職人の技はITで盗めるのか?「匠を受け継ぐテクノロジー」
様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが色々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。
2024年6月10日、6月17日の浜松町Innovation Culture Cafeは、「匠を受け継ぐテクノロジー」をテーマに、株式会社GRA代表取締役CEO・岩佐大輝さんと株式会社LIGHTz代表取締役CEO・乙部信吾さんをお迎えしました。岩佐さんはイチゴ栽培を、乙部さんは伝統工芸の職人さんの技術をテクノロジーで形式知化されています。
入山:伝統技能や農業における課題、岩佐さん自身はどのように考えていますか?
岩佐:まず、イチゴだけじゃなく、このままだとさくらんぼも2030年には担い手がいなくなると言われています。経済的な条件に加えて、一番は技術を習得するのに時間がかかることが原因なのですが、例えば、ある温度と光の強さがあれば、一番光合成をするという教科書的な理屈があります。さらに、レジェンド農家さんの勘と経験があるわけです。教科書的な適正温度にしても、レジェンドが「イチゴが風邪ひいてるべ」と言って、温度を上げるとイチゴが元気になったことがあります。勘と経験をリスペクトしつつ、教科書的なものを進化させることで栽培技術は、もっと進化すると考えています。
入山:言語化されていない匠の暗黙知が重要で、そこを掛け合わせることが大事なんですね。お二人が行っているのは、言葉にならない暗黙知をデジタルで形式化するから、この暗黙知をさらに深めていこうとなるんですね。他に、この暗黙知を形式化したら凄かったっていうのは、ありますか?
岩佐:「草勢」といって、太陽光が少なければ、それを欲して縦長になるし、かといって、横にペッタリ広がっても良くないわけで、理想的な苗の姿ってのがあるんです。「良い体してんなぁ」っていう。この草勢って、形式知が物凄い難しいんです。
入山:はぁ~なるほど。乙部さんいかがでしょうか?
乙部:私の一番面白かった暗黙知は、南部鉄器の職人さんに「(あなたの技術の中で)何が一番自慢できますか?」と聞いたら「俺の作った南部鉄器が一番早くお湯が沸くんだよ」って言ったんです。
田ケ原:ええ!?
乙部:「どういうことですか?」って聞いたら、「形が良ければ、火に当てた時に鉄を通じて水に熱が効率的に伝わる。そのシェイプが最もよく作り込めるのは、俺が一番だね」と自慢をしてきたのが、先ほどのお話と重なるものがありますね。
入山:乙部さんは、職人さんに話を聞いて、言語化する時はどうやって言葉を紡ぐんですか?
乙部:一番見ているのは「センス」言い換えると「違和感」その人が、何に違和感を覚えて対策を取るのか…
この後、そのさらなる具体的な話に加え、サッカー日本代表で、ブライトンの三笘選手が「なぜ、ドリブルで抜けるのか」を言語化したお話が続きます。続きはこちらから。
本日のお客様
岩佐 大輝さん
大学在学中に起業された岩佐さんは、その後東日本大震災で大きな被害を受けた故郷の復興を目的にGRAを設立。「IT×農業」でイチゴビジネスに構造変革を起こし、ひと粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。そうした取り組みが評価され、数々の賞を受賞するだけに留まらず、小学6年生用の理科の教科書で紹介された他、多数のメディアから注目が集まる。2014年より新規就農者支援事業をスタート。国内の農業の担い手を育成し、後継者不在問題の解決に尽力。
乙部 信吾さん
大学卒業後、キヤノン株式会社に入社。非球面レンズの精密研磨加工装置の開発・設計に従事され、2004年には新エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクト」に参画。 2011年にキヤノンを退職し、株式会社O2に入社。2016年に社内ベンチャーとして株式会社LIGHTzを立ち上げ、代表に就任。「熟達者AIの開発」という汎知化(はんちか)で、技能継承の事業を牽引。
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浜松町Innovation Culture Cafe
月 19:00~19:30
浜松町の路地裏にひっそりと佇むカフェ「浜松町Innovation Culture Cafe」 経営学に詳しいマスターが営むこのお店には、様々なジャンルのクリエ…