政府は「虐殺があったことを認めています」 関東大震災と朝鮮人虐殺の歴史に迫る
お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜13:00~15:30)が9月2日に放送され、中央公論新社から発売されている『地震と虐殺 1923-2024』の著者である、ヘイトスピーチや差別・人権問題にくわしいジャーナリストの安田浩一氏がゲスト出演。本の内容について伺った。
大竹「100年前、関東大震災が起こりました。安田さんはこの『地震と虐殺』という御本をどのぐらいの時間をかけてお書きになったんですか?」
安田「本を書こうと思って取材をしたのは1年半ぐらい前からです。ただその前に、本に書く予定はなくとも、現場をなるべく回るようにして、自分なりに取材を続けてきたんです。それはもう10年近く、ずっとさまざまな場所を訪ねていました」
大竹「現場というと、東京スカイツリーの足元とか?」
安田「そうです。スカイツリーが見える荒川の河川敷であったり、あるいは千葉、埼玉、神奈川県。そして、いわゆる虐殺の起きた場所に足を運んできました」
大竹「東京大空襲で亡くなった方が確か8万5千人、関東大震災で亡くなった方が10万5千人ぐらいですか。空襲より多いっていうのは、とんでもない話ですね。虐殺があったかなかったか、いろんなことが言われております。このことに関して国はどんなことを述べているんですか?」
安田「正確な人数ではなく…、そこは出てないわけです。数えようがないってのもあるわけですけどね。ただ、日本政府の内閣府の中央防災会議というところが、虐殺があったことを認めています。これは安倍内閣時代で、震災における死者のうち、1%から数%が虐殺で亡くなっていると言うことを記録にきちんと記しているわけです。10万5千人の1%から数%と言いますと、およそ数千人と表現するべきだと思います」
大竹「なるほど。それが国が言っていることですね。東京都の小池知事は何て言ってますか?」
安田「小池さんは、虐殺があったかなかったか、あるいは、どのくらいの方が亡くなったのか、ほとんど言及してないんですね。実は毎年、昨日もそうだったんですが、9月1日は虐殺で亡くなった方、特に朝鮮人犠牲者の方々を追悼する式典が、東京・墨田区の横網町公園で行われています。その追悼式に、歴代東京都知事は毎回追悼文を送っていたわけです。1974年からずっと送ってきました。例えば、外国人差別という観点で言えば、さまざまな暴言を繰り返してきた石原慎太郎さんも追悼文は送ってきたわけです。ところが、小池知事は2016年に知事に就任し、その翌年、2017年から追悼文を送らなくなってしまったんですよ。だからもちろん昨日も送っていません。8年連続追悼文を送っていない。これは一体どういうことなのか。さまざまな場で、記者会見で、あるいは直接取材で、多くの人が聞いています。これに関して小池さんは、まず虐殺の事実に関しては、「歴史家が紐解くもの」だから、私は答えられないと言っているわけです。ただ、よく考えてみたら、歴史家は散々紐解いてきたわけですよね。少なくとも虐殺の事実がなかったとする歴史家は、私は日本では知りません。1人もいないはずです。数の問題ですと様々な議論がありますが、虐殺がなかったとする歴史家なんてどこにもいない。つまり、充分に紐解かれてきた。じゃあなぜ追悼文を送らないのか。9月1日は震災で亡くなった方々全ての法要が営まれていて、小池さんは、そこに追悼文を送ってるんですね。つまり、私は亡くなった方、すべての方を追悼している。それで追悼文も送っている。だから、わざわざ朝鮮人犠牲者に追悼文を送らなくてもいいだろう、というようなことを毎年おっしゃってるわけです。一見もっともらしいと感じる方いらっしゃるかもしれませんけども、ちょっと考えていただきたい。地震で亡くなった方は10万5千人いらっしゃる。虐殺で亡くなった方は数千人いる。虐殺で亡くなった方というのは、地震を生き延びた人なんですよ」
大竹「なるほど」
安田「地震を生き延びたにもかかわらず、地震の翌日から多くの方が殺されている。つまり、自然災害と、それから人災で全く違うわけです。自然災害の中に人災の被害者を閉じ込めて、そこで追悼するっていうのは、僕はかなり無理のある話だと思ってるんですね。ですから、小池さんは、朝鮮人犠牲者に追悼の意を示していないし、そして虐殺があったかなかったか、ということに関しても、言及を避けている。僕はこれは、今の社会の中に流れる、歴史否定の波に沿ったものなのではないかという気がします」
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