「ジャイアン」「のび太」ポジションの子どもが今は精神科・心療内科に来ている?医師が見た変化とは?
大和書房から発売中の『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』の著者で精神科医の熊代亨さんが3月22日の『大竹まことゴールデンラジオ』に登場。推し活や子どもたちの変化などについて伺った。
大竹「本のタイトルでは「推しで心は満たされる?」と疑問符がついていますけども、これはどう捉えたらよろしいんですか?」
熊代「編集さんがハテナ付けたので(笑) 推しを通して心が満たされるとこはあると思うんですね。推しを推しているとキラキラしてる。「自分にはできないことをやってのける」みたいな夢を引っ張ってくれるような、そういうまぶしさがあると思うんですよ。昔はそういうキラキラを誰が担っていたのか分かりませんが、今だったら推しが一番アクセスしやすいんじゃないかなと思います」
大竹「例えば、推しのコンサートとか、そういうのに行っている間は、自分を追い詰めなくて済みますよね」
室井「あと生きる喜びになるよね」
大竹「ちょっと厳しいことを言えば、それがないと自分の環境はどうなんだとか、自分はどうやって生きようだとか、そういうことが上から迫ってくるような社会でもあるわけですよね」
熊代「一日中自分の効率性とか、出世とか、収入とかばっかり考えてたら、頭パンクしちゃいますよ。そういう効率性とか、やらなきゃいけないことばっかりになってる生活に違ったエッセンスを提供してくれてるのが推しだと思うんですよね」
室井「手帳のカレンダーとかに推しのイベントとかがいっぱい入っていると、すごいウキウキする」
熊代「カレンダーに推しのスケジュールが入っているうちは生きていようって、ちょっと思えるところもあると思うんですよ。」
大竹「精神科医をやっていらして、病気とかの傾向は昔と今とでは少し変わってるんですか?」
熊代「推しの話じゃなくなるかもしれませんが、昔は、いたずらっ子とか暴れん坊が小学校にも中学校に結構いて、不良がタイマンでケンカするとかあったと思うんですけど、今の子はあんまりそういうことはしない。代わりに精神科・心療内科で拝見してて思うのは、昔だったらドラえもんでいう「ジャイアン」「のび太」みたいなポジションにいた子が、今診察を受けてるんじゃないのかなと思うことが増えました」
大竹「発達障害とか、その兆候があるんだけども平気で生きていられた」
熊代「あるいは怒られてたかもしれないけれども、そういう子っているものだよね、っていう前提で世の中が動いてたと思うんですよ」
大竹「なるほど、それが今では」
熊代「例えばジャイアンが、もし令和の教室にいるとするじゃないですか。たぶん、いじめをする子だ、ってことになっちゃうって」
大竹「ジャイアン、生きていけない」
熊代「そのままじゃだめ。そうなると福祉の方が「なんとかしましょう」とか、医療の方が「なんとかしましょう」とか、そうなってくると思うんですよね」
大竹「なるほど」
熊代「のび太もだめかもしれないですね。勉強しないから寝てばっかりじゃないかということで」
大竹「そうするとこの子をどうにか勉強させるようなシステムが周りに生まれちゃうと。」
室井「いやだな、個性みたいなのが認められなくなるってこと?」
熊代「個性とか多様性ってよくいわれるじゃないですか。もちろんそれ大事なことだと思うんですけど、でも一方でジャイアンみたいな子も、のび太みたいな子も、もし小学校にそのままいられないとしたら、それって本当に多様な子どもを多様なままに、いさせてあげられてるのかなっていう疑問は、私個人的に思っています」
「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午後1時~3時30分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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