「あの津波で外国人が何人亡くなったか分かってない」知られざる震災の一面とは?
新潮社から発売中の『涙にも国籍はあるのでしょうか:津波で亡くなった外国人をたどって』を著した、朝日新聞記者・ルポライターの三浦英之さんが4月12日の『大竹まことゴールデンラジオ』に出演。被災した外国人の実態についてお話を伺った。
大竹「この本は、どういった内容なんですか?」
三浦「取材をしたのは震災から12年、昨年なんですけど、たぶん日本で初めて津波で亡くなった外国人の方に光を当てた本です。私は朝日新聞の取材記者として働いてるんですけど、震災から12年が経って、あらかたのことがもうわかっているだろうとか、報道されているだろうと、たぶんみんな思ったと思うんですね。ところが、外国人も亡くなってるはずなのに、これまでほとんど報道されてこなかったんですね」
室井「報道で見たことない。そうだね」
三浦「私は12年の時に気付いて。それはあるモンゴル人の取材先から「実はまだ海外の人が何人亡くなったか分かってないみたいなんですよ」って聞いたんですよ。私は「いや、そんなことないでしょ」と、日本は先進国ですよ。警察庁も毎年、津波の被災者は何人ですって発表してるんだから、外国人が何人亡くなったか分からないことはありえないと思って、ちょっと調べてみたんですよね。そしたら初めに見た資料が人口動態統計という国の統計で、2011年に津波で何人の外国人が亡くなったのかを発表してるんですね。その数字が41人。国別に載っていて、アメリカ人は女性が1人って書いてあるんですよ。私はその段階で「あ、これ間違ってるわ」と」
大竹「どうしてですか?」
三浦「アメリカ人については日本とのつながりが強いので、震災の時も大きく報道してるんです。それによると、石巻で24歳の英語教師がひとり亡くなってる。プラス、私が今住んで知る岩手県の陸前高田市でも26歳のアメリカ人の先生が亡くなってるんですね。もうこの段階で2人なんですよ。
大竹「ああ本当だ」
三浦「だから統計が合ってない。どういうことだろうと思って、一番確かな警察庁に問い合わせたら、33人だっていうんですよ」
室井「ん?人数がまた違う」
三浦「全然違う」
大竹「そうですね」
三浦「どうしてこういうことが起きるのか、そこを調べてみたんです。先ほど申し上げた通り、東日本大震災というのは津波の災害なんですね。津波災害の最大の特徴は、遺体がないんですよ。海に持っていかれてしまって。だから遺体があれば「これは誰なんだろう?」と、DNAを採取したり、パスポートを探したりしますけど、例えば大竹さんが東南アジアの島に旅行に行って、ホテルにチェックインして、ビーチで寝転んでいる時に津波がきて、ホテルも流されてしまったら、大竹さんが津波に流されたかどうかって分からないじゃないですか。例えば山の方で生きてるかもしれないし、日本が嫌で逃亡しちゃってるかもしれないし。なので遺体が無いから警察も調べない」
室井「でも調べれば、一緒に働いていた人が被害にあって亡くなったりとかしてたら、外国人の人も亡くなっている可能性が高いとか、分かるんじゃない?」
三浦「そうなんですけど、当時、東北沿岸部にはいわゆる滞在期間を超えて不法状態で滞在しているフィリピンの方とか、東南アジアの女性の方とか、あるいはイスラムの国からいらした、いわゆる違法滞在者もいたりして、周りの人も言っていいかどうか分からないんですよね。「あの人いなくなったんだけど、でもビザ切れてたな」とか。だから国はもう調べてません」
室井「それはそれ、これはこれだよね」
三浦「なので、私はルポライターという肩書きを使ってるんですけど、近くに訪ねていって、警察には言えないかもしれない、行政には言えないかもしれないけど、私には話してくれますか?って辿っていって、中国の方とか、朝鮮籍の方とか、パキスタンの方とか、一人一人尋ねてまとめた記録が今回の『涙にも国籍はあるのでしょうか』っていう本です」
「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午後1時~3時30分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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