フリーランス時代の労働問題 専門家にウーバーイーツ配達員の実情を聞く
著書『労働法はフリーランスを守れるか ――これからの雇用社会を考える』が筑摩書房から発売中の学習院大学法学部教授、橋本陽子さんが4月5日の『大竹まことゴールデンラジオ』に登場。フリーランスについて大竹と議論を交わした。
大竹「今回の御本は、『労働法はフリーランスを守れるか』。ちょっと守れないんじゃないかなってニュアンスが漂っておりますが、その通りですか?」
橋本「そうですね。労働法というのは労働者を適用対象としています。労働基準法や労働組合法に労働者という言葉が出てきます。フリーランスは労働者でないということは文字通り、個人事業主と訳されたりしています」
大竹「ウーバーイーツの配達する人は個人事業主ってなってますね」
橋本「そうなんですね。本来的には適用対象でないと言うんですが、実際には労働者ではないのか、という問題意識から、この本を書かせていただきました。労働法の一番最初の授業では、この労働者性というテーマで授業をするんですが、契約の名称は重要ではないということを強調します。フリーだから当然労働者じゃないというのではなくて、労働者というのは、時間的・場所的に拘束されているとか、指揮命令を受けているといった、厚生労働省が整理した基準があるんですが、客観的に見てそういう働き方をしていれば労働者となります」
大竹「まず、本に書かれている『ケース1』を紹介させていただきます。ウーバーイーツの配達員はウーバーイーツジャパン社との業務委託契約に基づき、働きたい時に好きな場所でアプリをオンにしてオファーが来るのを待っている。オファーを受けるかどうかは自由であるが、何度も断るとアカウントが自動的にオフラインにされる。オファーを受けてレストランで料理を受け取って初めてどこに配達すればよいのかがわかる。報酬はウーバーイーツが定めた基準によって支払われているが、この基準はしばしば一方的に変更され、配達員らはウーバーイーツの作成した詳細なマニュアルに従わなければならない。配達が終わると、飲食店と顧客は配達員の評価を行う。この評価は報酬に影響するとあります。これはなんか読むと結構厳しいですね」
橋本「これはプラットフォーム就労と最近呼ばれている働き方で、ウーバーイーツがアプリを開発したわけですね。そのアプリで、レストランも登録して、ユーザーも登録して、配達員も登録する。こういう形で配達員とウーバーイーツジャパンとの間には業務委託契約があるということになっています。それでこのような働き方をしているわけです」
大竹「これはフリーランスなんですか?」
橋本「業務委託契約ということでフリーランスということになっています」
大竹「フリーランスっていうことは事業主みたいになりますね。事業主になると良いところと悪いところ。これを教えてください」
橋本「う~ん、いいところは、このケースであるかは…」
大竹「(笑)自由に働けるというのはちょっとメリットのように感じますが、これで例えば個人事業主になったとしますね。そうすると、どういったところが不具合が生まれてくるんですか?」
橋本「この配達員らは労働組合を作って争っているんですが、やはり主な内容が事故の補償ですね。これウーバーイーツジャパンも民間の保険か何かに入りまして、ちょっとは保証しているんですが、それでは足りないということです。労災保険という、労働者だったら労災の補償が受けられます。こちらの方が水準が高いので、これを求めているというのが主な内容ですね。あと報酬も一方的に基準が変わるので、これも問題で、もっと交渉したいということで組合を結成して団体交渉を申し入れているというケースです」
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