『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 「60歳からの住宅ローン」・・・そんな上手い話ってあるの?
金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司(青山学院大学教授)さんと、フリープロデューサー残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。
この記事では、「大人ファンクラブってどんな番組?」という方のために、コーナー「大人ライフ・アカデミー」をもとに作成された大垣さんのレポートをお届け。ラジオとあわせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。
2020年11月21日の放送は、リスナーメールをご紹介。「60歳からの住宅ローン」という言葉をテレビコマーシャルで見たシューマイ娘さん。一見、詐欺か何かのようにも聞こえる話ですが、大垣さんによるとこれは「リ・バース60」という商品を使った新しい家の買い方なのだとか。商品の仕組みやメリット・デメリット、作られた経緯などについて、詳しく解説していただきました。
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●リバースモーゲージを使うと、60歳からでも家が買える?
今回の放送では、リスナーメールをいただきました。ラジオネーム「シューマイ娘」さん、62歳・会社員の方です。
「中華街でシューマイ食べ歩きが大好きです。”シュー活”と呼んで楽しんでいます。ずっと独身を通し、借家、アパート、マンションなどを転々と過ごしてきました。飲食や趣味にお金を費やしてきたので大した資産もありませんが、先日テレビのコマーシャルで”60歳からの住宅ローン”というものを見て、グッと気持ちが揺れました。60歳で家を買うなんて、そんなうまい話があるんでしょうか」
ということです。
おそらくこれは、住宅金融支援機構の「リ・バース60」という、リバースモーゲージを使った住宅ローンのことではないかと思います。
今回の放送では、この「リ・バース60」というローンができた経緯や使い方について解説しました。
●リ・バース60ってどんな商品?
シューマイ娘さんはこのローンについて「そんなうまい話があるのか」と疑っておられるようですね。結論から言えば、このローンは信用できるものですし、私個人としても、ぜひシューマイ娘さんに使うことを検討してみてほしいと思っています。
このローンは、「リバースモーゲージ」という金融技術を使ったものです。
毎月の支払はローンの利息のみを支払って、本来の家・土地代については、借主が亡くなったときに、これらを売却することによって返済します。
イメージでいうと、普通に購入していれば毎月の返済額が10万円になる家を購入した場合、リ・バース60を使えば支払いは3万円ぐらいになります。
さらに、銀行は通常、60歳以上の方にローンを貸したがらない傾向があります。
それには色々理由がありますが、一つ大きい理由として、普通の住宅ローンは80歳までしか借りられないということがあります。
例えば、かりに60歳で借りた場合、80歳になるまでの20年間しか借りられないため、現役世代が借りるよりも1か月の返済額が多くなるわけですね。収入がなくなってから、現役世代よりも多い金額を無理なく返済し続けられる人はそう多くはありません。
一方のリ・バース60は、返済額がかなり低いですし、途中で亡くなられた場合は家を持っていっていいため、銀行側も貸しやすいわけですね。
まとめると、リ・バース60のメリットは、安く・何歳からでもローンが借りられるということですね。
デメリットは、子供や相続人に家を残せないことでしょうか。ただしこれについては、家の所有者が亡くなられたときに、相続される方が一括で購入できる場合、引き取ることが可能です。
●リ・バース60の使い方は、専門家も予想していなかった?
少し歴史的な話をすると、もともとリバースモーゲージというのは、老後に新しく家を購入するという使われ方を全く想定していなかったんですね。
むしろ、老後にまとまった金額のお金を借りるために使うことが想定されていたんです。つまり、すでにローンを返し終わった家に住んでいる方が、死んだときに家を使って返済するという約束で、まとまった額のお金を借りるということですね。
これは、リバースモーゲージが作られたアメリカでは非常に一般的な使われ方ですが、日本では全く定着しませんでした。
アメリカでは、基本的に、家そのものの値段が上がり続けています。なので、死んだときの売却額が今より高くなることが予想されるので、それなりの額のお金を借りることができるんですね。
一方日本では、家の価値は建てた瞬間から下がっていきます。家の所有者が亡くなる頃には、家の価値はほぼゼロになっていますよね。そうすると、リバースモーゲージを使って借りられるお金は、土地の値段だけということになります。
土地の値段は、東京などの大都市圏を除けば、大体1000万ぐらいが平均的です。
ですから、リバースモーゲージを使ってお金を借りた場合、日本にお住まいのほとんどの人は1000万円以下しか借りられないわけですね。さらに、実際には、半分程度の500万円ぐらいが借りられれば上々、というようなイメージです。
せっかく買った家や土地を手放して借りられるお金が500万円程度というのは、あんまり釣り合っている感じがしませんよね。なので、日本ではこういった使われ方はあまり普及せず、「家を新築で買う」という使い方が新たに見出されたのです。
●自分の暮らしに一番フィットする家との付き合い方を
シューマイ娘さんはおそらくお一人で生活される家をお探しなのだと思います。そうすると、あまり広い家は必要ありませんよね。
自分好みに作り替えることのできる持ち家で、ご自分の暮らしにピッタリ合った生活を考えてみるというのも、なさったら面白いかもしれないですね。
ちなみに、リスナーの方には「いいローンそうだけれど、もう家を買ってしまった・・・」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。リ・バース60は、今借りているローンから借り換えることも可能ですので、もしも興味がある方はぜひ調べてみてください。
今回は、リバースモーゲージを使った新しい家の買い方について説明しました。
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大垣さんが代表理事を務める「移住・住みかえ支援機構(JTI)」では、国が保証している安心・安全の賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。マイホームをJTIが借り上げ、空室時も賃料をお支払い。第二の年金として家を活用できます。
コロナ後の新しい暮らしに、ぜひマイホーム借上げ制度のご利用をご検討ください。
マイホーム借上げ制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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この記事の番組情報
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
土 6:25~6:50
楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…