています。そのなかで日本の市場、金融株が堅調なんですよ。日銀が利上げしたから、預金金利と貸付金利の差が開く、と。それは金融機関にとって目先の利益になるわけです。そういったことを重視しているのが植田日銀です」
二つめの理由も指摘。
(田中氏)「そして二つめが“見えないインフレとの戦い”です。例えば利上げをすることによって円安を解消することができる。円安を解消できれば輸入価格が下がってインフレを抑制するだろう、という狙いがあると思います。でもそのシナリオが有効だったのはもう2年以上前ですよ。2022年はたしかに円安が物価を押し上げる影響がありました。とはいえ、物価全体の上昇の10~15%くらいだと思います。元々、エネルギーも食料も不足したから2022年頃に物価が上がったんです。そしてその影響は今も尾をひいていますが、日銀の言う“円安によって物価が上がる”という経路は今はほぼ観測できません。そう考えると“見えないインフレ”と戦っているので、“円安抑制で物価上昇を防ぐ”という大義名分は、今は成り立っていません。変な政策ですよ!」
そして田中氏は日銀の思惑を考える。
(田中氏)「植田日銀にとっては“利上げをする”ということが伝説になって、“植田総裁の功績”が日銀の歴史では高く評価されるんじゃないですか? 棒読みで言っていますけど。そうだとしたら国民の経済を忘れている、ってことですよ?」
(寺島アナ)「日銀の中しか見てない、ってことですよね?」
(田中氏)「この組織の村社会化はフジテレビのやり方とまったく同じですよ。全然国際化されていない。“日銀の政策の国際化”って海外の真似をしろって言ってるんじゃないですよ? 国民の顔を見ろ、って言っているんです!」
〈出典〉
日銀利上げ、企業投資の足かせにならず 「蓄え」600兆円 | 日本経済新聞 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB234XM0T20C25A1000000/)
日銀 追加利上げ決定 次の利上げは一段と難しい判断に | NHKニュース(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250125/k10014703181000.html)
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