『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 家賃の「値下げ」これって妥当?
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
★メールまとめ
10年住み続けている築34年の賃貸住宅。大家が家賃を2千円下げると言ってきました。これって妥当?
★メール本文
杉並区 マク・ドナルド・ダック
同じ賃貸住宅に10年近く住み続けています。
更新料がかからない物件であることに加え、こどもが大学に自転車で通える場所でもあるので、ついつい長居してしまった感じなのですが。
今年の初めに、管理を担当している不動産屋さんが「長年お住まいいただいているので、月間の家賃を2千円下げると大家さんがいってます」と連絡してくれました。
ありがたくその言葉を受けたのですが、考えてみたら、経年劣化など考えると、もっと下げてくれていいような気もします…(1990年ですから、築34年)。
この値下げって、妥当なものなのでしょうか。
(杉並区 マク・ドナルド・ダック さん)
家賃は上がる傾向に
普通は、借りてる側がじっと黙ってれば、そのまんまで値下げなどしないです。
ただ、この1年ぐらい賃料は全国的にちょっとずつ高めになっていて、一般的なところでも家賃が少し高めでも決まるようになっています。そしてもし金利が上がれば、全体的に底上げになります。すると家賃はどうなるでしょう。実は、アパートなどを作られるときにお金を借りてる大家さんが多いんです。その場合の金利というのは、一部を除いて基本的には変動なので、住宅ローンよりは簡単に上がります。そうなると、少し家賃を高くしないといけない。金利と連動する可能性があるんです。
バブルのときもそうだった
バブルの崩壊が91年でしょう? それで宅地の値段は3分の1ぐらいになったんですけど、金利自体は94年ぐらいまで上がってたんです。そうすると家賃もずっと上がったまま。家賃の場合は下がるどころか、むしろ上がっていたんですね。だから今回、いまの感じでいうと、このところ物価の上昇と合わせて賃料が上がっています。これから新しく出てくる物件も、すっごく家が高くなってるので、当然家賃も上がってきます。それでご相談いただいたケースを考えてみると、上がらなくてもお得なんですけど、むしろ「下げます」とおっしゃっていただいている。2千円ぽっちかよというけど、杉並という、ただでさえ家賃が高めの地域で、しかもそういう趨勢のある中で下がっている。大家さんが、あんまり畳替えなどなさってなかったということだと思うんですよね。
「長く住んで」のメッセージ
大家さんが怖がられてるのは、本当は上げたいんだけど、上げちゃうと出られちゃって、そうすると空きが出て、次に募集するときは全部直さなきゃいけないということかも。きれいにしないと入ってもらえないですからね。そのお金を考えたら、長くいてくれる方がありがたい。ですから、「安くする」ということよりは、長くいてくださいね、というメッセージだと思うんですよね。この際、もうちょっと長くいらっしゃるつもりで「直して」っていうこともできるでしょうけど、ご自身で少し居心地がよくなるように「直していいですか」とおっしゃっても、受けてくださるかもしれません。そういう風にお考えになったらいかがでしょう。
今日は「家賃の値下げ・値上げ」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください
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パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…