宮台真司が解説する、いまの「政治とカネ」問題、田中角栄が示したすごさ
12月13日「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)、大竹メインディッシュのコーナーに東京都立大学教授、社会学者の宮台真司さんが出演。最近もニュースが絶えない「政治とカネ」の問題について語った。
大竹まこと「きょうはどんなお話を?」
宮台真司「(まずは)政治とカネのことを、田中角栄に触れながら。マックス・ウェーバーという、いまから100年以上前の社会学者が、政治とカネの問題についてこう言っているんですね。『金のために政治をするやつと、政治のために金を使うやつを区別しろ』と。金のために政治を使うやつはもちろん『ただのクズ』です。それに対し、政治のために、たとえば自分の金を惜しみなく使う存在は、むしろいい政治家なんだ、と」
大竹「ほう」
宮台「だってそうですよ。蓄財しないで使っちゃうわけだから。さらにこういうことも言っている。たとえば金を渡すとき『代わりにこれをしろ』というのは買収なんですよ。贈賄といいます。田中角栄はそのやり方はしていない。田中角栄は『どうかこの金を受け取ってくれ』と頭を下げて受け取ってもらうんですね。何をしろ、とは一切言わない」
大竹「うん」
宮台「(受け取る側は)それで恩を感じる、重荷を感じて大将のためになんとかがんばろう、と力が湧く。贈与は力が湧くんです。田中角栄はそういう政治家で、僕の父も大企業の経営陣にいて、田中角栄に会ったことがあって。記憶力がすごい、と。会う人の奥さんが入院して退院だったんだね、ということをメモも見ずに全部憶えている」
壇蜜「わかっているんですね」
宮台「この人についていこう、と思わせる力があった。さて、いまの政治とカネってなんなんだろう、ということですよね。田中角栄が象徴するような、マックス・ウェーバーの言う『いいお金の使い方』というのができているのかどうか。お金は人を買う、人を道具にする、俺の道具として動け、というためにも使えるけど、そうじゃなくて相手に『この人のためならなんでもするぞ!』とロイヤルティ、忠誠心、あるいは力を惹起するために贈与、ギフトとして使うこともできる」
壇蜜「何に使え、とは言わない」
宮台「そう。それが田中角栄のすごさでしたね。あともうひとつ、これもマックス・ウェーバーの言っていること。政治家と役人は最終的にはハルマゲドン、最終戦争を行い得るような敵対する存在である、と。まず『役人は予算と人事の最適化を目指す動物』。これがマックス・ウェーバーの言い方。つまりポジションを上げよう自分の裁量権をより増やそう、と考えているわけだが、その行政官僚の行動の根拠は法的枠組なんですね」
大竹「はい」
宮台「プラットフォームが決まっているからやっているんです。ところが政治家はその法的な枠組、プラットフォームを変える力を持つ。たとえば行財政改革と称してキャリア官僚の人事登用の制度を変える、というのもあり得る。日本の行政官僚、特にキャリア官僚って世界でも圧倒的に学歴が低いんですね。東大の学部卒で法学部を出ていようがなんだろうが、行政官僚になるなんて先進国ではありえないんですよ。ほかの国では修士どころかまず博士をとる、ドクターのディグリーをとって役人になる。日本は2年ごとに配置転換とかして、専門性が養われない。だから本当に……ダメな人たちが法律文書を書いている」
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