『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「4つの因子」を見つめて幸福感を高めよう

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「4つの因子」を見つめて幸福感を高めよう

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

今回は特別編。「幸福学」の研究者、前野マドカさんをゲストにお迎えした、11月11日放送のダイジェストをご紹介します!

(前野マドカさん プロフィール)
・サンフランシスコ大学、
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、子育てのヴィジョンを考える会などを経て、Well-being活動を推進するEVOL株式会社CEO。パートナーの前野隆司(たかし)さんと共に、慶應義塾大学大学院研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員として「幸福学」研究に携わっていらっしゃいます。

ウェルビーイングって何だろう

鈴木 ウェルビーイングっていうのはどういう意味なんでしょう。

前野 このまま、英語で意味を考えますと、「いい状態」ということなんですけど。体がいい状態であること、そして心がいい状態であること、そして地域社会がいい状態であること。これ全部を包含して「ウェルビーイング」という概念になっています。

大垣 その3つがないと、幸福じゃない。

前野 そうですね。幸福じゃない、と断定はできないですけれども、でも、その方が幸せをより感じられる。

残間 地域っていうのが入るの、面白いですね。

大垣 環境がないといけない、ということですか。

前野 はい、環境がすごく大事だと思います。

残間 なるほど、心と体だけじゃないんだね。

大垣 でも珍しいですよね、大学で「幸福学」というのは…

前野 そうですね。

残間 東京大学にもあるけど、こういう形でやってはいないですよね。

前野 そうですね。

大垣 「幸福が何か」を研究している人はいるけど、幸福を増進しようと思って、活動なさってるんですね。

残間 でも難しいですよね。人によって違うからね、幸福って。

前野 そうですね、主観によるものがあるので。でも普通の状態に幸せな人をより幸せにするというのが、幸福学で。

残間 日本人て不幸が好きそうだけど、実際にアンケートをとると、概ね幸せ、って答えてるんですよね。

前野 そうですね。World Happiness Reportだと低い傾向にあるんですが、やはり国民性もありまして、欧米の方って、10点満点だったら減点法でアンケートに答えるんですけど、日本人の方って「幸せですか」って聞かれて、ホントは幸せだと思ってたとしても、まあ普通ぐらい、5ぐらいにマルをつける傾向があります。

残間 不幸でも「不幸」ってあんまり言わないしね。でも年を経るごとに「幸福」って答える率が高くなっていくんですよね、不思議なことに。

前野 そうなんです。「老人的超越」っていうんですけど、90歳から100歳が一番幸福度が高くなるという研究結果があるんです。

残間 なんか面白いよね。死ぬ間際はだいたいみんな幸せだったって思うんだよ。

長いスパンで「幸せ」を考える

大垣 幸福学っていうと、何を尺度にって考えがちだけど、ちょっと違うんですよね。僕らついつい「お金」とか、何かが足りないと幸福じゃない、って考えがちだけど、そういう切り口じゃないですよね。

残間 それと継続するものと、瞬間的な幸福ってあるじゃない? 失礼ながら、おいしいもの食べた時しか幸せ感じないって言ってたけど、最近は概ね日常も不幸ではないけれど、おいしいもの食べると「あ、やっぱり生きてて良かったな」とか思う、っていう意味では瞬間幸福度もあるよ。

前野 そうですね、でも瞬間のものですと、やはり短期的な幸福の感じですね。感情によって幸福を感じることなんですが、何かを食べておいしいとか。どこかへ行ってうれしいとか。

残間 ずっとそれを食べてるわけじゃないもんね。

前野 そうなんです。やっぱりもうちょっと長いスパンで幸せを感じられるように、ということで、私たちもお伝えしています。ちょっと長期的なところは自分の人生を振り返ってみて、「いろいろあったけど、なかなかいい人生だったな」って思えるような、そんな幸せを「ウェルビーイング」という言葉で表しているんです。

「なんでもある」時代の幸せ

大垣 僕らのころは割と、ものが少ないというか、今みたいに何でもあるわけじゃないから、いろんなものがほしいとか。それからまだまだ成長してたから、偉くなるとか。あんまし幸福というのを考えないでも…。

残間 欠けてるものを埋めていくことが幸せでね…。

大垣 そう。どっかへ行く目標がちゃんと、ニンジンがぶら下がってたっていうか。それが、いまはだいたい、全部あるじゃないですか。何がほしい、ってすごく思うかっていうと、そういう意味ではあんまりないし。それから、学校で教えてて若い子たちも、今がなんとなくピークみたいな感じで、ここからどうする、って言っても僕らみたいに上昇志向があるわけでもないし。

残間 今日より明日がいいわけでもない。

大垣 そう。積極的に「幸せは何か」を自分で考えて定義しないと、ぼーっと生きてて幸せの方向に連れてってもらえるようにはなってないんじゃないか。そういう時代になってるような気がするんですけど。

前野 そもそも幸せって、これまでは宗教家や哲学者に任せておけばいい、って。研究の対象になってなかったんですね。でも心的要因に関するアンケートをとって、心をいい状態にもっていく。そうするとより幸せを感じやすい。そんな風に学術的にいろいろ解明されてきて。「幸せ」はやはり、意識したほうが、より体感としても進みますので。

残間 周りにもいい影響を与えるかもしれない。

前野 本当にそうです。幸せは「うつる」という研究結果があって、やはり幸せを感じてる人が近くにいると…。

残間 疫病神みたいな人がいると、イヤだよね。

大垣 「4つの因子」っていうのがあるんですね。

前野 はい。「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」。

残間 なんとかなるよね、確かに。

大垣 そりゃそうだよね。でもこれって、気持ちのステータスですよね。

前野 そうですね。これは日本人1500人に心的要因に関するアンケートを行って、その結果を因子分析にかけて、4つの指標を導き出したんですね。この4つがバランスよく高いと、ずっと心がいい状態であるということが研究でわかりまして。2008年に「幸せのメカニズム」という本になって出ています。そこから、皆さんには自分の…人って目の前のことでいろいろわからなくなったりするので、その時に自分を中心に戻すために、この4つの因子を使っていく…。

残間 「ありがとう」はすごくみんなわかるし、実際に感謝されたり認められたり。あるいは自分もうれしいと「ありがとう」って言ったりすると、確かに幸せですよね。

大垣 確かに60とか、このあたりからの幸福って、すごく意識して考えてないと。

日々の小さな喜びを見つめよう

残間 それとやっぱり、比較しちゃうよね。そうすると大変な人が…今だと戦火の中に喘いでいる子どもたちとかいると、ああいう人たちと比べると、いまつらくても、まだ幸せだよ…って、自分を鼓舞して生きていける。

大垣 それと、若い時、これまでは成長していくというか、今日より明日の方がよくなる、って形で。幸福に向かっていく感じがあって。

前野 そうなんです。お伝えした4つのうち「やってみよう」は学術的には「自己実現」と「成長」なんですね。やっぱりそれがあることが幸福を感じやすい。2つめの「ありがとう」因子は、「つながり」と「感謝」。3つめの「なんとかなる」は、「前向き」と「楽観」なんです。そして「ありのままに」は「独立」と「自分らしさ」なんですね。

大垣 特にこの番組のリスナー層の皆さんは、ある程度お年を召した方が多い中で、「やってみよう」が、ちょっと…。

残間 なくなるんだよね、だんだんね。体も大変だし。

大垣 時間もないし。

残間 だいたい世の中のことがどんなことか、予測できるようになると、自分には無理、とか、あきらめるようになる。

大垣 あんまり大それたこと考えても、残された時間を意識しちゃったり。

残間 そういうことじゃないよね、前野さんがおっしゃるのは。ちっちゃいことでもいいから、トライしてみようとか…。

前野 そうです、そうです。やっぱり皆さんってマジメで、一生懸命、ちゃんとやらなくちゃいけないと思ってしまうので。夢とかやりたいこと、というと大きなものをイメージするんですけど。そうではなく、日々の中にある小さなことでいいので。それを達成したら、満足感があって喜びを感じやすい。

大切なのは「和して同ぜず」

残間 だから、やったことないことやればいいのよ、何だって。

大垣 「ありのままに」が難しいですよね。

前野 そうなんです。

大垣 男性は組織から外れるので。それまで自分の幸福を決定してくれていた場がなくなって、自分はどう幸せなのかを、自分で考えなきゃいけなくなる。

残間 女の人に「ありのままでいいのよ」っていうとみんなホッとして楽になるんだけど、男の人は。

大垣 オロオロしちゃう。

前野 「ありのままに」は日本人にはけっこう難しい傾向にあるんです。どうしても人に迷惑かけちゃいけない、自分らしさを出し過ぎてわがままになってはいけない、と思ってしまうんですね。

残間 抑えるというか、属性が先に立つ。

前野 でも日本は「和して同ぜず」という言葉があるように、みんなと調和を取っているけれども、一人一人が決して同じではないという、すごく美しい言葉があります。それをイメージしていただいて。2つめの因子、「つながり」と「感謝」の「ありがとう」因子、「感謝してる」というのがある人は、自分らしさを出してても、わがままにはならないので。この4つの因子って、バランスよく高めるのが大事なんですね。

残間 それぞれの「鍛え方」ってあるんですか?

前野 あります。お勧めなのは、4つの因子のうち、自分の得意なところに注力していくと、ほかもバランスよく上がっていきます。

自分がワクワクできる時が幸せ

大垣 「女性のウェルビーイング」っておっしゃってましたが、いま、30代ぐらいの若い女性の役割がどんどん変わっていってますよね。このあたりの方に、どう言ってあげたらいいのか。

前野 基本的には女性も男性も関係なく、人ってそれぞれに良さがあって、その強みを生かしながら、自分が世の中に貢献してるとか、必要とされているとか、ここに居場所があるとか、お互い応援しあってとか、皆さんがそういう思いで働けたら一番いい、と思っているんです。でも、今まではどうしても男性寄りの社会になってきていて。なかなか自分を出しにくかったと思うんですけど、これからは。男性女性、ジェンダーとかいろいろありますので。そういうことよりも、人として、自分が何をしてる時が幸せか、ワクワクするかとか。人は「やらされ感」でやってる時って、ちっとも幸せじゃないです。生産性も低いんですよ。心から湧き上がるような楽しいこととか、それが、自分のお仕事になっていたらいいと思うんですね。

残間 年取るとそれがなくなるのよ。ワクワク感が。

大垣 そうでもないんじゃないの?

残間 それも人によるけれども。私がワクワクする…しないんだけど、ちょっとするっていうのは、人によってはすごくワクワクしてるかもしれないのよね。たとえば、めったに会えない人に会えるとか。大垣さんと肝胆相照らして話が面白かったとか。もしかしたら「大垣さんとそんな話できるの、すごい!」っていう人いるかもしれないけど、日常になると別にどうってことないじゃない? だからね、たぶんワクワク感を経験すると「こんなもんか」ってのもあるでしょうね。

若い子ハワクワクしてる?

大垣 今の社会で、若い子はワクワクしてるんだろうか。

前野 意外と、私たちが思う以上に、ちゃんと本質を見抜いています。

大垣 じゃあ、あんまり心配しないでも大丈夫?

前野 心配しなくても大丈夫じゃないかなと思いますが…。

残間 学生を見てると思わないんだ。

大垣 男の子も男の子なりに割り負けているわけです。昔みたいに大黒柱だって思われてないから。ジョブ型とかいわれて給料も減ってるし。女の子は女の子で専業主婦は無理。がんばらないといけないのに、子どもを産まないといけない。社会は現実問題として大して変わってない。そうすると恋愛のなれの果てだとしてもね、ちゃんとパートナーだと思って作戦立てないと、社会のほうがフォローしてくれないよって言い出してるんですけど。それほど心配してあげないでもいい?

前野 そうですね。私は「なるようになる」って、悪い意味じゃなくて。それぞれがやはり、人って自分がどんな時に幸せか、とか、どんな時にワクワクかするというのを、本当に考える時間と感じる心が大事だと思ってるんです。それがテクノロジーの発達で、五感を使わなくても便利に過ごせるようになってしまったので、置き去りにしている。自分が風を感じる心がないとか、そんな感じですよね。もうちょっと立ち止まって、自分自身を日々感じることができたらいいな、と思っています。

残間 私はだんだん変わってきた。食べ物じゃなくて、素敵な人に会った時が幸せ。

大垣 残間さんはそれだよね。

残間 前野さんと話していて「あ、人だな」って思った。

大垣 私は細かいことをネチネチネチネチ考えてる時。

残間 そうだね。一人でずっと考えてるのが好きだよね。

大垣 若い子によく言うんです。小学校の時に、なんでそんなことが面白いんだ、っていわれることがあったはずで、そういうことを思い出して、その体の動きにすなおにやるようなことがいいよ、って。

残間 もう小学生もそういうことないらしいよ、勉強ばっかりさせられてて。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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