「働かない」のではなく「働けない」人が持つ脳の問題とは?
大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日~金曜日13時~15時30分)、1月8日の放送にルポライターの鈴木大介が出演。2015年に脳梗塞を発症した鈴木が、発売中の最新刊『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』を書いた理由、自身の体験などを語った。
大竹まこと「ご自分で脳梗塞を経験されて。今回は『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』という御本をお書きになりました。鈴木さんは長く若者の貧困問題について取材されていて、これまであえて本で書いてこなかったことがあるそうですね」
鈴木大介「それの回収のためにこの本を書いたところがあります。取材記者として貧困の当事者を描いていたとき、貧困の当事者をそのまま描いてはいけない、と思ったんですね」
大竹「うん」
鈴木「なぜかというと貧困当事者に対する差別の根幹は、彼らは働けるのに働かないんじゃないか、俺らはこんなにがんばっているのになぜ働こうとしないんだ、というところがあるからなんですが。実際に貧困の当事者を取材すると、対外的に見ると五体満足で働けるのに働かない、という方がすごく多い」
大竹「はい」
鈴木「仕事をするうえで必要となるような、約束の時間を守ることができないのが常習的であったり、物事の優先順位づけが異常なほどできなくて、そのときやらなければいけないことから逃げ続けたりするなど」
大竹「うん」
鈴木「そのまま書くと自己責任論に燃料を注ぐだけ。そういった社会的に必要な習慣を学ぶような機会がなかった、生育環境が恵まれなかった、あと鬱病とかの精神疾患の症状であるとか。飲んでいる薬の副作用じゃないか、ということでボカして描写してきた」
大竹「でも本当は取材対象の人が時間を全然守ってくれなくて」
鈴木「最大13時間待ちました」
大竹「時間以外に関しても、なぜ取材対象の人たちはこんなにだらしないのか、ということをお感じになっていた。でもそこを書くと、その人の自己責任みたいなものに燃料を注ぐことになる。ボカさないといけないんじゃないか、ということで本を書いていた。しかし鈴木さんは脳梗塞になったことで、いろんなことが見えてきた、と」
鈴木「すごくとんちんかんなことをしていた、と思います。がんばって働こうとしているのに周囲から働く気がないように見えてしまう。それなら、なぜそのように見えてしまうのか、ということを書いてあげないと差別の根本的な払拭にはならないはずだったんです。でも僕自身が脳機能障害、高次脳機能障害という後遺症を持っているんですが、当事者になってみると、まあ働けない。難しくて仕方ないんです」
大竹「働けない、ということがわかったと。働きたいという意思はあるんだけど体や脳がそのように動いてくれない、ということですか」
鈴木「そうですね。脳ってやはり情報処理の臓器なのであらゆる情報の処理ができない。入力もできない」
水谷加奈「具体的にどんなことですか?」
鈴木「今こうして話していて、『具体的にどんなことですか?』と聞かれて、『具体的』が出てくるのに5分も10分もかかったら対話になりませんよね。そういうスピードの遅さや、どのように伝わるか、と頭の中で考える、頭の中で物事を組み立てたり考えたり、ということができなくなる。『鈴木さん、次の打ち合わせいつになりますか』と言われて考えられなくなって、そのまま過換気の発作を起こすとか。そうなるとなかなか働けません」
「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午後1時~3時30分、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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