『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』　　　　「物価上昇率」のナゾ

★メールまとめ
物価がどんどん上がってるのに、「物価上昇率」２％は低すぎませんか？

★メール本文

値上げの春、値上げの夏、値上げの秋と値上げが続いているのに、物価上昇率は２％だそうです。
これはどういうことでしょう。
もしかして、私が知らないものが
どんどん値下がりしているのでしょうか。
（堺市　ハニワ・エクスプレス　さん）

「比重を付けた平均」だから
身近な食料品などが上がってると上がってる感が強く出るんですけど、比重つけて平均しちゃうので、全体だとあんまり目立たない、というか、私たちの実感は反映されない、ってことなんです。これは去年（2023年）10月の数字ですが、前の年の同じ時期と比べて卵が30％、アイスクリームが10％、宿泊料が18％、炭酸飲料17％、トマトが16％…実感としては少なくても10％以上は高くなってます。でも比重が低いから、上昇率には反映されないわけなんです。その一方で、電気代なんかは去年と比べて下がっています。そういうものの比重が大きいと、全体の上昇率を押し下げることになります。

「家」の値上がりはハンパじゃない
引き続き個々の物価上昇率を見てみましょう。家賃は0.1%、これはほとんど変わってないですね。でも、同じ「住」の分野でも、深刻なのは「家」です。労賃が上がっていますし、材料はほとんど輸入ですから円安の影響が大きい。サプライチェーンも厳しくなっていますから、だいたい３割ぐらいは高くなっているんです。でも競争が激しいから、みんな必死に抑えて、１割ぐらいまで圧縮してます。でも私の実感では、日本の若い人は、もう自分の代で家を買うのは無理。子ども、孫の代まで引き継いでいける工夫をしてあげないと、日本で「暮らす」ことそのものが、ますます厳しくなっていくと思います。

物価上昇率をなんとかしなければ…
4万円の定額減税とか言ってますけど、この状況で4万。しかも現金じゃなく減税だと、あまりプラスの感じはしないですよね。いずれにしても、もう物価が下がってくる感じはしません。日本の長期的な成長率は、これからせいぜい年にプラス0.5ぐらいずつだと思います。その中での2％の物価上昇というのは、困ったものだと思っています。

今日は「物価上昇率2%」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司　プロフィール
青山学院大学　法学部教授、一般社団法人　移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」（現、一般社団法人 移住･住みかえ支援機構）の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

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