『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    60歳過ぎたら賃貸に入れない?

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    60歳過ぎたら賃貸に入れない?

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

★メールまとめ
60歳過ぎたら、賃貸に入るのが難しいと聞きましたが、本当でしょうか。

★メール本文

気ままな独身、一人暮らしの賃貸生活を続けてきました。
ところが、知り合いの不動産関係者から、
「60歳過ぎると、ほとんど賃貸物件が借りられなくなるから、
覚悟しておいた方がいいよ」と聞かされてびっくり仰天。
いま住んでいる部屋は気に入っているので、
当面、引っ越しは考えていませんが、
60歳過ぎたら、実質的に引っ越せなくなるのでしょうか。
仕事は会社経営で、収入もそこそこあるのですが…

(朝霞市 今後が心配なアラ還 58歳 男性)

高齢者を嫌がる大家さんは多い
昔は実際、60を超えると賃貸物件を借りるのが難しい現実はありました。今でも、貸すのを嫌がる大家さんは少なくありません。かつては高齢者円滑入居賃貸住宅というのがあって、そこに登録すれば見つけられる、という制度を国がやっていました。ところが、それが「サービス付き高齢者向け住宅」というものに変わって、法律上は「サービス付き」じゃないと高齢者向けじゃない、ということになってしまったんです。それで住宅メーカーなどが、あちこちに上等なサービス付き住宅(略称:サ高住)を建てているんですけど、それ以外は普通の賃貸住宅を見つけるしかないのが現状です。

年齢が上がることによるリスク
60を過ぎれば、人間、いろいろなトラブルが出てくるのは確かです。それが70代半ばにもなると、大家さんに嫌がられるというレベルじゃなくて、もう賃貸は難しいんじゃないかと思います。なぜかといえば、一人暮らしの方が亡くなると、その後の処理に何十万もお金がかかったりしますし、その前に認知症になってしまう可能性もあります。マイホーム借り上げ制度でご自宅を貸してくださっている方でも、連絡が取れなくなって、調べてみると入院されていたりとか。大家さんはできるだけ面倒を避けたいから、高齢者に貸すのはやめておこう…ということになります。

考えられる手段として
まだ経営をなさってて、収入があるのでしたら、そんなに賃貸にこだわらないで、購入する手もあります。リバースモーゲージを使うのはいかがでしょう。利息だけ返すタイプのものを借りておいて、亡くなられたときに家で相殺する。ある程度の収入がおありならば、これは考えてもいい手段だと思います。

どうしても「借家」なら
入居されるなら「普通借家」になさっておけば、更新権がありますから、よほどじゃなければ立ち退かされる心配はありません。嫌がられる前に入ってしまえば、言葉は悪いですが「居座り」が可能です。一方「定期借家」だと、決められた期間のあとは、出ていけと言われたら出ていかなければなりません。私も、いま東京で暮らしている家は「定期借家」ですから、定年過ぎてから更新の時期を迎えて、続けて借りられるかどうかといえば、わかりません。

高齢男性専門の「寮」が必要!?
いずれにしても、年齢を重ねるに従って、賃貸住宅への入居は厳しくなってくるのは間違いありません。これからますます、爆発的に独居のご老人は増えますし、夫婦二人暮らしの場合も大変。日本全体が危機なんです。助け合って生きていく必要があります。いっそのこと独身寮、やもめ寮を作った方がいいかもしれません。名前が悪かったらシェアハウスでもいいです。

今日は「高齢者と賃貸住宅」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ

土 6:25~6:50

楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…

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