村上信五くんと経済クン「2024年日本の経済を元気にする業界は?」
毎週土曜朝9時~放送している「村上信五くんと経済クン」。
10月21日(土)の講義は、毎年恒例!日経業界地図を使って来年度の景気を占う!
日経BP日本経済新聞出版が毎年発行している書籍「日経業界地図」の編集者、野崎剛(のざき・たけし)さんをお迎えして、日本の経済を元気にする業界、期待される新技術を教えて頂きました。
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【「日経業界地図2024年版」について】
8月18日発売。売れ行き好調。毎年出しているが、今年は収録業界数が185。収録している企業団体が4600ということで相当内容はボリュームアップした。
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【編集について】
日経新聞の記者が、それぞれの担当業界について執筆したり地図のアップデートを行う。それをベースに、編集チームが約2ヵ月かけて、各種データや企業同士の関係に間違いがないか。情報が古くないか。漏れている情報がないかなどを繰り返しチェックする。広くビジネスパーソンや投資家などの読者のほか、就活生や新入社員を意識して作っている。
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【注目の特集は?】
「最新テクノロジーで変わる業界ビジネスチャンス」として題して、以前他の有望な100の技術を紹介。さらにそれをビジネスパーソン1000人に「2030年に期待できる」技術を尋ね、上位50件をまとめた「テクノロジー期待度番付」として紹介している。
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【野崎さんが注目する有望な技術】
⓵介護ロボット
→車に乗せての移動支援、入浴の介助など介護者の負担が多い分野を中心に、介護者がスムーズに仕事をして被介護者がストレスなく生活できるようにするための技術。期待度番付では1位。2030年にはAIを搭載したヒト型ロボットの運用が始まると見込まれる。介助をする側の肉体的な負担を減らせるのがメリットだが、介護を受ける側も相手がロボットだと遠慮がいらないのでストレスが減ると考えられている。
⓶完全自動運転
→自動車の自動運転はすでに渋滞中の高速道路といった条件下でシステムに運転を委ねられる「レベル3」に対応した市販車がすでに登場している。「完全自動運転」はその名の通り、ドライバー無しでシステムが運転のすべてを担う自動運転のこと。トラック・バスなどの物流業界で人手不足解消の鍵になるのではないかと期待されている。
⓷人工肉
→肉以外の材料から、本物の肉のような味と食感を再現するもの。これまでも大豆などからつくる「代替肉」があるが、牛や豚などの細胞を培養する「培養肉」が注目を集めている。世界の人口が増える中で、動物性たんぱく質の確保が必要になってくるが、現段階では価格が高いので、大量の培養が安価でできるようになればひき肉などミンチ状製品から普及するのではないかと思われる。味などもコントロールできる。3Dプリンターで霜降り肉が再現できるという技術にも注目。
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【業界天気図】
それぞれの業界の2024年度の見通しを晴れ・曇り・雨の三段階で表したもの。
〇明るい晴天業界
・生成AI
→去年11月に「チャットGPT」が公開されて以降、生成AIは一気に世界中で使われるようになった。生成AIは文章作成やプログラミングの自動化など用途は様々。これまで人が担っていたクリエイティブな分野でもAIによる代替が進むといわれている。そんな中、自動車にAIが組み込まれてドライバーが目的地について相談できる自動車などが実用化されるなど、これまでなかった新たなサービスを提供する動きも出てきている。
・CO2可視化
→世界のほぼすべての国と地域が脱炭素化への取り組みを本格化されているが、そのためには企業活動全体のCO2排出量を数値化し、可視化して正確に把握する必要がある。そのっためのソフトウェアを開発する新興企業が相次いで誕生している。日本でもカーボンクレジット取引市場が開設され、企業が企業努力によってCO2を削減できたとき、その枠を削減できなかった企業に対して売るという市場ができた。
〇曇りの業界
・商社
→去年は晴れとして紹介したが、今年は曇り。去年は急騰した資源高の影響で、総合商社大手5社は過去最高益を記録した。その反動で、2024年は少し落ち込む予想。商社の業績が悪いというわけではない。一方で、イスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘による中東情勢の緊迫化を受けて原油高で商社株が上昇するなど、商社にとって追い風になる可能性もある。
・陸運
→トラック運転手の時間外労働規制が強化され、年960時間が上限となる「2024年問題」がある。それ自体はトラック事業者の働き方改革が進むメリットは大きいですが、以前からの課題だったドライバー不足が深刻化する懸念もある。先ほどの完全自動運転なども長期的には解決策になるが、長距離輸送を複数のドライバーで分担する中継輸送や、鉄道や船舶で輸送する「モーダルシフト」といった取り組みを進めている。
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【ちなみに村上さんも気になる「農ビジネス」は?】
曇り。高齢化が進んでいて、日本の農業が置かれている状況は依然として厳しいため。ただ、曇りということは課題を解決すれば晴れになる。農業業界でいうと、IT活用による「スマート農業」に期待。
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テレビ・ラジオ業界含め曇りの業界があまりにも多くどんよりとした気持ちになってしまいましたが…村上さんもおっしゃっていたように、「曇りの業界の良いところは、新しい産業やテクノロジーが生まれているから、そこと協力できればちゃんと晴れに向かえるんだ、というのは今までの時代より可能性が広がっている」という考え方で前向きに進んでいくしかないのだなと感じました。来年は晴れの業界が増えますように!
坂口愛美
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この記事の番組情報
村上信五くんと経済クン
土 9:00~10:00
「経済初心者」の村上信五が、ゲストの方に教えを請いながら 「お金」に強くなってゆく番組です。 「お金持ち」しか持っていない情報を イチ早く皆さんに提供できるよ…