【アナコラム】斉藤一美「私は成瀬信者です」
文化放送メールマガジン(毎週金曜日配信)にて連載中の「アナウンサーコラム」。週替わりで文化放送アナウンサーがコラムを担当しています。この記事では全文をご紹介!
▼8月23日配信号 担当
斉藤一美アナウンサー
プロ野球シーズン中は小説を読む機会が激減してしまうのですが、開幕後、これは読まねばならんだろ!と感じた本がありました。
今年の本屋大賞受賞作品『成瀬は天下を取りにいく』です。
失礼を承知で申し上げると”衝動的ジャケ買い”をしました。埼玉西武ライオンズのユニフォームを着ていたからです。恥ずかしながら大賞を受賞するまで本の存在を全く存じ上げませんでした。
表紙を見た感じで……20歳前後の女性が主人公か……と思っていると口絵はこんな雰囲気なのです。
まだ中学生でした。この作品は”コロナ禍の日々を生きる中学生・成瀬あかりの成長譚”なのです。
読んでいくと…多くのクラスメートが成瀬をぶっきらぼうな性格の変わり者と思っていて奇異の目で見ているのですが、生まれた時からの親友である島崎みゆきという自分の全てを包み込む最高の理解者が存在しているからマイペースをひたすら貫きとても繊細で豊かな感性から湧き上がる強烈な好奇心で周りをどんどん成瀬色に染めてしまう…そんなパワフルな物語であることが分かります。M-1グランプリまで絡む展開はさすがに予測不可能でした笑
続編『成瀬は信じた道をいく』も刊行済み。即買いです。
成瀬シリーズでは滋賀県大津市が主な舞台となっています。地元愛が尋常ではない彼女はその後、観光大使に就任し…ここから先の話をするのは野暮なので控えましょう。ただしこれだけは断言できます。一作目よりも二作目は面白さが倍増しているのです。驚きました。おそらく成瀬あかりという稀有なキャラクターを把握したからこそ、この感動を得ることができたのです。
8月14日、ベルーナドームで行われた西武×ソフトバンクの来場者プレゼントは当日限定のオリジナルデザイン成瀬ステッカーでした!
実際はおでこに貼れるくらいのサイズです。
試合前にセレモニアルピッチを務めた作者の宮島未奈さんへ私は「今のライオンズは思うように勝てていませんがこの状況を知った成瀬は親友の島崎にどう伝えるでしょうか?」と尋ねると『成瀬は野球に詳しくないからそこまで深刻にとらえていないはずです。”まぁそういう年もあるよね”って言うと思いますね」と答えが返ってきました。愛読者なら誰もが納得するでしょう。宮島さんの中に彼女がいることが改めてよく分かって何だか嬉しくなると同時に、黒星が増えていくライオンズを応援する者の一人として少し心が軽くなりました!
ライオンズのマスコット・レオ&ライナに囲まれる宮島さん
シリーズは3作目で完結予定だそうです。大学を卒業したら彼女はどうするのか?成瀬に早く会ってみたいです!
【文化放送アナウンサー・斉藤一美】