『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    銀行にもいろいろ種類があって…

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

★メールまとめ
息子が金融業界への就職を考えています。銀行、相互銀行、信用金庫などいろいろありますが、違いを教えてください。

★メール本文
就職を控えた息子が金融業界を考えています。
でも金融業界といっても、銀行のほかに、
信託銀行とか信用金庫とか信用組合とか、
ほかにもいろいろありますよね。
私にはまったくわかりません。
それぞれの違いを教えていただけないでしょうか。
(練馬区 金融業の母 さん(49歳))

「銀行」は法律的には同じ

息子さん、どこに入られるか心配ですよね。金融業といっても、銀行っぽいところをお考えのようなので、そのあたりのお話をします。
銀行っていうのは、今は本来の法律的な区分けとしては、「銀行」一つしかありません。
昔は長期信用銀行とか、いろいろ専門的なやつがありましたが、今は法律的に「銀行」と名乗っているところに違いはありません。
ただ、その中にいくつか区分けがあります。銀行を営むには免許が必要なんですが、「お前は東京とか、でっかい都市でやりなさい」と言われたら「都市銀行」というものになります。いわゆるメガバンクといわれてるところですね。海外に出てったり、証券会社を持ってたり、コングロマリットみたいになってます。
それから「あんたは京都府でやりなさい」といった免許を受けて、その地域でやるのが「地方銀行」と呼ばれるグループです。

「頼母子講」から「無尽」へ

それからもう一個、昔は「無尽」と呼ばれていたものがあります。
江戸時代、家を建てるときに、たとえば名主さんのところに、村の人がちょっとずつおカネを出し合って、預けて、くじ引きをします。当たった人はその年、村全体で家を作ってもらえるんですね。でもそれで抜けるのではなく、その後も、掛け金を払い続けます。ローンの返済のようなものですね。
それをずっとやっていれば、何年かすると、全員の家が建つことになるわけです。そういう「講」…「頼母子講」って仕組みがあって、それが明治維新のあとに「無尽」という名前で、ビジネスになっていきました。

「相互銀行」から「第二地銀」へ

「無尽」は戦後、「相互銀行」という、みんなでおカネを出し合って作るタイプの「銀行」になりました。そういう成り立ちですから、住宅ローンを中心にやってるようなところがあったんです。1989年になって、相互銀行も普通の銀行にしてしまおうということになりました。基本的に狭い地域で営業しているので、地方銀行の人たちの協会に入れて下さいっていったら「ダメだ」と言われてしまったんですね。それでしょうがないので、自分たちで「第二地方銀行」って…自分たちで「第二」って付けないでもよさそうなものだと思いますが…。そういう寄合を別途、作ってやっているんです。これが「第二地銀」と呼ばれるもの。ひらがな系のところは、そういうのが多いです。この3つは法律上は全部同じ「銀行」、おカネを預かってそれを貸すということなんですね。

「信託銀行」の成り立ち

信託銀行というのは、やっぱり同じ銀行なんですけど、昔は「信託の仕事をやっていいですよ」という、専業のところだったのでそういう名前で呼ばれてます。でも今は、ほかの銀行もそれなりに信託の仕事ができるようになっています。
信託の仕事と言うのは、いろいろあって、本来は大金持ちが財産を託して、その息子がいる間はちゃんとやってね、みたいな…推理小説に出てくるような仕事をする銀行です。ただ、今はあまり普通の大きい銀行と変わらないです。

「信用金庫」「信用組合」は…

信用金庫と信用組合はちょっと違います。これは形の上では非営利なんです。中小企業の方々がおカネを出し合って、それでみんなのおカネをお互いに融通し合うというところから出てきたものが規模別に「信用金庫」と「信用組合」に分かれています。
中小企業がおカネを借りるとき、地方銀行を名乗ってる所は、昔からけっこう大きいので言っちゃなんだけど殿様みたいなところがあります。でも地方銀行だと、小さな会社のご事情っていうのは案外わからないものなんですね。丁寧に中小の事業者のお手つだいをする…本来のbankingの仕事ですよね。これは最近では、信用金庫とか信用組合の方が、しっかりしてきていると思います。

どんな仕事をしたいのか

というわけで、就職を考えるなら、あまり大きさにこだわらず…「英語ペラペラで海外でバシバシ!」というのであれば、メガバンクなどに行かれたらいいと思います。でもコロナで大変だった企業の力になりたいとか、地場のところをしっかり見てバンカーになりたいという学生には、信用金庫とかの方が勉強になるよ、と話しています。
というわけで、どこに決まられても大きさとか名前とかで判断なさらないのが大切です。どこも非常にしっかりとしたところですから。

「金融業界」ってどうなんだろう

いま金融業界がいいのか? と聞かれたら昔と違ってあまり良くないかもしれません。やらずぶったくりみたいな時代があったのも確かです。私のいた銀行もそうだったと思います。今の時代は「ビジネス」なんですね。でも、やっぱり銀行って金融で儲けようと思うとちょっとおかしなところに行ってしまいがちになるんです。とはいえ、社会人の第一歩として経験を積むには、とてもいい職場だと思います。どこに行かれても「いいところに決まったね」と言ってあげてほしいと思います。

今日は「銀行業界への就職」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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