『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 2026年に約束手形が廃止になる? ニュースを徹底解説(おとなライフ・アカデミーWEB)

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金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司(青山学院大学教授)さんと、フリープロデューサー残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。

この記事では、「大人ファンクラブってどんな番組?」という方のために、コーナー「大人ライフ・アカデミー」をもとに作成された大垣さんのレポートをお届け。ラジオとあわせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。

2021年3月20日の放送は、リスナーメールをご紹介。経産省が、約束手形の廃止を求める方針を打ち出したことを知ったレモンさんから「約束手形について教えてください」との質問。そもそも約束手形とは何で、なぜ今までは使用されてきたのでしょうか。

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●「約束手形が廃止になる」と聞いたのですが・・・

今回は、ラジオネーム「レモン」さんからいただいたご質問にお答えします。
レモンさんからは先日も質問をいただきましたね。ありがとうございます。

レモンさんの以前の質問はこちら

さて、今回の質問は「約束手形の廃止について教えてください」ということでした。

今年の2月、経済産業省が、産業界や金融界に対して約束手形の利用廃止を求める方針を打ち出したニュースについてですね。2026年をめどに廃止を求めているようです。

●約束手形とは、期日になったらお金を支払うことを約束する紙

最初に、そもそも約束手形とは何でしょうか。これは、取引の際、代金を支払うかわりに、期日に支払いを約束する証書のことです。

支払う「約束」をしているので約束手形なのですね。

残間さんは放送内で「雑誌の編集長だった頃は、支払いを約束手形でもらうことがあった」とおっしゃっていました。約束手形って、以前は一般的な支払い手段だったんですよね。

この記事をお読みの方の中にも、仕事で使ったことのある方がいらっしゃるかもしれません。

●受け取った手形をそのまま支払いに使える? 約束手形のメリット

では、約束手形は、他の支払い手段に比べて何が優れているのか。
それは、銀行を介さない形でお金のやりとりができることです。

孫請けのあるような企業なんかでは特にそれが顕著でした。

たとえばトヨタで考えてみましょう。
トヨタがまず、下請けに約束手形を切りますよね。
そうすると、下請けはその手形を使って、孫請けに対して支払いをするんです。

約束手形を使うことによって、下請けが、銀行からお金を借りることなしに他の企業に支払いがを行えました。約束手形が「お金」として使えたわけですね。

そんなふうにして、以前の日本ではかなりの額のお金が銀行の外でやりとりされていました。わりと最近まで、国内でおよそ200兆円ぐらいのお金が手形として回っていたんです。ちなみに、2021年度の一般会計予算は過去最大の額でしたが、それでも約106兆円。約束手形で出回る額がどれほど大きいかが分かりますね。

ちなみに、期日より前に約束手形を銀行に持っていくと、手数料などは引かれますが、手形を換金することも可能です。これを「手形割引」といいます。

●不渡2回で商売ができなくなる?! 約束手形の信用が高い理由とは

さて、なぜここまで約束手形が普及していたか。
それは、約束手形が非常に信用されている支払い手段だったからです。

それを象徴する例として「銀行がくれた手形用紙でしか約束手形は発行できない」というルールがあります。
これは日本独自の慣行で、こういう慣行ができる前は、文房具屋さんで手形用紙が買えました。

銀行が手形を渡せるのは、当座の預金口座を持っている客のみです。
そして、当座の預金口座を持っているのは、それなりの規模の会社だけ。
ということで、手形を発行できる会社はそれなりに信用できたわけですね。

それから、期日に支払いができない、つまり「不渡」が2回起きると、あらゆる銀行がその会社との取引を断るようになります。

商売ができなくなりますので、これは相当厳しい状況ですね。

こういう仕組みによって、約束手形の信用は非常に高いものとして維持されてきたわけです。

●発行量は全盛期の10分の1に。約束手形が使われなくなった理由

さて、そんな手形がなぜ廃止を検討されているかというと・・・。

単純に、面倒なんですよね。ハンコを押したり、発行された手形をきちんと保管しなければいけなかったり。
最盛期の80年代には年間で10億枚ぐらい発行されていたのが、今は1億枚を切る量しか発行されなくなってしまいました。

2009年ごろには、このデメリットを解消するために「電子手形」が始まったのですが、これはあまり主流にはなりませんでした。
というのも、まず銀行があまり積極的にサービスの使用を勧めませんでしたし、それから、手数料が高くて、使い勝手が悪かったんです。

そういうわけで、廃止してもいいのではないか、というぐらい使われなくなってきているのは確かなんですよね。
それに、手形がなくても中小企業はお金を回せるようになってきていますし。

ただ、今年に入って急に廃止の話が出てきたのは、おそらく昨今の「脱ハンコ」だとか、そういう流れに乗っかっているんだろうなあ、とは思うのですが・・・。

●●約束手形にかわるサービスは?

さて、面倒とはいっても、約束手形のような支払い方法が必要なのは事実です。

そこで出てくるのが、クレジットカードなどの電子決済です。
考えてみると、たとえばクレジットカードなんかは、今は支払いをせずに、期日になったときにその額を支払う「延べ払い」の方式をとっている点では、約束手形と同じことをしているわけですね。

ただ、電子決済は手形と違って「来月振り込みますよ」と約束してくれる紙が存在しません。
約束手形はまさにその紙をお金の代わりに使えることがメリットでした。電子決済ではそれができなくて、ちょっと窮屈です。

なので、最近では「紙」の代わりに使えるものとして、電子帳簿を使った仕組みが注目されるようになってきています。
電子帳簿を使って「この日までにはお金が入りそうだ」と証明できれば、その証明そのものをお金のように使うことができる、いわゆる「フィンテック」のサービスです。

近い将来、電子決済と電子帳簿を使った「次世代の約束手形」が普及する未来がくるのかもしれませんね。

そんなわけで今回は、約束手形について考えてみました。

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