『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 「不動産小口化商品」とは
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
★メールまとめ
「1千万で買える銀座の部屋」って儲かるの?
★メール本文
先日、タクシーに乗ったら座席の前に出る広告で、誰もが知ってるような銀座の超有名ビルの部屋を、「1000万から購入できる不動産小口化商品」というのの宣伝をしてました。信託受益権とかいうものらしいです。
1千万も持ってないし、難しそうなので興味もないですが、こういうのって、お金持ちだったら儲かるんでしょうか。
大垣さんが相談されたら、勧めますか? 勧めませんか?
(東村山市 大谷だけどショーヘーじゃない (49歳))さん
この手の商品を最初に作ったのは…
まだやってるんですね、こういうこと。40年ぐらい前に大垣先生が始めた商品の一つです。悪いものじゃないとは思いますが、よくわかってないといろいろメンドクサイことがあります。最初にこれを作ったのは、いつだったかな…アメリカから帰ってきたときだから、25ぐらいのときかな。カナダ大使館の裏のでっかいマンションを、一口1億で…まったく同じ「不動産小口化商品」として売り出しました。今も仕組みは同じだと思いますが、最近はブロックチェーンって言って、ビットコインみたいなやつに、こういうのを乗っけて、違うものみたいな感じで売ることもあるので、気を付けてほしいんですけど。
ビル独特の「償却」にうまみが
悪いものではありません。ただ、これは不動産を買ってるだけなんですね。かつ、通常は1千万が手元にある方が買うというよりは、800万ぐらい借金をして、残り200万ぐらいは自分のお金を入れて、やるんです。なんでかといえば、家賃が入ってきますよね。それで借りてるお金をちょっと返して、手元に少しお金が残ります。でも200万に対しての利回りと考えれば悪くない金額。なおかつ不動産を買っているのと同じなので「償却」って言って…ビルは減っていくので、減った分ぐらいは気持ちの「損」ができるんです。これは税金的にも損として認めてくれる。でも、お金が出る「損」じゃないので、その分が赤字になります。そうすると自分の給料とか、ほかの所得と赤字を相殺できる。そうするとその分だけ税金が戻ってくるというのも、ちょっとプラスになりますよ…みたいな話に、きっとなってるんじゃないかと思います。
不動産に手を出すなら
昔は土地が上がるので、そうやってじっとしてれば土地が上がるから価値も上がるよ、という感じ。今もちょっと…バブルとは言わないけど都内はずっと上がってるので、そんなにがんばらないでもそのうち必ず上がりますよ、と言ってるんですけど。でもビルって原則は減っていくものなので。やっぱり利回りが高くないと、あんまり良くないんですね。こういった商品でいろいろ問題が起きて、その反省で「不動産投資信託」って言って…「REIT」と言ってますけど、これは株のように売り買いできます。これはもう税金とか関係なくもっと小さい金額で買えるので、不動産投資をやるんだったら、普通の人はこっちを買ったほうがいいです。
不動産はヤバいときに売れない危険が
不動産をやるときに一番大事なことは、「不動産」なので、ヤバいときに売れないんです。動かないので。だから値段が下がることより、売れないことがすごく怖い。不動産が絡んでいるものを買うときは…「儲かるか」っていうのは、売る人は誰でも「儲かります」っていうと思いますけど…「売りたいときに売れますか?」「動きますか?」っていうことをすごくチェックしないと。遊び金でやってるならいいですけど、そうでないと、とても不幸なことが起こる可能性があります。
でもビックリですね、こんな古臭いものがけっこうまだまだ出てきてるんですね。我々への相談コーナーとか作ってあげたほうがいいかもしれない。最近は、いつか来た道、みたいなのがどんどん起こってて…もうみんな、忘れてるんだろうね。何十年前にあったものを。おんなじモノが出てきてます。
今日は「不動産小口化商品」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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この記事の番組情報
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
土 6:25~6:50
楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…