食はいかに人を幸せにするか#1『浜松町Innovation Culture Cafe』
3回目となる緊急事態宣言が発令され、この長きに渡る自粛生活で多くの人が苦境を強いられています。その中でも飲食店は非常に厳しい状況が続いています。帝国データバンクの発表によりますと、2020年の飲食店事業者の倒産件数は780件で、過去最多となっています。業態別に内訳をみてみると、最多となったのが「酒場・ビヤホール」で、全体の24.2%を占める189件もの店が倒産に追い込まれてしまったそうです。こうした背景には、飲み会を始めとするビジネス利用の減少や、地方自治体による夜の時短営業要請などが影響していると考えられます。実際に現在も東京都では、酒類やカラオケを提供する飲食店に対して休業要請が出されており、営業する場合はそれらの提供を取りやめる必要があります。また提供を取りやめた場合も、午後8時までの営業時間短縮要請が出ているのです。
そんな中、飲食店を支援するプロジェクトはたくさんあります。その一つに今井了介さんが代表を務めるGigi株式会社が行なっている「ごちめし」と「さきめし」があります。ほとんどの飲食に関わるサービスは、高額な手数料を飲食店から取っているのが現状だそうです。そこで飲食店にもっと寄り添った仕組みを作ろうと考え、食事を贈る側から手数料を取り、飲食店からは手数料を一切とらない新しいサービスモデル「ごちめし」を作られました。2019年10月に「ごちめし」をローンチした直後、新型コロナウィルスの流行により飲食店が苦境に立たされます。そこで食事を誰かに贈る「ごちめし」の機能のうち、自分宛てに食事を先払いできる「さきめし」を2020年3月にリリースしたところ、支援者と飲食店とをつなぐ活動が大きな輪となって広がりました。社会におけるニューノーマルとはなにかが模索されている今、人と人とが助け合い、気持ちを贈り合うという流れが生まれているのです。
様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが様々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」5月24日の放送では、dancyu編集長の植野広生さんと、Gigi株式会社代表取締役で作曲家・音楽プロデューサーの今井了介さんにご参加いただき「現在の取組み」から「コロナ禍でのコミュニティの変化」について熱いトークが繰り広げられました。
現在の取組み
植野 グルメ情報誌ではなく食いしん坊雑誌dancyuは、情報をただ載せるのではなく、世の中の食いしん坊たちに喜んでもらえるような提案をしている媒体です。食に携わっていますが、食も音楽もアートも日常生活のベースになっています。人間は高度な動物であるが故、食事だけでは生きていけないと思っています。
今井 音楽家なのに食に関わりたいと思ったのは、3.11がきっかけですね。人が本当に困った時、まず必要とされるのは衣食住で、当時音楽に携わる自分の無力さを痛感しました。食と音楽は誰かの幸せを生み出す場所であるという点で似ていると思います。また、現在文化放送と一緒に展開している「YOU ARE THE BEST 〜医療従事者・飲食店ありがとうプロジェクト〜」は、労いの気持ちでの支援を目指しています。人から取るのではなく、与え合って生きていくのがアフターコロナのニューノーマルだと思います。
(「YOU ARE THE BEST」プロジェクトはクラウドファンディングも展開中です!)
コロナ禍でのコミュニティの変化
植野 コロナ禍で自由に飲み食いできない今、「近場といつか」をバランスよく思っていることが、日本の食文化を応援することに繋がると思っています。ローカルコミュニティが見直されていますね。日常の素晴らしい日本の食文化が途絶えてしまうことを一番危惧しています。日常というベースがなくなってしまったら、文化全体が崩れてしまいます。
今井 生産者や地元の経済を意識することによって、立地ではなくこだわりやおもてなしなどに重きを置くなどマインドセットし直されたと思います。良い意味で食のコミュニティを見直す良い機会になっていると思います。
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この記事の番組情報
浜松町Innovation Culture Cafe
月 19:00~19:30
浜松町の路地裏にひっそりと佇むカフェ「浜松町Innovation Culture Cafe」 経営学に詳しいマスターが営むこのお店には、様々なジャンルのクリエ…