「アカデミー賞を独占しそう」原爆の父を描く映画・オッペンハイマーの日本公開が遅れているワケと評価を町山智浩に聞く
映画評論家の町山智浩さんが、アメリカ・カリフォルニアからリモートで12月15日の大竹まことゴールデンラジオに出演。話題の映画「オッペンハイマー」について伺った。
大竹「映画『オッペンハイマー』は原爆を作った人の話ですけども、なぜ日本の公開は遅れてるんですか?」
町山「これは全世界の公開が7月の終わりぐらいだったんですね。そうすると日本では、公開と広島・長崎に原爆が落ちた日がすぐにぶつかっちゃうわけですよ。原爆を作った本人の映画は、いろいろ宣伝が難しいだろうということです。」
大竹「でも別に原爆を肯定しているように捉えた映画ではないわけですよね。」
町山「そうですね。前半と後半に分かれてるんですけれども、前半はオッペンハイマーという科学者が、原爆が作れるということが分かって、自分の科学的理論が証明されるということで、アメリカ政府からお金をもらって嬉々として原爆を作るわけですね。ところが後半は、彼がとんでもないものを発明してしまったことに後悔して、非常に苦悩すると言う内容です。」
大竹「アメリカでは核実験を何回か繰り返して、そこに住んでる人たちも被害に会ったりしてますよね。」
町山「はい。僕はこのあいだ、オッペンハイマーが人類最初の核爆発を実験したニューメキシコの実験場に行ったんですよ。そこには反対運動してる人たちがすごくいっぱいいました。そこに住んでいた人たちがいて、いまも後遺症に苦しんでいるんですね。ただ、このオッペンハイマーって人は、原爆を発明したんですけれども、放射能が後遺症を残すということは知らなかったんですよ。」
大竹「あ、そうなんですか。」
町山「誰も知らなかったんです。後からそれを知ってショックを受けて、それ以降の水爆開発とかには反対して行くという話なんですね。」
大竹「現地では風下にいたかなりの人が被爆されたっていう話ですよね。」
町山「そうなんですよ。実験をずっと繰り返したんで、蓄積されてちゃったんですね。で、みんな癌になって、かなり早く亡くなってるんです。」
室井「この映画、日本で公開されないの?」
大竹「いや、来年の4月ぐらいにやるだろうって言われてるんですけどね。」
町山「アカデミー賞が来年3月ぐらいに決まるんですけれども、この映画は何部門も賞を独占することになりそうなんですね。」
大竹「この映画自体、町山さんの評価はどうなんですか?」
町山「科学者が自分の責任を考えないで、実験をしたいから原爆を作った後で、それがどれだけ世の中をひどくしてしまったのかということを反省するという内容で、現在も多分通用する話なんですね。今、AIというものが作られて動き出してるんですけども、これも作ってしまったはいいけれども、暴走する可能性があるわけですよ。そうなるとどうなるかと言うことですね。人間に止められないかもしれないですね。」
室井「だんだん映画の世界に近づいてきてますね。」
町山「本当にターミネーターみたいなね。やっぱり科学者には発明するものに関しての製造責任があるんじゃないかと言う映画ですから、今も通用するテーマだと思います。」
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