今さら聞けない⁉  『写真や動画のデータって空気中を漂ってるの?』<WEBオリジナル記事>

今さら聞けない⁉ 『写真や動画のデータって空気中を漂ってるの?』<WEBオリジナル記事>

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知らないを好きになる」をテーマにWEBオリジナル記事をお届けしていきます。今回は「写真や動画のデータって空気中を漂ってるの?」について取り上げます。

森羅万象。あらゆるエンタメを愛している、ライターの鼻メガネです。


生まれながらのテレビっ子が中学生でラジオリスナーとなり、その後はすくすくとネット民に。ここ数年は "サブスク動画" の虜として、毎月発表される配信ラインナップを見ては一喜一憂しております。

見たい映画を好きな場所で好きなタイミングに! 時には止めたり戻したりしながら! という、ほんの数十年前に夢描いていた未来が、いま自分の手元にある。これって凄いことですよね。まさかこんな時代になるなんて。あの頃の鼻メガネ少年に見せてあげたら、きっと驚くだろうなあ…。



電話の進化に伴って、スマホやパソコンでテキストデータや静止画を簡単に取得できるようになりました。当たり前のように動画の視聴もしています。

が、よく考えると、端末をケーブルで繋いでいるならまだしも、無線の状態でも利用できるって不思議ですよね。このときって、何にもない空間をデータが漂っているってこと⁉ なんだか "魔法" のようですね。

散々利用していながら、どんな仕組みなのかは恥ずかしながら理解していません。誰かに聞かれても、説明なんてとてもできない…。きっと僕みたいな人も多いのでは⁉

「じゃあ誰かに聞いてみよう!」ということで、友人の中で最も詳しいと思われるITエンジニアのハマちゃんに聞いてみることに。某・超大手通信会社に勤めている彼ならば、僕のような凡夫にも理解できるレベルで、優しく教えてくれるでしょう。


鼻メガネ(ライター)

ねえねえ、ケーブルを繋がなくても、スマホやパソコンで動画を見られるじゃん?
あれの仕組みを教えてほしいんだけど…。


ハマちゃん(ITエンジニア)

質問の範囲が広すぎて難しいですね。
ダウンロード再生とストリーミング再生の違いの話ですか?
それとも、バイナリデータをパケットに分けて送信する話?
もしくはIPパケットからデータを取り出してプロトコル処理する話かな?
どんなことが知りたいんですか?


鼻メガネ(ライター)

ちょ、ちょっと待って! 知らない言葉が多すぎて処理が追いつきません。
正直、何がわからないのかもわからないから、質問を整理して出直します…。

思った以上に何も知らない自分に唖然。
基礎知識がない僕には、彼の言葉はただの呪文にしか聞こえず。これは、いばらの道に足を踏み出してしまったのかも?

ということで今回は「写真や動画のデータって空気中を漂ってるの?」について、調査していきたいと思います!

目次

  1. Wi-Fiからのデータって、空気中を漂ってるの?
  2. そもそも "Wi-Fi" って何?
  3. 5G通信って何?
  4. スマホ内ではどんな処理が行われてるの?
  5. データはどのように基地局まで届くの?
  6. 動画データはどこに保存されてるの?
  7. 文系が理系のトビラを開けてみて

改めて質問事項を整理して、カフェにてITエンジニアのハマちゃんに聞いてみます。プチ同窓会なので、商社マンのツバサくんも同席してくれました。

①Wi-Fiからのデータって、空気中を漂ってるの?

まず最初は目の前にある疑問から。
Wi-Fiから無線でスマホやパソコンにデータが送られてくるけど、これって空気中をデータが漂っているってことなのか? そのあたりから聞いてみます。


鼻メガネ(ライター)

ケーブルを繋いでいない状態でも、WordやExcel、写真や動画などが端末で見られるけど、これらのデータは何もない空間を漂ってるってことですか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

データは電波に乗せて送られていますが、電波は空気中を秒速30万kmの速さで進みます“漂う” というよりも、 “飛び交う” というイメージに近いですね。
スマートフォンやパソコンは、この電波を受信して内部でデータ処理しています。通常、外でスマホを使用しているときは最寄りの基地局からダイレクトに、家や職場やカフェでWi-Fiを通して使用しているときは、ルーターからの電波をキャッチしています。


鼻メガネ(ライター)

なるほど! 空気中をデータが飛び交っているんですね。ぶつからないのが不思議⁉
スマホの中でどんな処理をされているのかも聞きたいんだけど、
その前に、ルーターっていうのはWi-Fiのボックスみたいなヤツですよね?


ハマちゃん(ITエンジニア)

そうです。基本的にルーターは、ONU(光回線)モデム(電話回線)とセットになっていて、それぞれ光信号、アナログ信号をデジタル信号に相互変換しています。ルーターは、そのONUやモデムと接続し、複数の端末を同時にインターネットに接続させるための装置と思ってください。
※ONUとは「Optical Network Unit」の略称で、光回線終端装置のこと

②そもそも “Wi-Fi” って何?


鼻メガネ(ライター)

いまさらな質問なんだけど、 “Wi-Fi” について教えてください。
毎日使っていますけど、これまた正確に理解しておらず…。今日で知ったかぶりから卒業したいです。


ハマちゃん(ITエンジニア)

まず “Wi-Fi” という名前は「Wireless Fidelity(ワイヤレス・フィデリティ)」の略称ですが、元々はコンサルタントが提案した、特に意味のない語呂のいい名前だったみたいです。直訳すると「無線の忠実性」ですけど、なんかしっくりこないですもんね。
それでWi-Fiがどんなものかというと、無線通信の規格のひとつです。


鼻メガネ(ライター)

つまり「ケーブルを付けないで機器と機器を繋ぐ規格」ってことですね。「ひとつ」というのは?


ハマちゃん(ITエンジニア)

身近なものでは、10mほどを繋ぐ規格 “Bluetooth(ブルートゥース)” や、交通系ICカードに利用されている数センチを繋ぐ規格 “NFC” などが有名です。



鼻メガネ(ライター)

どちらもよく使っていますけど、Wi-Fiと同じ並びだったんですね!?


ハマちゃん(ITエンジニア)

それぞれに得意な距離があるイメージです。
無線通信が誕生した頃は、各メーカーが別々の規格を使っていたので、他社の製品とは接続できないなんてことがザラにあったんですが、1990年代後半に国際標準規格「IEEE802.11(アイ・トリプル・イー802.11)」が誕生しました。この規格をクリアすると、Wi-Fi対応製品として認証されます。


鼻メガネ(ライター)

「国際的な互換性がありますよ!」という太鼓判みたいなものなんですね


ハマちゃん(ITエンジニア)

現在は、無線通信が可能な機器の多くがWi-Fi認証を受けていますので、無線LANといえばWi-Fiというイメージになったのだと思います。
※LANは「 Local Area Network」 の頭文字で、直訳すると「局地的な地域の通信網」

コードだらけだったPC周りが、ここ数年で随分とすっきりしたのは、Wi-Fiをはじめとする無線LANの発達によるものだったんですね。

③5G通信って何?

では次は、スマホでダイレクトにデータを通信するときの疑問を解決してみよう。街を歩いていると、ときどきスマホの電波表示が4Gになったり5Gになったりするんだけど…。


鼻メガネ(ライター)

この際、恥を忍んでお聞きしますが、「5G通信サービス」ってどういうことなんでしょうか? 通信速度が速い! すごい! という認識しかなくて。


ハマちゃん(ITエンジニア)

まずありがちですが、5Gの “G” を “ギガ” のことだと思っている方が割といらっしゃいます。各社のCMでギガという言葉が連呼されているので仕方ないことなんですが、5GのGはGenerationの頭文字で、「移動通信システムの第5世代」という意味です。


鼻メガネ(ライター)

そうだったのか。
しかも「第5世代」だなんて、いつの間に世代交代が行われていたんでしょう?


ハマちゃん(ITエンジニア)

総務省の資料によりますと、1G(第1世代)は1979年にスタートしたそうです。
「自動車電話サービス」や「ショルダーホン」が該当します。平野ノラさんが抱えてる “黒いハコ”、あれが1Gです。




鼻メガネ(ライター)

平野ノラさん、このまま歴史の教科書に載れそう。
2Gはどんな世代なんですか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

本格的なデータ通信が始まった1993年からが2G(第2世代)です。
アナログからデジタルへの大きな転換で、音声圧縮が可能になり、通信効率が一気に高まりました。パケット通信が始まったのもこの頃です。


鼻メガネ(ライター)

そもそも携帯電話が一般に普及し始めたのが90年代後半でしたよね。
その頃が3Gに当たるのでしょうか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

そうですね。現在の3大キャリアの前身の通信会社が、2001年から3G(第3世代)を開始しています。「i-mode」「写メ」「着メロ」など、通信にまつわる言葉が身近になったのもこの頃ですよね。データ通信が強化されて、携帯電話でできることが一気に増えました。


鼻メガネ(ライター)

現在も対応エリアが多い4Gですが、3Gと4Gは何が違うのでしょうか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

3Gまでは、ユーザーの元に電波を届かせることが最重要な目的でした。
少ない基地局で広いサービスエリアを作るという考え方で、日本の人口のほぼ100%をカバーできていたんです。でもスマホの普及でデータ通信のニーズが高まったことで、速度面での限界がきてしまいました。
そこで誕生したのが4G(第4世代)です。
4Gが一般的になったのは2015年頃です。より高速で大容量の通信が可能になりました。

実は4Gの電波は3Gと比べて、通信速度は速いんですが電波の届く範囲は狭いんです。しかも障害物にも弱い! だからその短所を補うために、たくさんの基地局が設置されました。みなさんの想像を遥かに超えた数が設置されています。それらがサービスエリアをカバーし合って、高速かつ大容量通信ができるようになったんです。




鼻メガネ(ライター)

4Gになって電波が届きにくくなった分、たくさんの基地局を作ってカバーしていたんですね。
僕としては4Gでも通信速度的には満足していたんですが、5Gはそれを上回る性能なんですよね? どれくらいすごいのか教えてください!


ハマちゃん(ITエンジニア)

4Gの通信速度は、3Gの約5〜20倍でした。
データ通信が活発になって、スマホ動画やゲームが一気に普及しましたよね。
2020年からサービスが始まった5Gの通信速度は、その4Gの約20〜100倍です。
理論上の数字ではありますが、さらにいろんなことが可能になりました。




鼻メガネ(ライター)

そんなにすごいんですか!
データ通信量をここまで強化できた理由はなんでしょう? 特別な技術が開発されたとか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

5Gでは、これまでモバイル通信には使われていなかった高周波数の電波が広帯域で利用されています。高周波電波を使うことで通信速度が上がるメリットがありますが、その代わり直進性が増して障害物に邪魔されたり、遠くまで届きにくかったりというデメリットもあります。3Gから4Gに変わった際、大量の基地局が必要になったのはこれが理由です。

図のように、用途や機器に応じて周波数帯の住み分けがあります。
右に行くほど高周波数になっていて、伝送できる情報量が多くなっていきます


鼻メガネ(ライター)

5Gになって、これまでよりも(図の)右側の周波数帯を使うようになったってことですね。
ところで話をふりだしに戻すようで悪いんですが、そもそも周波数って何なのでしょう?


ツバサくん(商社マン)

あ、周波数なら僕にも答えられそうだな。
僕が文系なりに理解しているのは、家電に使われている交流電気は、一定の周期で流れが変わります。この周期を1秒間に繰り返す回数が “周波数” で、単位はヘルツ(Hz)です。
下の図は、1秒間に3回の波ができているので「3Hz」を示しています。

4Gで使っていたのは「3.6GHz以下」の周波数でしたが、5Gは高いものでは「28GHz」の周波数が使われるようになりました。イメージで表してみるとこうなります。




鼻メガネ(ライター)

密ですね! 5Gはもはや帯だな。


ツバサくん(商社マン)

この膨大な量の波に0or1のデジタル情報を乗せますので、高周波数=周期が多い=情報が多いということになります


鼻メガネ(ライター)

0or1のデジタル情報? はて?


ハマちゃん(ITエンジニア)

あ、それは後ほど説明しましょう。
5Gでは、高周波数を利用して通信速度のアップを実現しましたが、やはりネックになるのは電波を飛ばせる範囲が狭いことです。電波を増幅する技術なども使っていますが、やはり4Gのとき以上に多くの基地局が必要になります。


鼻メガネ(ライター)

ということは、今後はさらに5G用の基地局が設置されていくんですね?


ハマちゃん(ITエンジニア)

総務省の資料(令和4年度発表)によると、4G基地局が約67万箇所なのに対して、5G基地局はまだ約9万箇所です。この数が増えるとともに、日常のネットワーク環境もさらに快適になると思います。楽しみにしておきましょう。

④スマホ内ではどんな処理が行われてるの?

基地局からスマホまでのデータの経路はわかりましたが、まだまだ疑問があります。
ケーブルを繋いでいない薄い板(スマホ)で、なぜ映像が見られるのか?
スマホの内部ではどんな処理が行われているのか?
理系理系した話になりそうで、僕の文系脳は縮み上がっております。


ハマちゃん(ITエンジニア)

では先ほど少し触れた “0or1” について解説しましょう。
これは、コンピューターが理解できる “バイナリデータ” というものです。バイナリっていうのは “2進法” という意味で、情報を0と1の数字だけで表現する方法です。


鼻メガネ(ライター)

数学で聞いたことがある! 気がする…。


ハマちゃん(ITエンジニア)

コンピューター上のデータは、すべてこのバイナリ(2進法)でやりとりされます。動画データも、静止画データも、音声データも、テキストデータも。


鼻メガネ(ライター)

すべてを0と1だけで表すのって、大変そうですけど…。


ハマちゃん(ITエンジニア)

電気信号のON/OFFで0と1を表現するんです。我々にとっては、ただの電気の点滅にしか思えませんが、コンピューターにとってはそれが処理しやすい形なんです。それで、そのバイナリデータを細かく区切って転送していきます。この細かい単位を “パケット” と呼びます。これは聞いたことありますよね?


鼻メガネ(ライター)

「パケット割」とか「パケ放題」とか、聞いたことがあります!


ハマちゃん(ITエンジニア)

そう、それです。スマホには動画データが、パケット単位でどんどん溜まっていきます。それをスマホ内で元の動画の形に再構築して、滑らかに見られるようにするんです。


鼻メガネ(ライター)

「0と1で構成されているデータが映像になる」というイメージができないんですが、一体どういう仕組みになっているのでしょうか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

YouTubeやスマホゲームなどで “FPS” って聞いたことはありますか?


鼻メガネ(ライター)

いえ、初耳です


ハマちゃん(ITエンジニア)

これは「FRAMES PER SECOND」の略称で、 “フレーム毎秒” という意味です。
要は、1秒間を何枚の画像で構成するかという数字のことです。 “フレームレート” とも呼ばれています。
日本のテレビ放送は30FPSで、映画は24FPSが多いです。


鼻メガネ(ライター)

30FPSは、1秒間に30枚の画像で構成されているってことですか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

そうです。それが増えれば増えるほど、映像がより滑らかになります。


鼻メガネ(ライター)

パラパラ漫画のようなイメージですか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

はい。ただ、そのまま30枚の写真を並べるとサイズが大きくなってしまうので、様々な映像規格で圧縮されていますが、概ねその解釈で問題ありません。


鼻メガネ(ライター)

ここまではなんとか理解できた気がします。


ハマちゃん(ITエンジニア)

では次は「画像1枚(1フレーム)をどうやって表示するのか」、という話をしましょう。
ここには “ピクセル(画素)” というものが関わってきます。ピクセルとは、デジタル画像や画面などを構成する最小単位です。


鼻メガネ(ライター)

「ピクセル」と「画素」は聞いたことがあります。同じものだったんですね。


ハマちゃん(ITエンジニア)

アマゾンプライムビデオをHD画質で見ると、この1フレームに1280×720のピクセルが並んでいます。掛け合わせると921600なので、1フレーム=921600ピクセル(画素)になります。


ハマちゃん(ITエンジニア)

さらに細分化した「1ピクセル」が下の図です。
それぞれが光の三原則である3つのサブピクセルからできていて、明るさの組み合わせで色を表現しています。


ハマちゃん(ITエンジニア)

スマホに届くバイナリデータには、この1粒1粒の明るさの数値が示されていますので、解析して正確に表現すると、その集合体として画像や映像になるわけです。


鼻メガネ(ライター)

1秒間に30枚の画像が流れていて…
その1枚の画像には92万個のピクセルが並んでいて…
そのピクセルは3つのサブピクセルの明るさで表される… ということですね。
映画1本の中で、何回の計算が行われているんだろう。果てしない情報量ですね。


ハマちゃん(ITエンジニア)

現在、アマプラの最高画質は4K相当(3840×2160)の約830万画素にまで対応していますので、計算の量だけでもHD画質の比じゃないですよ。


鼻メガネ(ライター)

気が遠くなってきました…。


ハマちゃん(ITエンジニア)

人間では到底不可能な計算を、コンピューター内に組み込まれている半導体チップが可能にしています。
最近のスマホって高いですよね? これは計算精度を高める優秀な脳(半導体チップ)が積まれていることも一因です。


鼻メガネ(ライター)

ちょっと脱線しますが、「ダウンロード再生」と「ストリーミング再生」って聞くことがありますが、その2つはどう違うのでしょうか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

それらの違いは、自分の端末にデータ全体を記憶させるかどうかです。
少し前までは通信速度が遅かったので、滑らかな動画を見るにはデータ全部を記憶させてしまうダウンロード再生が多かったのですが、通信速度が強化された現在は、ストリーミング再生が主流になってきました。


鼻メガネ(ライター)

それぞれのメリットはなんでしょう?


ハマちゃん(ITエンジニア)

ダウンロード再生は、端末に記憶させてしまえばオフライン(ネットワークに繋がっていない状態)でも見られることがメリットですね。
対してストリーミングは必要な分を順次通信するので、データをダウンロードするまで待つ必要がありません。端末のデータ容量も食わないのがメリットです。


鼻メガネ(ライター)

なるほど。ストリーミング再生で見られることが増えたのは「データ通信速度」「スマホの処理機能」の、2つの能力向上があってのことだったんですね。

⑤データはどのように基地局まで届くの?

基地局からのデータが、どうやって手元に届くのか。そしてデータを受け取ったスマホがどんな処理をしているのかは理解できました。今度の疑問はそこから先です。
データが保管されている場所から、どうやって基地局まで届くのでしょうか?


鼻メガネ(ライター)

例えば、僕が大好きなNetflixの動画は、アメリカから直接送られてくるんですか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

家の中でも電波の良し悪しを感じるくらいですから、アメリカから直接届くわけではないですよ。今、手元のスマホに届いているデータは、最寄りの基地局から送られたものです。
基地局はビルの屋上や鉄塔、電柱など、様々なところに設置されていて、データの発信元からバケツリレー方式で届けられます。


鼻メガネ(ライター)

なるほど。じゃあ、こちら側からの送信も基地局を渡り歩いてアメリカに届く訳なんですね!
あら? でも、間にある太平洋はどうするのでしょう?
海上に基地局があるなんて話は聞いたことありませんが…。


ハマちゃん(ITエンジニア)

海の向こうとは有線で繋がっているんですよ。光ファイバーが海底に通されているんです。


鼻メガネ(ライター)

海底に? そんなこと可能なんですか? 日本海ならまだしも太平洋って果てしなく広いですよ?


ツバサくん(商社マン)

あ、その光ファイバー事業、ウチの会社でやってますよ。


鼻メガネ(ライター)

総合商社に勤めてるのは知ってたけど、ツバサくんの会社はそんなこともしてるの⁉ すごい!
その光ファイバーが、太平洋の向こう岸に繋がっているわけ?


ツバサくん(商社マン)

はい、太平洋を横断してます! 1990年代半ばまでは衛星通信の方が主流でしたが、現在の国際通信の主役は光海底ケーブルです。1本のケーブルに数千を超える光ファイバーが組み込まれていて、その中を膨大なデータ量が行き交っています。


鼻メガネ(ライター)

地上では電波として飛んでいるデータが、そのまま海の中では光ファイバーのケーブルを通っているってことでしょうか?


ツバサくん(商社マン)

いえ。光ファイバーで通信しているのは光信号です。電波に乗っているのは電気信号ですが、そのまま通すことはできないので、光信号に変換してからファイバーに流します。これを光電変換と呼びます。
正直、非常にコストがかかる部分ですが、光信号は電気信号に比べて、圧倒的に大容量で速い通信が可能です。コストを上回るメリットがあります。


鼻メガネ(ライター)

うわー、知らなかった! 無線(電気信号)と有線(光信号)の組み合わせが、世界との通信を可能にしてるんですね!

⑥動画データはどこに保存されてるの?

では最後に聞いちゃいましょう。
スマホで動画が見られるってことは、元の動画がどこかに保管されているはずです。


鼻メガネ(ライター)

アマゾンプライムビデオにしてもNetflixにしても、膨大な数の映画を見ることができます。データとはいえすごい容量になると思いますので、保管する広大な場所が必要です。それがどこにあるか教えてください!


ハマちゃん(ITエンジニア)

わかりません。「詳しい場所はわからない」というのが正確ですね。
鼻メガネさんが探しているものは、おそらく“データセンター”のことでしょう。
ネットワークに送る情報と、ネットワークから届く情報を集約する施設のことなんですが、ご存じですか?


鼻メガネ(ライター)

いえ、わかるような、わからないような。


ハマちゃん(ITエンジニア)

“サーバー” という言葉は知ってますよね?


鼻メガネ(ライター)

サーバーはわかります! 家や施設のネットワークを司る、いかついハコのことですよね?
大きい会社には、サーバー室なんてところもあったりしますよね。うちの小さな作家事務所にもありますが、模様替えや大掃除のたびに邪魔者扱いされています。


ハマちゃん(ITエンジニア)

はい。中規模会社のサーバーはフロアに大きいのが1つ、大企業ですとサーバー室を設置しているところが多いかと思います。
そのサーバーを日本中、世界中から集めて「一棟まるまるサーバー室」にしたものが “データセンター” です。
サーバーは大きいですし、熱くなりますし、かなり邪魔になります。でも中身は機密情報が満載です。繊細な物なので雑にも扱えません。なので「安心安全な場所で御社のサーバーを預かります!」という事業を行っている会社があります。


鼻メガネ(ライター)

各地のサーバーが集まる団地みたいな施設なんですね。
かなりの規模だと思うのですが、なぜ場所がわからないのでしょうか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

安全のためです。サーバーとサーバー内の情報の安心安全を保障するのが、データセンターの役目ですから。セキュリティ対策の一環として、具体的な場所は明かされていないことがほとんどです。
日本にも500〜600箇所のデータセンターがあるといわれていますが、おおよその情報だけしか開示されていません。


鼻メガネ(ライター)

なるほど。いろんなものから情報を守る必要がありますもんね。
防災や防犯に関する機能や設備も備わっているのでしょうか?


ハマちゃん(ITエンジニア)

もちろん。大きくは3つ。地震対策火災対策防犯対策ですね。


鼻メガネ(ライター)

すごい…。最新鋭の設備がデータを守っているんですね!


ハマちゃん(ITエンジニア)

仮に停電や故障が起こっても施設が止まらないように自家発電機を備えていますし、24時間365日に渡って保守員が常駐するなど、トラブル対応も万全です。


鼻メガネ(ライター)

至れり尽くせりですね。僕が住みたいくらいです。


ハマちゃん(ITエンジニア)

パソコンやスマホを長時間使用すると、熱を持つことがありますよね。サーバーも同じです。データセンターでは、熱くなったサーバーを冷やすために冷房をガンガンにかけています。夏でも凍えるくらい寒いので、人間の生活にはあまり向いていないかもしれません。
この冷房費を削減するために、気温の低いアイスランドなどの緯度の高い地に設置されている場合も多いです。国内では北海道ですね。データセンターにとっては “寒冷地が理想郷” なんですよ。


鼻メガネ(ライター)

まさに「サーバー運営専用の特別施設」ってことなんですね。
アマゾンプライムビデオもNetflixも、そこに大量の動画データを蓄えているわけか。


ハマちゃん(ITエンジニア)

はい。ちなみにNetflixは自社のデータセンターは持っていないみたいですよ。元々は自社で管理していたんですが、2016年に自社運営のデータセンターを閉鎖して、競合であるアマゾン傘下のクラウドサービス会社のAWSへ移行を完了しています。


鼻メガネ(ライター)

AWSって、ときどきCMで見ますね!
Netflixの動画データもアマゾンが管理しているのか!? それはものすごい規模だな。


ツバサくん(商社マン)

ちなみにクラウドインフラにおけるAWSの世界シェアは約33%(2023年6月)。つまり一企業が世界中の情報の3分の1を管理しているわけです。想像を絶する話です。


鼻メガネ(ライター)

これでなんとなく疑問が晴れました。
ハマちゃん、ツバサくん、今日はものすごく勉強になりました。
なんとか文系の僕にも理解できました! 本当にありがとう!

文系が理系のトビラを開けてみて…

何もない空間の中をデータが飛び交っている現在。技術進歩はまるで “魔法” ですね。
アマプラやネトフリの動画が、必死に海底を走ってきて、日本の空気中を飛び交っていると考えたら、「よくぞここまで辿り着いたね」と、より一層の愛を持って視聴できそうです。
スマホもときどき熱くなりますけど、これだけの処理を内部でやっているんですから、慰労してあげたくなります。

それにしても頼りになった協力者のおふたり。
普段はバカ話とバドミントン話に終始していますが、僕にもわかる、いい塩梅で説明をしてくれました。プロの力を垣間見ることができました。

「知らないを好きになる」では、この記事を読んでのご感想、ご意見などメールで受付中です。今後の取材の参考にさせていただきますので、ぜひ色々な声を聞かせていただければと思いますのでよろしくお願いいたします。

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