「モダンジャズは他人のふんどしで相撲取るみたいなこと?」「それです!」邦丸アナ、ジャズを学ぶ
音楽と批評の活動をされている大谷能生さんが12月25日の『くにまる食堂』にご来店。最新刊『〈ツイッター〉にとって美とはなにか SNS以後に「書く」ということ』にも書かれているジャズについて、ちょっと苦手意識のある邦丸アナの疑問に答えていただいた。
邦丸「ジャズの楽しみ方は、みんな好きにやっていいんだよ、ってよく言われるんですけど、どうなんですか? アドリブってよく聞くじゃないですか。プレイヤーたちが好き勝手にやってて、難解なイメージがあるんだけど、このアドリブっていうのも実を言うと本当に自由ではないんですって?」
大谷「曲をやってますからね。例えば曲があって、歌のメロディーラインがあって、その後ろにドレミの和声が付いて、そういうのが塊になって曲になってるわけですけど、モダンジャズ側の人はそれを1回バラバラに分けるんですよ。本当はメロディーの他にも鈴が鳴ってたり、いろんなものが入ってるわけですよね。それを「鈴はアレンジの要素だから省く」、「この要素も省く」って骨組みにしちゃうと、和声とメロディーだけのリズムが残るんですが、そのメロディーもさらに変えていいっていうルールにしちゃって、和声だけを頼りに、自分のメロディーをその場で作っていくっていうのが、いわゆるモダンジャズのアドリブです。」
邦丸「ほらあの、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」で「マイ・フェイバリット・シングス」だっけ?」
大谷「♪(メロディーを口ずさむ)、そうだ京都へ行こう。(笑)」
邦丸「そうそうJR東海のあれ、ジャズになってますよね。」
大谷「あれが一番有名なところですね。もともと「サウンド・オブ・ミュージック」は舞台がウィーンとか東欧の方で、家庭教師が子供たちに向かって歌う、ちょっと民謡っぽい感じの小唄なんですよね。それを偉大なるサックス奏者のジョン・コルトレーンが、和声だけ取っちゃってアドリブに突入して18分ぐらいやっちゃうんですよ。」
邦丸「結構長いですよね。」
大谷「ほっとくと40分ぐらいやっちゃう。日本公演でやったらしいんですけど、ワンステージ終わっても終わんなかったそうです。(笑)小唄なのに。」
邦丸「(笑)小唄が延々。」
大谷「延々そのまま繰り返して、拡大して、好きなことやっていいよっていうのはその辺りから話として始まっているんです。基本はちっちゃい曲を使って、自分の好きなことをやるっていうことです。」
邦丸「まさにマイ・フェイバリット・シングス。」
大谷「それが、コルトレーンとかマイルス・デイビスとか、ジャズの有名な人が、そういうものを切り開いちゃったんですよね。そもそも最初に白人のスタンダード曲、歌もの、クリスマス曲なんかいっぱいあるわけで、それをみんな知ってるからまず使うんですけど、途中から自分のことをやり始める。最後は一応ちゃんとやりましたよって、テーマに戻って終わって知らない顔する。」
邦丸(笑)
大谷「人の曲を使って自分のことやるんですよ。」
邦丸「他人のふんどしで相撲取るみたいな。」
大谷「それです。ブラックミュージシャンたちは、自分の音楽をすぐやるってことができなかったんです。例えば、お客さんとの階層が違ったりすると、相手が喜ぶことまずやるわけです。「マイ・フェイバリット・シングスやります」「ああ知ってる、やれやれ」って言ったら40分!みたいな、そういうことをやるためのテクニックと技術とものの考え方がモダンジャズっていうものの魅力ですよね。」
さらにスタジオではサックス奏者でもある大谷能生さんが生演奏を披露!この続きや本の内容についてはradikoのタイムフリー機能でご確認ください。
「くにまる食堂」は平日朝11~13時、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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