『散歩哲学』の作者・島田雅彦が歩きながら考えていることとは? 「虫と自分は同じことをしている」
『散歩哲学』が早川書房から発売中の島田雅彦さんが3月15日の『大竹まことゴールデンラジオ』に登場。健康本とは違った視点で語る散歩のススメとは?
大竹「散歩は昔からしてらっしゃるんですか?」
島田「割と歩くのが好きで、というか物書きは割と暇なんですよ。それでずっと一日中書いてるわけにもいきませんしね。大体、行き詰まりますしね」
大竹(笑)
島田「やっぱり歩くとわりと簡単にスタックしてる部分がまた進むっていうことがあって。それは私の大先輩に当たる古井由吉氏も、1日に2回確実に散歩をすると、あと1日に2回必ず昼寝すると。で「いつ書いてるんですか?」って言ったら、朝起きて散歩したあとに2時間ぐらい書くかなと。それで十分だとか言ってて」
大竹「本をちらちらと見させていただきましたけど、散歩、結構大事だなと。本を読む前は、なんかなぁと思って、弱ってる足腰を治そうかなぐらいな感じでしたけど、そうじゃないですね」
島田「結構いろんな副産物がありまして。足から老いていくというので体のケアのためにも必要なんですけども…」
室井「いやだ!島田さんが鎌田先生みたいに健康についての本出したらいや」
大竹「そっちじゃないって言ってるじゃない」
島田「だから一応『散歩哲学』と言って、哲学とくっつけているんです。その意外なメリットというのは、散歩という営み自体が結構ランダムに用もないのに歩き回っているわけですよ。そうするといろいろ偶然の発見とかがあるし、普段使わない頭とか使うことになるんですよ。私は多摩丘陵のふもとに住んでるんですけれども、ずっと耳を澄ませながらふらふらしてますとね、随分色んな種類には鳥がいるもんだなと思ったりして、詳しい人に聞くと、大体15種類は飛び交ってると。それで本当にうるさいんですよ」
室井「15種類って思ったより多い」
島田「一番多いのはカラスなんですけど、夕方になると出勤というか餌あさりに都心のほうに出かけますので、空を舞いながら結構うるさいんですよ。それでじっと聞いてると、鳴き方が何パターンかあって「あっこれ、連絡取り合ってる」っていうふうに、コミュニケーションをとってるって分かってくる。最近も若い生物学者がシジュウカラの言語の研究で成果を出して、シジュウカラの言語には文法があるってことを突き止めたんですよ」
大竹「(笑)ほう!」
室井「文法があるの?」
島田「だから言語を使いこなすのは人間だけというのは大きな間違いで、鳥ももちろんカラスも、みな言語を使ってるっていうんですよ」
大竹「やなせたかしさん作の歌詞、ミミズだってオケラだってアメンボだってというあれですね。共存の響き合いというか何ていうんですかね。読んでてそうかと思いましたね」
島田「例えば、昆虫は葉っぱに化けたり枝に化けたりする擬態っていうのをやるじゃないですか。森なんかを歩いてると昆虫をよく見かけて、「またやってるよ」って、「俺を警戒してるのかな」とか思いながら。でも、あの擬態も言うなれば捕食者の目を欺こうっていう行動で、自己表現してるわけじゃないですか。だからその部分においてはほとんど自分と同じことをやっているというふうに受け止めますね」
大竹「動物だってね。シマウマだって、ヒョウだって林の中で見つからないように、ああいうふうな模様になっちゃってるわけですからね」
「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午後1時~3時30分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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