『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 東京にもう一人の「母さん」を
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
今回は特別編。家事や育児など、ご家庭のことを第2のお母さんとなってサポートする「東京かあさん」を立ち上げた、元「歴史アイドル」の小日向えりさんをゲストにお迎えした、4月6日放送のダイジェストをご紹介します!
(小日向えりさん プロフィール)
・1988年、奈良県出身。横浜国立大学卒業。 「歴ドル」の草分け的存在として信州上田観光大使、 関が原観光大使、会津観光大使などを歴任する一方、 歴史グッズの通販サイト「黒船社中」を主宰。 2019年に「東京かあさん」のサービスを始め、2020年には芸能活動を引退、現在は事業家として活躍中。
歴ドルから事業家への転身
残間
なんか、嫌じゃない? 元アイドルって言われるのって。
小日向
そうですね、ちょっと恥ずかしい気持ちにはなります。
残間
悪い履歴じゃないですよ。誰でもなれるものじゃないから。
小日向
歴史アイドルは、歴史が好きな女性タレントみたいな感じで、いわゆる「アイドル」みたいな感じではなかったんですけど。
残間
でも「アイドルにしては珍しい」みたいな言い方をされるから、嫌な感じがしたわけよ。私が小日向さんの母親だったら嫌だろうなって。
鈴木
文化放送にもたびたびご出演いただいたので「あ、あの人か」と思っていただけるかということでご紹介しました。現在は事業家としてご活躍中の小日向さんですが「東京母さん」というサービスを始められたんですね。
小日向
「東京にもう一人のお母さんを持てる」という体験を提供しているサービスで、家事代行やベビーシッターの枠を超えて、家事や育児を第二のお母さんがご近所にいるような感覚でお願いできるといった、そんなサービスになっています。
大垣
来られる方も、「元・お母さん」みたいな方なんですか?
小日向
そうですね。もう、ベテランの「お母さん」。登録していただくんですけど、平均年齢は65歳、ベテラン主婦の皆様にご登録いただいて活躍してもらっています。
鈴木
ベビーシッターとは少し違って、より幅広くいろんなことをしてくださる…
残間
母さんと同じようにいろいろやってくれるんだ。
小日向
そうですね。やっぱりお母さんってすごくご家庭のことを幅広く…お掃除、お料理、育児とか、ペットのお世話とかも含めて、いろんなことをやる「総合職」だと思ってまして。利用者のメインは子育て世帯の方なんですけど。日々、目まぐるしくご家庭が変わる中で、今日は保育園の送り迎えをお願いしたい、今日は料理をお願いしたい、洗濯物たまってるからお願い! みたいな感じで。
大垣
あんまりないのかもしれませんね。ベビーシッターを頼んだら、ベビーシッターしかしてくれませんもんね。
残間
介護は介護だしね。うちも母の時に介護を頼んだけど、ほかのことは一切やってくれない。けっこう大変だった。
大垣
「資格がないとやらせません」みたいなのがあるんですか?
残間
そんなことはないよ。お手伝いさんはみんないろいろやってくれたけどね。なじむまでが大変でね。
マッチングが大切
小日向
そうですね、やっぱり慣れてきたり信頼関係ができるとすごく良いんですけど、おうちに上がってきてもらうので、最初はどんな方がくるか心配なんですよね。
大垣
割といつも同じ方が来てくださる?
小日向
そうなんです。うちは毎回同じ方が訪問してサポートする「専属制」となってます。
鈴木
そうすると安心ですよね。次はどんな方が…って思わなくていい。
大垣
最初はお見合いみたいのをするんですか?
小日向
そうですね、お見合いパック…ちょっとお試しをしていただいて。
残間
その家の流儀というか、いろいろあるからね。
大垣
残間さんが行くと、向こうから×ばっかり出てきたりして…(笑)
残間
私はものすごく家事能力、長けてるもん。時間の中で全部やれるもん。やっぱり、使うっていうか、やっていただく側も家事能力がないと、上手には回していけないよね。
大垣
でもそんなの来てもらわないとわかんないじゃん。
仕事がなくなり、元気がなくなった祖母
鈴木
立ち上げたきっかけは何かあったんですか?
小日向
もともとは…私小さいころからすごい「おばあちゃん子」なんですけど。祖母が80歳近くなってお仕事がなくなってから、元気がなくなってしまった。それでケガで入院した姿を見て、やっぱり働くことが社会との関わりだったり、元気の源だったんじゃないかと。働くことがビタミン剤だと思って、シニアの就業支援をしたいな、というところで始めました。
残間
それまでワザを磨いた女の人たちに、それをちゃんと外に出してもらおうと。
大垣
どこで募集するんですか?
小日向
メインはウェブで申し込んでいただいてます。今やっぱり皆さん、60代70代の方もほとんどスマホを持たれていて、お仕事もスマホで探されるので。そこでご登録いただいて。
残間
何人くらいいらっしゃるの? 登録してくださってる方。
小日向
いま、約2,000人…
大垣
すごい。日本中?
小日向
いえ、一都三県で…。東京、神奈川、千葉、埼玉です。
大垣
それぐらい需要があればね。
残間
マッチングしなきゃいけないからね。どういうところにどういう特性を持った人が…とか、けっこう上手にやらないと難しいね。
小日向
そうなんですよ。いろいろサービスの幅も広いので、スキルとかアクセスとか。お住まいの場所とか含めて、マッチング舞台が一生懸命、ご縁結びをしております。
家事のスキルは「宝もの」
残間
会社はみんな、あなたぐらい若い人たちなの?
小日向
そうですね、社員のみんなはけっこう同年代で。小学校からのお友達にまず入ってもらって、それからそのお友達…20代の方も含めて、同年代を中心にやっています。
残間
どんな人が「やってください」って申し込んできますか?
小日向
利用者様は…そうですね、やっぱり共働きの子育て世帯が多くて、パパもママも働いていて、育児もあって、本当に家庭とお仕事の両立をがんばっていらっしゃる、そういった、けっこうパワー夫婦みたいな方が多いです。
残間
面白いなと思うんだけど、昔…私は30年、40年、そういう方の応援を得て仕事してるじゃない? そうするとやっぱり、昔はなんかね「いや、家政婦なんですよ」みたいな言い方をしてたんだけど。おっしゃるようにスキルをちゃんと持ってる人だと、自分にちゃんと自信があるから、素晴らしい仕事をするのよね。なかなかそこに持ってくっていうのが難しいの。世の中の人は「家政婦さんだから」どうのっていうどころか、需要と供給でいうとね、足りないんですものね。
小日向
そうなんですよ。ホントに皆さん、ニーズが高まっていて、そういった、これまで家事をされてきた経験って、ホントに宝だと思っているので…。
残間
そうなのよね。
小日向
自信がないという方もけっこう多いんですけど、これまでされてきた「お母さん」というのはすごいスキルなので。
残間
でも、ちょっと面接したくらいじゃなかなかわからないよね。持ってるスキルってね。
小日向
ひとりひとりにオンラインで面談をさせていただいていて。あとはお仕事をする様子も、最初はついていって、サポートさせてもらったり、ちょっと拝見したりするんですけど。
皆さんやっぱり熟練主婦何十年という方なので、ホントにテキパキと…同時進行で煮物を作ってる間にお掃除して、みたいな…。ホントにすごいと思います。
家事の大切さを理解できる
大垣
このサービスの話を聞いていてね、65歳ぐらいの方が多いということで。いま日本全体が、おそらく年金を払う年を70歳にしたいんですよね。会社の方は70歳まで雇いなさいっていうことで努力義務ができた。で、いまその人たちの世代って、まだ大黒柱と専業主婦タイプの夫婦が多いから。女の方がね、急に働くんですかって言われても、そういうのがない中で、家事ってこれまで仕事じゃなかったんだけど、それをやってお金をもらうとどのくらいプライスがかかるのか、っていうことが明確ではなくて。こういうものが普及していくとね、外で働いてるのと同じくらい大切…というか重たいことっていうのを若い人も認識するだろうし。逆に「私、ぜんぜん職がないんで家事代行ぐらいかな」じゃなくてね、これこそ仕事とか、ちゃんとしたスキルっていう、そういうのに意識が行く大切な要素になると思います。
残間
やってもらう側もやる側も、プロフェッショナルだって思わないとね。
大垣
そういう意味では、来られてる方って、いまどんな感じで来られてるのかなって、すごく興味あるんですけど。
残間
私の世代が、そういうところに「行けばできる」みたいな世代じゃない? もしかしたら小日向さんのところに登録できるか、っていう。もうちょっと年少の人もいるけど。
そうすると、客観的に自分の「ワザ」を見てる人って少なくて。ただ「家族のために」とか、「家の幸せ、平和のために」やってきてるんだけど、実はそれを客観視すると、まあ自分の家の流儀って「こういう食材は誰かが好きだ」とかっていうのでやってる。けど、待てよ、と。今はやっぱり無農薬のものを好むお家もあれば、とかね。安いものを好む家もあれば、とか。
大垣
そうやってプロ意識が出てくるのが、面白いかもしれないですね。
残間
情報を持ってなきゃいけないし、スキルも磨いてなきゃいけないから。でもそういう人たちも、雇っていただいて、登録して、そこで訓練されていく、というのも、あるんでしょうね。
小日向
そうですね。東京母さんのお仕事を始められてから新しいことを勉強したり、整理収納アドバイザーを取ってみましたとか、薬膳を勉強しましたとか…。さらにお仕事に生かしていただく場合もありますし、これまでアレルギーのお子様に合わせた食事を作ってきた方が、そういうものを求められている方が「ほかはどこにも断られちゃったんだけど」という方とうまくマッチングできたときとか、もうすごくうれしくて。ピースがはまったというか。お母さんたちも頼りにされることがすごく生きがいになっているのかなと。ホントに元気にいきいきと、「ありがとうと言われてうれしい」と言ってくださるので。
さらに幅広い「就業支援」を
大垣
こういうのをやられてると、よく政府のナントカ委員会とかだと、「いい話だ」みたいになりがちじゃないですか。言い方悪いけど、仕事としては何もしてこなかった女の人がそうやって働き方を見つける。でもそれ、ちょっとなんかヘンだなといつも思っていて。家事そのものをやってもらえるって、ものすごく重たいことですよね。
小日向
そうですね。本当にお母さんたちのこれまでの経験っていうのは日本の宝なので、どんどん生かしていきたい。
残間
仕事ってなんか、世の中に出て働くことだけだって思ってるけども、そうじゃないんだよね。
鈴木
今後の目標などはありますか?
小日向
就業支援は間違いなくシニアの方の健康を高めて、ウェルビーイング…心も体も頭も健康になれるお仕事だと確信してます。東京母さん以外のお仕事とかも、今後、シニアの就業支援やっていけたらいいなと。男性のシニアの就業支援もしていけるといいなと思ってます。
残間
そうですよね、みんな…仕事なくなった男の人、みんなすぐ病気になるのよ。ガクッときてね。そのへんを、こういう若くて力のある人にサポートしてもらうといいですね。
小日向
大垣さんにご相談したいのが、金融資産の管理とかも、すぐには難しいですけど、ひとりひとりのシニア女性の方の「これぐらい貯金があって、あと何年生きて」という…。
大垣
いま一番ないのが「decumulation」ていうんですけどね。accumulationって「貯める」っていうことなんですけど、decumulationって「減らす」こと。いま実際に回りで騒いでいるのは、NISAとかなんとかっていうのは、全部増やす話ばっかりなんです。その方が儲かるから。でも一番大事なのは、60歳でいくらあったときに、統計的におそらく半分以上は90歳までいくので、そこまで「カネ切れにならずに死ぬ」っていうのがdecumulationっていうんですけど。これ、実はやってるとこないんです。技術もすごく磨かれてないんです。
残間
それって平均的な生活をしていて、目減りするってことではないでしょ? その人が海外旅行に行きたいとか…。
大垣
アメリカの介護の現場では、たとえば、いま30万ドルありますってなると、何歳ぐらいまで生きるかなっていうのを考えて、3分の1ぐらいは10年ぐらいで運用した方がいいですよ、とか。ここから3分の1ぐらいはすぐキャッシュにできるよう置いておきましょうとか。そういうのをちゃんとコンピューターで考えてます。
小日向
そういうの、やりたいな、すごく。
大垣
高齢者の方々の小さいお金でも、いっぱい集まるとものすごい大きいお金になるんですね。それをプロに預けて運用させてるとことかあるんですけど。日本には全然ないんです。
「こんな孫がほしかったわ」
小日向
シニアの方を一人でも多く、元気にするお手伝いができればと思ってます。いま登録者約2,000名で、すごいって言っていただけてうれしいんですけど、これからさらに何万人、何十万人と…。長い時間をかけてでもやっていけるといいなと思ってます。東京かあさん以外のお仕事を増やしたりとか、シニアの方向けのウェルビーイングになるような…心も体も豊かになれるような、そういったサービスを色々やっていけたらいいなと思います。
残間
お会いすると、さりげないじゃない。だから私、元アイドルとかって言っちゃいけないって。お母さんになったつもりで言ったんだけど、その域を全然超えてて、もう違うところに行ってるからね。今度そういう風に言われたら「違います」って言った方がいいよ。
鈴木
そもそもがご自身のおばあちゃんを元気にしたいというところから始まって、それが実現しているってことですね。
小日向
祖母もいま92歳になって、たまにテレビ電話とかするんですけども。祖母は80代のとき、なかなかお仕事できなかったのですが、いま85歳でもお仕事してくださってる方がいて。活躍の場を作れてることがうれしいです。お母さんたちにも、利用者さんにも喜んでいただけるので。私自身、生きがいだと思ってこの仕事をやっています。
残間
私もこんな孫がほしかったわ。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
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パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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