『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 「発酵」のステキな世界
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
今回は特別編。手作り調味料の研究家、オザワエイコさんをゲストにお迎えした、12月9日放送のダイジェストをご紹介します!
(オザワエイコさん プロフィール)
・旬の食材を使った自家製調味料の試作がライフワーク。味噌、醤油、塩麹、甘酒など発酵調味料のほか、果実酒、ジャム、シロップなどのフルーツレシピ、梅干し、ラッキョウ漬け、ぬか漬けなどの保存食レシピを得意としていらっしゃいます。2015年から自家製調味料のレシピを伝える「かもしラボ」をスタートし、のべ5000人にレッスン。著書に「だからつくる調味料」「無印良品の発酵ぬかどこ徹底活用術」「まいにち発酵ごはん」「はじめての発酵ごはん」
「手前味噌」はおいしい!
残間
いつ頃からブームになったんですか?
オザワ
10年以上前に塩こうじブームがありましたが、最近だと味噌を手作りする人がここ数年非常に増えていて、「手前味噌」という言葉がありますが。
大垣
手前味噌ってもともとそういう意味だったんですか。
オザワ
そうですね、自分で作るものを「手前味噌」と言います。
大垣
自分で作った味噌はうめえだろう、とか言うから手前味噌?
オザワ
そうです。
大垣
そうだったんだ!
残間
よかったね、そういうことも勉強できて。
一同
(笑い)
1か月でできる味噌もある
残間
でも5000人もにレッスンって、すごいですね。それだけ興味がある人がいるというのが…
大垣
一回に何人ぐらいいらっしゃるんですか?
オザワ
クラスにもよりますけど10人くらいとか…。高校でも教えてますので、そうすると30人くらいのときもあります。
残間
昔はみんな、なんとなく難しい領域だと思っていたんですよね。自分で発酵なんて手に負えないと思ってたのが。最近は塩こうじだって簡単に手に入るし、市民権を得ましたよね。
オザワ
そうですね。本当はたぶんみんな、味噌とか醤油とか、各家庭で作っていたはずなんですけど。だんだん作る人が減って、買うようになってしまっていましたが、やっぱり自分で作ると、おいしいんですよ。「手前味噌」っていう言葉があるぐらいで。
残間
友達の親が作ってる味噌を毎回分けてもらってますけど、たくさん作るからって。
大垣
どのくらい時間がかかるんですか?
オザワ
昔は年に一度仕込んで一年分作るっていうことが定番でしたけど、最近だと部屋も狭いし、蔵とか置いとけないし(笑)、家族の人数も少ないんで、少量を普通のときに仕込むというのをお勧めしています。一か月でできる簡単な味噌もあるんですよ。
残間
ホント!
オザワ
麹の量をたくさん入れることで、発酵が早く進んで、一か月後から食べられるんです。そのまま常温で置いておいても、3か月、5か月、1年…と、味が変わりながらずっと食べられる。
大垣
そういうのも最近のことだから、機械なんかあるんですか?
オザワ
いえいえ、みんな手作りです。豆を茹でて、手でつぶして、そこに麹と塩を混ぜて、っていう…。材料は豆と麹と塩だけなんですけど、その比率が変わるだけで、速く出来上がったり、甘くなったり、しょっぱくなったり。それがまたいろいろ実験できるのが面白いんです。
自分で作るとおいしい!
残間
そもそもオザワさんが興味を持ったのは、何だったんですか?
オザワ
味噌ですね。味噌から入りました。
残間
親御さんがやってらしたとか…。
オザワ
そうじゃなくて、自分が家を出た後からそういったものに興味を持ち始めて、味噌を作ってみたら「おいしいじゃない!」って思って。「自分で作るとおいしいんだな」っていうところから、米麹を麦麹にしてみたり、大豆を黒豆にしてみたり、インゲン豆とか小豆とかひよこ豆とかいろんな豆で作ってみたり。そうすると、自分がどういうのが好きかな、というのがわかってきたり…。
残間
その時は仕事にするとは思ってないんでしょう?
オザワ
思ってないですね。最初は単にお味噌が好きで作っていて、そのうち「そういえば醤油ってみんな作ってないな」と作り方を習いました。それで醤油も作るようになり…。そうしたらいわゆる調味料って使う頻度が高いですよね。料理って教室で習ってもそれをどういう頻度で作るかっていうと年に何回か、だと思います。でも味噌とか醤油は毎日使えます。あと私は畑もやってるんですけど、トマトがたくさんとれる夏にケチャップを仕込んでおけば一年中食べられるとか。秋には柚子を使って柚子胡椒を作ってそれをまたお鍋に使うとか…。
そうやっていろんな調味料をだんだん手作りするようになっていったら、「教えてくれませんか」という人が回りに出てきて…というのがきっかけですね。
残間
最初は回りの友達に食べてもらったら、みんな「おいしい」と言ったりして。
オザワ
そうそう。友達とか家族とか。で、どうせ教えるんだったら、ちゃんとした教室にする方がいいかなって思ったんです。
残間
料理自体は昔からやってたんですか。
オザワ
ものすごい食いしん坊なので。食べたいものを作る、ということには手間を厭わないですね。
残間
習ったりはしてなかった?
オザワ
あまりしてなかったですね。ただ母親が料理を作っていて、出来合いのものを買ってこない人だったので、「食べたいものを作る」ということは自然に身についていました。
小豆や黒豆でも味噌になる
鈴木
今日はスタジオに4種類の味噌と調味料、ぬか漬けをお持ちいただきました。(以下、試食しながら)
残間
いちばん右側は麦?
オザワ
そうです。隣の濃い茶色は…
大垣
これは小豆か。
オザワ
そうです。味噌って発酵する時間に応じて色が濃くなっていくので、色が薄いのは発酵期間が短いんですね。一年も経てば真っ黒になります。でも小豆などは、もともとの色が違いますから、それが加味されているかもしれないですね。
大垣
左から2番目、こっちは豆がもう少し大きい?
オザワ
そうですね。それが一番普通の大豆の味噌です。ただ市販のものと比べると麹をたくさん入れているので、甘味、うまみが強い仕上がりです。使い勝手はいいと思います。
大垣
一番左は…ちょっと塩気がきつい感じがするけれど。
オザワ
黒豆です。黒豆も大豆の仲間で、その皮のうまみというか、けっこうしっかり出ています。
残間
お米の味噌ってない?
オザワ
左の3つの麹は米ですね。一番右が麦麹です。麦の粒が見えますよね。
大垣
一番普通とおっしゃった大豆の味噌、しっとりしてますね。普通の味噌と比べて舌ざわりが全然違いません?
残間
市販のものは漉したりしてるから。
大垣
豆が感じられる。
オザワ
それは潰し具合とかもありますね。商品として出ているものは、最後に加熱殺菌したりアルコール殺菌したりして発酵が止められていたりもするんです。
大垣
これは置いておけばだんだん発酵が進む?
オザワ
そうです。どんどん色が変わっていきます。一か月後には違う色で味わいも変わる。それもまた楽しいところです。
鈴木
保存が難しいのかな、と思ったんですけど…。
オザワ
大丈夫です。
大垣
進んでいくことを楽しむんですね。もともと保存食ですものね。
オザワ
冷蔵庫とかない時代から何百年も作られてきたものなので、常温で大丈夫です。
肉や魚の「ぬか漬け」も絶品
残間
ぬか漬けも食べてみよう。これ鶏でしょ?
オザワ
そうです。肉とか魚とか、意外においしいんですよ。鶏のささみは最初にしっかり茹でてからぬか床に漬けて一日か二日。
残間
でもキュウリやダイコンが入ってるぬか床にそのまま入れちゃまずいでしょ?
オザワ
肉をやるときはラップを広げて、そこに薄ーくぬかを広げて、肉をのっけて、そこにまたぬかを広げて、きゅっと。それだけを冷蔵庫に入れます。
残間
晒の布に巻いたりもしますよね。
オザワ
それでもいいですね。衛生的なこともあるので、野菜を漬けてるところにそのまま入れないほうがいいですね。肉や魚を漬けたら、それはもったいないけど捨てる。白身魚、真鯛なんか漬けると、昆布締めみたいになって、それもとてもおいしいです。
残間
これジャガイモ? おいしい~!
オザワ
ジャガイモも皆さん意外に漬けないんですけど、ちょっと固めに茹でて、切って漬けるとこんな感じです。あと小松菜なんかも、漬ける人は少ないですけど、野沢菜っぽくて、シャキシャキして。とってもお勧めの食材です。
残間
もやしは漬けられないでしょう?
オザワ
もやしはさっと茹でて、バラバラにならないようにお茶パックみたいなものに入れて漬けることはできます。割となんでもいけます。
日本人と発酵の深い関係
鈴木
こちらの麹はなんですか?
オザワ
それは塩こうじアレンジバージョンで、発酵だしと呼んでるものなんですけど、麹と塩と…
残間
おいしい! これ冷ややっこなんかに。
オザワ
キノコが3種類入ってます。エノキダケ、マイタケ、マッシュルーム。キノコってちょっと残りがちなので、パパッと使って、麹と合わせて発酵させると…
大垣
キノコはもともとカビの仲間ですもんね。
残間
カビって言わないでくれる(笑)?
オザワ
麹菌、ニホンコウジカビですからね。麹のキノコ麹はブイヨンみたいな感じで、スープのもとにしたり、パスタソースに使ったり、ドレッシングにしたり、炒め物に使ったり。下味をつけて焼いてもいいし。
鈴木
発酵の魅力を一言で表現するとしたら、どうなりますか?
オザワ
難しいですけど、私たち日本人は何百年も前から麹と付き合ってきて、発酵という恩恵に与ってきたわけですよね。味噌とか醤油をはじめとして、日本酒、お酢、みりんも発酵調味料なんですよね。いつもみんな意識してないけど、すごくお世話になってる。外国でも流行り始めてます。日本酒なんかもすごく海外に出てますし。
鈴木
オザワエイコさんの著書「まいにち発酵ごはん」と続編「はじめての発酵ごはん」は、いずれもナツメ社から発売中です。また手作り調味料教室「かもしラボ」は原則として毎月第三土曜日、東京・飯田橋で開かれています。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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この記事の番組情報
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
土 6:25~6:50
楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…