【アナコラム】西川あやの「お酒が教えてくれたこと」
文化放送メールマガジン(毎週金曜日配信)にて連載中の「アナウンサーコラム」。週替わりで文化放送アナウンサーがコラムを担当しています。この記事では全文をご紹介!
▼12月01日配信号 担当
西川あやのアナウンサー
入社1年目の2015年11月。
シルク・ドゥ・ソレイユ、ダイハツ「トーテム」の取材を担当することになった。
日本での開演に先立って公演中のシンガポールで、一足先に体感させてもらい、文化放送の様々な番組でトーテムの魅力をリポートするというもの。
文化放送アナウンサーとしての経験が1年に満たない中、スケジュールの都合で私に白羽の矢が立った。
各部署の部長が集まる会議では、全員が不安を覚えていたと後から聞いた。
「西川がパスポートを持っているかどうかすら怪しい……」
期限ギリギリのパスポートは所有していたものの、外国語も全く喋れない。
録音機材の使い方もまだ知らない。
経費の落とし方ももちろん知らない。
そんな状態で、西川の初海外出張が決まったのだった。
実際には、フジサンケイグループや各種マスコミ媒体それぞれの担当者とまとめられたツアーが組まれていて、完全な1人旅ではなかった。
まず紹介されたのが、有楽町のラジオ局の方。
“この人に頼ったら概ね大丈夫だと思うから”と、他局の上司に預けられたぺーぺーの私。成田空港でツアー参加者全員で集合した後からずっと、その人と行動を共にさせてもらった。早速、空港内でパスポートを紛失したり、それはそれは迷惑をかけた。
現地での食事などもご馳走になった。
正直「なんで他局の新人のおもりしてるんだろう…」とは思われていたと思う。
色々と助けてもらいつつ、トーテムの舞台裏や出演者への取材を終え、少しだけあった自由時間に1人でシンガポールスリングを飲みに行った。
老舗のラッフルズ・ホテルがシンガポールスリング発祥の地。片言の英語で注文して、観光客価格の赤ピンクの1杯を味わった。
1年目にしてこれだけの経験をさせてもらえたことに、会社への感謝や、これから局アナとして歩んでゆくプレッシャーなどを感じながら、酸っぱさを楽しんだ。
会場やホテル周辺では壁に向かって1人で録音機材に向かって喋っているものだから不審者扱いされたり、市場では初めてのドリアンの香りに面喰ったり。
ドタバタながらもシンガポール出張を無事に終え、当時放送していた「くにまるジャパン」や「玉川美沙ハピリー」などでシルク・ドゥ・ソレイユ、「トーテム」の魅力を語らせてもらい、私の一連の勤務は終了した。
先日久しぶりに飲んだシンガポールスリングは、当時より甘ったるく感じ、自分は8年の間に多くの味を知ったのだと思った。