【アナコラム】斉藤一美「自然体ではいられない一日」

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▼10月25日配信号 担当
斉藤一美アナウンサー

来年元日、埼玉西武ライオンズ・西口文也二軍監督が一軍監督に就任します。
今季のチームは低迷の一途を辿りながらファームは終盤までイースタンリーグの優勝を争っていました。去年に続いての好成績です。選手を育てながら勝利を重ねるという難題を、西口監督は2シーズンに渡りクリアしています。

全てが上手くいく『大安の天赦日』10月11日に一軍監督就任会見が品川プリンスホテルで行われました。勝負の世界に身を置く人々にとって何よりも験担ぎは尊ばれます。
私がこの場で座右の銘を伺うと西口監督は「そのようなものは特にないが、見ての通り自然体」と答えてくれました。
自然体とは…柔道や剣道で、体の力を抜いて自然に立つ姿勢であり、力まず気負いのない自然な態度も指します。
確かに、現役時代の西口文也投手そのものです。抑えても派手なガッツポーズなどせず、打たれてもベンチで過度にうなだれる様子を見た記憶がありません。彼の登板ゲームを実況するたび…あんな風に振る舞いたい…と思ったものです。
力む。気負う。感情を表に出す。

10月19日には西口文也監督の生きざまとは対照的なスポーツの現場に触れてきました。
箱根駅伝・予選会です。


国営昭和記念公園とその周辺で設けたハーフマラソンの距離を1チーム12人で走り、上位10人の合計タイムで争います。シード権を持っていない大学は、ここで10位以内に入らなければ箱根駅伝を走ることはできません。
すなわち、今シーズンが終わりかねない一年の総決算となるレースなのに…最高気温25度という極めて過酷な環境でした。フィニッシュラインまであと10メートルというところで意識を失い途中棄権する選手も出てしまい、今思い出してもいたたまれない気持ちになります。

結果が発表される瞬間は、とてつもなく悲喜こもごもです。

トップ通過は立教大学。
3年連続の予選会突破は初の首位というおまけつき。誰もが喜びを爆発させ、テントの前はあっという間に歓喜の渦に包まれました。

常連校の日本体育大学は4位通過。
アナウンスの瞬間はあちこちから安堵のため息が聞こえてきました。キャプテンの分須尊紀選手をはじめ何人もその場でうずくまり泣きじゃくっていたのは出場記録を”77年連続77回目”という形で継続させたからです。嗚咽する姿だけを見ていると箱根駅伝の出場権を得た大学とは思えないほどでした。彼らが背負う予選会通過への重圧は我々の想像の域を超えています。

最後の一枠・10位は順天堂大学。
大騒ぎする部員の横で、深呼吸をしてから開けた長門俊介監督の目は真っ赤で唇も震えていました。そこをグッ、とこらえて整列を促す姿はまさに”名門の将”たる振る舞いです。学生の気持ちは痛いほど分かるが順大たるものここで喜んでいる場合ではない…という心意気に触れた思いがしました。

11位は東京農業大学。
順天堂との差は、わずか、1秒。

今回の本選では大会スタッフを務め他校の勇姿を見て悔しさを募らせることで次回出場への糧としていく”予選会敗退校のその後”を伝えるのも我々メディアの使命です。農大は必ず箱根路に戻ってきます。
駅伝とて自然体で走れれば理想的なのでしょうが、箱根の予選会だけは別物。天国と地獄の分かれ目で勝負するなら感情的になっても仕方のないことでしょう。
競技としてのスポーツは思ったように事が運びません。深遠極まりない世界に、私はどっぷりと浸かっています。

<アナウンサー・斉藤一美>

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