『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    住宅ローン、なぜ手数料が必要?

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    住宅ローン、なぜ手数料が必要?

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

★メールまとめ
住宅ローン借入時、なぜ2.2%の手数料が必要なのでしょう。

★メール本文

みずほ銀行は8月から、借入時にかかる初期費用を不要にする新たな住宅ローンの取り扱いを始めたそうです。
銀行や保証会社に借入時に支払う手数料をなくし、顧客の負担は金利のみとのこと。
住宅ローンは借入時に借入金額の2.2%を取扱手数料として徴収するタイプが主流で、商品によっては保証会社の事務手数料や保証料がかかる場合もありますよね。
そもそも住宅ローンにだけ高額の手数料、保証料がかかるのは何故なのでしょうか。
(相模原市 ロングフッサー 60歳男性)さん

まずはアメリカの住宅ローンの仕組みから
実はこれ、なんの根拠もありません。で、手数料が必要になったのがいつ頃からかな。2000年入ってもうちょっとしてからだったと思います。それまでは借りるときに1万6千円とか事務手数料だけでした。
なんでかかるようになったかといえば…私もちょっと悪いんですけど。実はアメリカでは、頭で2%ぐらい抜くんですね。なぜ抜くか、という話の前に、まずアメリカの住宅ローンの説明をします。向こうのローンは日本と全然違っていて、「何パーセント」ってないんです。たとえば、まず普通の金利が3%だとします。鈴木さんはいまちょっと手元にお金があるけれど、この後どうなるかわからないから、金利は1%にしてくださいっていうと、2%分を最初に払ってしまうことができるんです。これをpointsっていうんですけど。逆に、残間さんは「あたしはこれからの自分に賭けてる、絶対後の方が楽になるから、後は5%にしてくれていい。2%分は後で払うからその分いまカネをくれ。というのは、いま手持ちのカネがないから、頭金を払うのにちょっと多めにお金が欲しい」っていうと、rebatesといって、2%分アタマでお金もらうことができる。それで利用者は、いろいろ選べるわけですね。これをpoints and rebatesっていって、日本語にしたら「ポイントとリベート」か。だからアメリカの住宅ローンは何パーセント? って聞かれても「表の中のどこか」、としか言えないんです。もちろん決まってはいるけれど、日本みたいにはなってない。

「住宅ローン」だけを取り扱う業者
それに加えて、住宅ローンって、銀行の支店で貸すっていうよりは、ブローカーっていう人から借りるのが一般的です。アメリカでイエローページの「モーゲージ」っていうところを引くと、何ページも載ってます。これは住宅ローンだけ貸すことしかしない人。そういう人のところに行ってローンを作るんですね。そうすると、どこで返したいとかっていうと銀行のリストが書いてあって「じゃ俺いま『みずほ』に口座があるから、『みずほ』」っていう風に選べます。住宅そのものは誰が貸してるかっていうと、たぶん誰だか知らない人が最後まで貸してる。それをまた証券にしたりするので、全部バラバラに分かれてるんです。保険ってそうでしょう。もちろん生命保険会社の支店に行って買う人もいるだろうけど。新宿とかにある保険ショップとかで買うこともあるでしょう。ああいう感じで住宅ローンを借りるんですね。そこで、ブローカーたちが手数料を取らないと商売にならないので、頭でだいたい2%ぐらいがくっついてくるわけです。日本ではそんなことはないので誰も気にしてなかったんだけど…。

実は手数料を取らなくても利益は出せる
それで2000年代半ばごろの日本の話に戻ります。当時、住宅ローンってけっこう儲かるらしいぞ…みたいな話になって。冷静に考えると住宅ローンって、いったん貸したら、あと30年ぐらい引き落としだけで何にもないじゃないですか。で、やっぱり貸すときが一番大変ですよね。だから、貸すときに頑張った分だけ儲かるべきで、後はちょっとでいいんだっていう考え方がアメリカにはある。それで、実は手数料はついていてもいなくても、実はそのあともらう分の一部が、今年、利益だって出るようになってるんです。日本でも割とそういう会計をするようになってるんですけど。で、その話をたぶん私が紹介したと思うんです。
そうするとだんだん、頭のいいひとが、「それだったら大垣さんが言うみたいに、後でもらうやつを、いまペーパーで利益を出すんじゃなくて、頭でもらっちゃって後で下げるってことをやったら、お客さんには見せる金利が低くなる」ということに気づいたわけです。住宅ローンの最初は、そもそも6千万とかでかい金額が動いてるから、30万とか払っても…。結婚式のときにご祝儀ご祝儀って言われてもあまり高く思わないのと同じ感じがあって。

「初期費用不要の住宅ローン」のからくり
それで「じゃあ頭で取っちゃった方がいいんじゃない」みたいな話になって。それで2%のことは忘れた事にして「金利が低いですよ」ということにしたわけです。それが2000年の真ん中ぐらい。誰かがやりだすと、みんな「あれはいい」ということになって、今は当たり前のように2%を抜くんですけど、何か根拠があるかというと…ないです。
今回いただいたメールの話でいえば、みずほが下げるようですが、別にいいことをしているわけじゃなくて、金利が上がるんで、そのときうやむやに上げてるんだと思います。なぜかというと、2%って、期中でいうと0.1とか0.2とかそのぐらいの幅にしかならないので、そのぐらいを35年分安くして、2%をゼロにしても釣り合う。会計的には、お金をもらわなくても利益を出せる。でも案外…悪く言うつもりはないけど、いいことが起きてるわけじゃなくて、先憂後楽…ではなく、先楽後憂…先か後か、という話。だから、あまり盛り上がらなくてもいいと思います。

今日は「住宅ローンの初期費用」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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