『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「住宅ローン地獄」にさせないために…

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「住宅ローン地獄」にさせないために…

Share

情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2024」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

今回は2024年、年頭にお送りした特別編。80歳までの住宅ローンが当たり前に組まれる時代、どうすればいいのか…という大垣さんの考察です。

「顧客の最善利益」は義務に
家が高くなってきましたので、もう毎月の返済が高くなりすぎて、これまで通りのローンを組むと買えないですよね。そこで地方中心に、当たり前のように80歳まで借りるローンが横行していて、最初からその前提で売ってるメーカーとかも多いんです。深く説明すると買わなくなるので、買っている方にあまり深く説明されず勢いで買ってる。実は去年の4月に、金融サービス提供法っていう法律で、顧客の最善利益を一番大切にしなさい、と法律上の義務が定められました。それで言うと、最初に問題になったのが、以前にもお話した「仕組み債」のどこが最善利益なの?ということでした。
80まで住宅ローンを組むというのは、顧客にとって目先を変えるということ以外どう見てもいいことないですよね。でも実際に金融機関の「資金プラン」とかに入れちゃってるわけです。そうすると、顧客は「そういうもんだ」って思っちゃいます。
たぶん今年それが問題になってくるんじゃないかと思うんです。なぜかって言うと、有名な週刊誌の人が「大垣さん、老後住宅ローン返済地獄の特集を組みたいんですけど」って声をかけてこられていて、その記事がどのへんで出てくるかな、というところで。でも、仕方がないんです。家は上がるし、金利は上がるし。

家を「住み継ぐ」発想が必要
もっと大変なのは環境問題です。自動車でもEVが売れていますが、その商品がいいからみんな買っているわけでなくて、しなさい、と言われるからしているようなもので、環境問題もあるし仕方がないから「まあEVもいいかも」という感じで選んでいますよね。
家ってバカみたいに二酸化炭素が出るんですよ。特に作ったときと壊すときにその6割が集中して、特に日本はアメリカの倍、ヨーロッパの3倍出すと言われています。だから、さすがに百年ぐらいは家を潰さないようにしないと、二酸化炭素が減らないというプレッシャーがあります。
よく考えたら「百年住宅」って個人的には無意味でしょう。35で買って、135まで、って…。ゾンビですか、みたいな話ですからね。でも、そうではなくて、一代限りではなく、何代にも渡って住み継いでいかないと二酸化炭素が大変なことになるわけです。
車はあんなに電気にシフトしているのに、家ってなんにも変わってないでしょう。年がら年中解体してるし、35歳くらいの子連れの夫婦に住宅展示場で売っている。なんの工夫もないですよね。

長寿命住宅はコストが高い
国交省は、これまで家を建てるとお金をくれてたんですね。今もそうですけど。でもそのうち「もう家を作らせない」という時代になると思います。環境の基準も最初は補助金でしたけど、そのうち規制に変わりました。だんだん予算がなくなってくるから、役所はだいたい、大盤振る舞いのあとは規制という流れになります。そうすると、金利は上がる、値段は上がる、長寿命住宅にしなければいけないので2~3割高くなる。これを「三重苦」と呼んでいますが…。そういう中で給料が上がると政府は言ってますけど、皆さんそんな実感はないでしょう。でも売る側は売らないといけない。景気対策で「家を作れ」という声も一方ではあります。でも金利は下げられません。

時代を先取りした「残価設定型ローン」
そこで何が起きるかというと…「ますますローンが長くなる」ということになります。
私は10年前くらいに、きっとそうなるから…といって残価設定型住宅ローンを作り始めました。当時は絵空事と言われましたが、時代が追いついてきちゃったんですね。
たぶん2024年のうちに、長期優良住宅にさえしておけば、どんな家でも残価設定型住宅ローンを使えるようになると思います。またもうすでにローンを組んでしまった方にも、残価をつけられるようにしたいな、と思っています。

今日は「時代が要求する残価設定型住宅ローン」について考えてみました。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

Share

関連記事

この記事の番組情報


大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ

大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ

土 6:25~6:50

楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…

NOW ON AIR
ページTOPへ