『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 長寿命住宅はどこが違う?
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
★メールまとめ
長寿命住宅とそうじゃない住宅はどこが違うのでしょう。
★メール本文
長寿命住宅と、短寿命住宅の違いはどういうところにあるのでしょう。
材料でしょうか、設計でしょうか。
それとも秘密のお札が貼ってあるとか?
(荒川区 百均大好き (50歳))
国が認定する「長寿命住宅」
お札は貼ってないかもしれませんが…。もちろん、いくつか違いがあります。
長寿命といってるもので、国が認定している「認定長期優良住宅」というのがあります。それ以外の自称長寿命もたくさんあると思いますが…。そういう制度があるので、「認定」を前提にすると、一つはやっぱり頑丈ということ。だいたい一世代が25年から30年と法律で想定してるんですけど、その3倍。90年。「百年住宅」という言い方をしているのがそれで、正確には90年なんですけど…。
「頑丈」というのは、まず劣化耐用年数といって、構造と躯体が90年くらいもつしっかりとした家ですよ、ということ。さすがに風呂釜は変えないといけないんですけど、百年ぐらいガタはこないよ、というのが一つ目ですね。
リフォームのしやすさも大切
それから耐震ですね。耐震は、一番激しいやつでなくてもいいんですけど、150年に一度くらいのマグニチュード6.5くらいのよりもうちょっとキツいやつに耐えなければダメ。最近起きている地震ならだいたい大丈夫じゃなきゃいけないということです。
もう一つ、一番大切なのは、外側はもつんだけど中を代えないといけないんで、代えやすくなっているかどうか。中を入れ替えやすく、リフォームしやすくなっていなければなりません。逆にリフォームしにくいというのは、たとえば管がグニャグニャ曲がっていたり、壁が微妙に入り組んでいたりとか、どれかを抜くとヤバいとか。
あと環境の性能も最近は要求されます。こうした基準を審査するところがいくつもあります。だいたいは建築確認をとるようなところの、ちょっと大きいようなところがやっていて、都道府県単位で認証されます。ほかにもバリアフリーの基準など、追加で入ってるものがあります。
百年建っていられる立地か
もう一つは、そのうち前面の道路が拡幅されるよ とかなってたりすると、百年持たせようと思っても道になったりするわけです。周辺の基準で、そこはずっと住宅のままですよ、となっているかどうか。最近はそれも考えないといけないねということになっています。
もちろん、コストは上がりますが、その一方でこれは、新築時の登記の値段が安くなるというメリットがあります。このところ住宅価格がものすごく高くなっていて、この先どうなるかわかりませんが、最近では「長期優良」をとる、ということが普及してきているのは確かです。
大切なのは「維持管理」
それから、もう一個ものすごく大事なのは「維持管理」です。「維持保全」という言い方をするんですけど。
最初に作ったとき頑丈というだけで、百年もつわけではありません。ちゃんと点検をしてこまめに直していくっていう、ongoingっていうんですかね。こっちのほうが案外大事です。うちの京都の実家も百年経ってますけど、大工さんがしょっちゅう、ちょこちょこ修繕をするので大丈夫なんですね。法隆寺も放ってあるわけじゃなくて、生態系みたいに修繕をし続けているので保たれている部分があります。なので、維持管理をちゃんとやんなさい、ということになっています。
60年維持管理しろといわれても…
ただちょっと面白いのは、百年住宅でも、維持管理は30年でいいんです。じゃあそれ以上はどうするんですか、でも60年やれといわれてもわからないですよね。
実は、維持管理は買った人の責任なんです。「長期優良住宅です」といいたければ30年間、買った人が維持管理をやらないければいけないんですけど、そういう風に思ってる人はたぶん一人もいなくて。大部分は建築会社のアフターケアの範囲だと思っているでしょう。もちろん事実上は作った会社がやるんですけど、ただ30年経つと、、もう作った会社さんがなくなってることがけっこうあるんです。
点検はちゃんと受けましょう
クルマだったらたぶん自動車会社が点検するものだと思いますが、そもそもクルマは30年も乗らないですよね。でも家ってめっちゃ長いので。どうすればいいと思いますか? 答えで言うと「深く考えてもわからないので、まあがんばろうね」というのが今の制度なんです。率直なところ、そうなってます。なので、買ったときはぜひ、点検はちゃんと受けないといけない。メーカーの人や工務店の人が「そろそろ点検してください」と来るので、「またアンタ何か売り込みに来てるでしょ」と言わずに、素直に点検はした方がいいということです。
残価ローンなら支払いは4分の1に
というわけでやっぱり、ホントのところ百年の住宅を作ったときに、どういう風に住んで受け継いでいくのかというソフトはまったく未開発というのが現状です。私たちが残価ローンを作ったのも、要するにホントは25年ぐらいしか住まないんじゃないかということで、その時点で引き取って、また次の人が中を全部きれいに入れ替えてって。そうすると百年を四代が買えるので、「4分の1しか買わないでいいから、楽に買えるよね」…という風に、ホントはやっていきたいんですね。
今日は「長寿命住宅の特徴」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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