『クセ強めカプセルトイの中の人って!?』<WEBオリジナル記事>
「知らないを好きになる」をテーマにWEBオリジナル記事をお届けしていきます。
今回は「カプセルトイ」について取り上げます。
ライターの鼻メガネです。
皆さん、3年前に "11万いいね" を叩き出したこのツイート(現・ポスト)をご存じでしょうか?
▲チャールズ・ロバート・ダーウィンさんのX(旧Twitter)
イヤホンを掲げるネコちゃんの健気さに胸を打たれ、「我が家にもこんなインテリアがあったら日々のストレスも和らぐのになあ」と思っていたものでしたが… 先日街を歩いていると…
猫種こそ違うものの、アンニュイな目つきも腰の入り具合も同シリーズで間違いない!これってカプセルトイだったんですね。しかも、本来は "ペンおき" だったのか!
お値段は300円。自分が幼い頃に購入していたものと比べると、実に3倍。
ただその品質と重厚感は、当時とは比較にならない程のハイクオリティ!
今のカプセルトイって、こんなことになっているんだ!?
"キン消し" に育てられ、"ガン消し" と青春を過ごした私にとって、カプセルトイは竹馬の友。ただ、大人になってからは疎遠になっていたのも事実。
再び縁を繋ぐきっかけになるかも?と思い、今回はクセ強めのカプセルトイについて調べてみました。
① “ネコのペンおき” を作った企業
“ネコのペンおき” の製造元は、東京都豊島区にある 株式会社Qualia(クオリア)さん。
群雄割拠のカプセルトイ業界において、オリジナリティ溢れる商品開発で存在感を示している、2016年創業の新進気鋭の会社です。
このQualiaさんを代表するシリーズの一つが、身近なものを擬人化した “にっこりーノ”。写真は、その第1弾 “元気なカラダのぬいぐるみ” です。
“微笑む臓器” という、ある意味ホラーなテーマにも関わらず、何故こうも可愛いのか…。
他にも、おむすび(!)・調味料(!?)・苦手な虫(??)・ゴミ(???) など、クセ強めのシリーズ展開でファンを魅了しています。
前出の “ネコのペンおき” シリーズの第1弾は2020年に発売され、多くの店舗で即日完売を記録しました。現在は第6弾まで展開され、様々な猫種を網羅。カプセルトイファンだけでなく、ネコファンの皆さんにも愛されているとか。
こちらの真っ赤なアイテムも、Qualia生まれ。
「どこかで見たことある…」という方は大正解。福島県会津地方の張り子玩具「赤べこ」とのコラボで作られた”神獣ベコたち”。
3つの頭をもつ “ケルベコス” や、9本の尻尾をもつ “キュウビノキツネベコ” など、各国の神話に登場する霊獣たちが、半ば無理矢理赤べこ化されています。
このシリーズのヒットにより、本場・福島では張り子仕様のケルベコスが作られたんだそうです。
これら3つの商品シリーズ、実はQualiaの売り上げTOP3で、いずれも大ヒットしています。
にっこりーノシリーズ :400万個超!
ネコのペンおきシリーズ:300万個超!
神獣ベコたちシリーズ :250万個超!
依然、アニメなどのキャラクター版権モノが強いカプセルトイ業界。10万個売れればヒットといわれる世界において、創業10年に満たない企業がこれだけの結果を残しているのは紛れもなく快挙!
こういった “クセの強いカプセルトイ” は、どんな方々によってどのようにして誕生するのか!?それらを調査すべく、Qualiaさんに聞きに行ってきました。
② クセ強めカプセルトイの中の人
Qualia(クオリア)さんで私を出迎えてくれたのは、SNSやYouTubeで “チャラ社長” として活動している、代表取締役の小川勇矢(おがわゆうや)さん。パッと見は、EXILEのAKIRAさんです笑。
カプセルトイ界に新風を吹き込み続ける小川社長に、商品開発の流れを聞いてみました。
オリジナル商品が多いQualiaさんですが、年にどのくらいの商品をリリースされているのでしょうか?
年間では150~200タイトルです。多い月は20タイトルをリリースすることもあります。
1つの商品がリリースされるまでには、どのような工程があるのでしょうか?
弊社でオリジナルを作る場合と、弊社から営業をかける場合、オファーをお受けする場合とで異なりますが、だいたいはこんな感じです。
企画して、サンプルを制作。金型を作って工場に送り、そこで量産。オペレーション会社を経由して、各店舗までお届けします。
企画が立ち上がってからリリースまで6ヶ月程度のものが多いですが、長いものでは3年かかったときもありました。
1つのタイトルにここまでの工程がかかるということは、常に複数の企画が同時進行している感じですよね?
企画によって進度に違いはありますが、常に約200タイトルが同時に進められています。
200タイトルの同時進行!?
Qualiaさんは10名ほどの会社なので、それぞれがいくつもの作業を掛け持ちしているんですね。凄まじいマルチタスク能力!
Qualiaの代名詞ともいえる “クセ強カプセルトイ” の数々は、どのように誕生するのでしょうか? 社員の皆さんからアイデアを募集する機会があるのですか?
オリジナル企画の商品化には、大きく2つのルートがあります。
1つは、2ヶ月に1回行われる企画会議で提出されたアイデアで、僕がOKを出したもの。もう1つは、僕が思いついたアイデアを具現化したものです。
なるほど。どちらも小川社長の判断力と発想力なんですね!
そういった商品のアイデアは、どんなときに思いつくのでしょうか?
本当に日常の一コマからですね。例えば、こちらの “シャキッとしな菜(さい)!” は、僕が二日酔いで妻に怒られたのがキッカケです。
「シャキッの語源って何だろう?」「野菜だったりして」「あ、じゃあ野菜を俺みたいにグデぇっとさせちゃおうかな」って感じです。
怒られても、ただでは起きない商魂魂!
奥さまの更なる怒りを買わなかったか心配ですが、こういった瞬間にもヒットの種が隠れているんですね。
POPに書かれた「シャキッとできないときも、あるよね」というキャッチは、小川社長の心の叫びでしょうか? 商品のディテイル自体はふざけているのに、不思議と共感できてしまいます。
こちらの “ぷりぷりな牡蠣の子” も、日常生活の一コマから思いついた企画ですね。
絶対にご飯時じゃないですか!
「この牡蠣プリプリして美味しいなあ…。あっ! プリプリと言えばお尻だ!」って、そんなノリだったのでは?
はい。ふとしたアイデアを形にするのに、ダジャレや言葉遊びって結構役に立つんですよ。
野菜のシャキシャキ感も、牡蠣のプリプリ感も、誰もが一度は口にしたことのある表現。その一言を具現化したことが、ユーザーの “あるある” を刺激するのかもしれないですね。
そういえば小川社長ご自身は愛犬家だそうですが、Qualiaの商品には猫が多めです。これにも理由があると伺いましたが?
犬は犬種によって身体の形や毛並みが大きく異なるので、パターン毎の金型を作らないといけないのですが、猫はカラーリングで種類を作り分けることができてコスト的に圧倒的に優位なんです。だからカプセルトイ作りの観点では、圧倒的に犬より猫です!
犬派としては苦渋の決断でしたね
そういえば “ネコのペンおき” も、元々はテレビを見て思いついたものなんです。日曜夕方のご長寿番組に、全国民に認知されているネコちゃんが登場するじゃないですか?
国民的アニメの!? たしかに “ネコのペンおき” を見たときに、妙な既視感があったんです。
魅惑の腰つきは、オープニングで果物を持ち上げている姿から着想を得たものだったんですね!
“ネコのペンおき” の大ヒットは、日本国民においては遺伝子レベルで定められている必然的ヒットだったのかもしれませんね。
逆にヒットする自信はあったのに、ユーザーの反応がイマイチだったものもあるのでしょうか?
もちろんたくさんありますが、真っ先に思いつくのはコレ、 “団地のドア” シリーズです。
あ! 何だか懐かしい気持ちがします! いい味が出てますねー。
そうですよね? 僕は団地で育ったので、ドアといえばあの団地のドアなんですよ。
組み立て式になっていて、全長は115mm!ミニチュアならぬデカチュアとしてもアピールしていたんですけど。
売り上げは芳しくなかったと?
メディア受けは最高にいいんですよ! 日本ガチャガチャ協会の会長さんにも気に入っていただいたんですけどね。でもユーザーさんの心には響かなかったようです。
昨今のレトロブームにもハマりそうなのに…。もったいない!
③ ターニングポイントになったカプセルトイ
日々、商品開発に励んでいる小川社長。
そのカプセルトイ人生に大きな影響を与えたタイトルについて聞いてみました。
小川社長にとって、特に思い入れのあるカプセルトイは何でしょうか?
Qualiaを創業する前に私が勤めていたキタンクラブ時代に関わったタイトルですが、2012年にリリースされた “コップのフチ子” です。
Facebookが若者たちに一気に広まったタイミングでしたので、ユーザーの皆さんが、自分なりのシチュエーションで撮ったフチ子の写真を投稿してくれたことがブームに繋がったのだと思います。
キタンクラブでは営業職に従事していたのですが、毎日のようにメディア取材やコラボ案件が飛び込んできて、めちゃくちゃ慌ただしかったです。Qualiaでも「ヒット商品を生んだ」といっていただくことはありますが、フチ子ほどのブームを感じたことはまだありません。
フチ子ブームは、当時、社会現象になりましたよね! それまでのガチャブームとは雰囲気が違った気がします。
これまでは子ども向けのオモチャでしたが、大人も買うオモチャになっていきましたよね。
はい。購買層が広がったことで、キャラクター商品とミニチュア商品の独壇場だった業界に、各社が創意工夫を凝らしたオリジナル商品を投入する余白が生まれたようにも思います。
“コップのフチ子” は、カプセルトイ業界全体のターニングポイントになった商品だったんですね!
④ カプセルトイ作りで大切にしていること
日常のあらゆる場面をカプセルトイ作りのヒントにしている小川社長ですが、幼少時代はどんなカプセルトイを回していたのでしょう。
よく聞かれるんですが…、無いんです。
小さい頃からサッカーに夢中で、おもちゃ自体に執着がなかったんですよね。
(前出の)株式会社キタンクラブに入社したのも、カプセルトイに興味があったからではないのですか?
キタンクラブへの入社は、子どもの頃にサッカーを教えてくれていたコーチからのお誘いだったので、「カプセルトイに関わりたい!」という強い気持ちがあったわけではないんです。
かつてのコーチが偶然にもキタンクラブ代表の古屋大貴さんだったという、本当に人とのご縁で業界に飛び込んできました。
そのキタンクラブで働かれていた中で、カプセルトイについて勉強されて、興味を持たれていったんですね。
では現在の小川社長にとって、カプセルトイはどんな存在なのでしょうか?
僕にとっては、コミュニケーションツールの一つです。
学生時代はクラスの中では目立つ方だったのですが、「みんなを楽しませたい」「みんなに笑ってほしい」という気持ちがありました。
今は、その手段がカプセルトイに変わったという感じです。
カプセルトイが全国展開されることで、より多くの皆さんを楽しませることができそうですね。
ファンの皆さんからいただく反応は、小さい頃に「かけっこが速いのを褒められた」感覚に近いんです。みんなが喜んでくれるから速く走りたかったし、みんなが楽しんでくれるから、早く新商品をリリースしたい! 人としての根本は、昔からあまり変わっていないかもしれません。
週3回の頻度で上げられているYouTubeの【クオリアらしさチャンネル】でもたくさんの反応をいただいているのでは?
チャンネル登録者は8500人ほどですが、そのほとんどがQualiaや自分を応援してくれていたり、同業者さんだったりします。実際に購入して反応を示してくれる方が8500人もいるのは、本当に心強いです。ここでいただく声は、新商品の開発のきっかけにもなっています。
最後に、小川社長がカプセルトイ作りで大事にされていることを教えてください。
今やカプセルトイは子ども向けから大人も楽しめる文化になり、さらに家族で楽しめる文化に成長したと思っています。
お子さんが100円玉を握りしめて回すカプセルトイのダイヤルは、言わば生まれて初めてのギャンブル。一体何が出てくるのか?ドキドキしながら開けてほしいですし、出てきたオモチャに驚いてほしい。
僕たちは、Qualiaのテーマ『自分らしく』を大事にしながら、みなさんの驚きや喜びを創造できるようなカプセルトイ作りに励んでいきたいと思います。
カプセルトイをコミュニケーションの一つと捉え、ユーザーと真摯に向き合っている小川社長。クセが強いタイトルの数々は、喜びと驚きを提供するための “自分らしさ” を具現化したものだったんですね。
これから一体どんなクセ強カプセルトイをリリースしてくれるのか?
フチ子を上回るメガヒット商品の誕生を見逃さないように、今後も追っていこうと思います!
Special Thanks!
今回の記事作成に対して、gashacoco(ガシャココ)中野サンモール店さんにも、多大なるご協力をいただきました!
https://maps.app.goo.gl/sgr3j5sdGHL4fcDM9
ガシャココは「こころおどる、がココにある」をコンセプトに、2019年12月に創業。
ユーザーのガチャ熱に応え続けるカプセルトイ専門店で、先日全国100店舗を達成しました。
中野サンモール店は、膨大な数の筐体を設置する大型路面店。3つのフロアに所狭しとガチャ機が並べられた光景は壮大! 見に行くだけでも価値があります。またサブカルチャーの聖地=中野のご当地カプセルトイが置かれているのも、このお店ならでは!
クセ強めのQualiaさんをご紹介してくださったのは、ガシャココを運営されているHappinet(ハピネット)の今泉秀和さん! 最新の業界事情なども教えてくれました。
ありがとうございました!
株式会社Qualia
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