『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 AIは「動かし方」にコツがいる
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
今回は特別編。株式会社ピカブル代表取締役、小島貴之さんをゲストにお迎えした、87月12日放送のダイジェストをご紹介します!
どうやってAIに絵を描かせるか
残間 株式会社ピカブルというのは、どういう事業をされているんでしょう。
小島 いくつかAI周りでお仕事をさせていただいているんですが、最近成長しているものが「プロンプトスペース」。AIを利用するために出す指示文=プロンプトのマーケットプレイス、売り買いの場を提供させていただいております。
残間 オーダーするのが面倒とか、できない人?
大垣 オーダーが割と難しいんです。
小島 そうなんです。
大垣 たとえばね、残間里江子が過去何をしたのか知りたいんだけど、というのは、割とすーっと出てくる。ところが、ちょっと難しいことを言おうと思うと、順番とか、聞き方とか、上手にやらないと外されるというか、妙に違うのが出てくるんですよ。
残間 正確さを担保するには、ちゃんと聞かなきゃいけない。
大垣 僕らの世界では正確さなんですね。僕らは割と難しいことを聞くじゃないですか。そうするとめちゃくちゃプライドの高い、でもノーって言えない、能力の低いコンサルタントみたいな答えが出てくることが多いわけ(笑)。だからわかんないんだったら、わかんないって言ってほしいんだけど。すごくもっともらしくウソをつくって感じなの。今やられているのは、絵を…
小島 そうですね。いまAIって、ただChatGPTのように質問したら返してくれるBOTみたいなものだけではなくて、イラストレーション、実在しないリアルな人物だったりとか、ああいうのも生成できるでんですよ。でも文字をやり取りするよりは絵を作る方が難易度が高くて、「こういう絵を作って」ってオーダーを出しても、なかなかうまく作れないことの方が多いんですね。コツが必要で。
残間 ピカソ風に描き替えてとかいうのは…
小島 いけます、そういうのも。
大垣 残間さんの首と鈴木さんの舌をくっつけるとかね。それも簡単で、不自然じゃないようにできるんですね。
AIから安定した答えを引き出す
小島 AIの仕組みとしては、もともとバーッといろんなイラストだったりとか、文章を学習させて、答えを吐き出してくれるような会社がありまして、それに我々はプロンプトと言う形で、「こんなの作って」「こんなこと教えて」という形で指示を出しています。で、同じ指示を出しても、実はAIって毎回アウトプットが違って、ちょっとずつ変わってたりするんですよ。そういうのをなるべく安定して、イラストであったり回答を吐き出させるようにする技術も必要ですし、そもそもそういったものを正確に吐き出すためにもちょっとコツがいるので、その部分に詳しい方々が自分たちの練りに練ったプロンプト=指示を提供していただいて。
大垣 それがマーケットに上がってるんですね。「これいいね」って言って買える。
残間 お客さんはどういう人?
小島 いろんな方がいらっしゃるんですが、インターネットでECサイトをやっておりまして、商品とかそこの説明の画像が欲しいよ、とか。あとはアパレルさんで、モデルさんが海で写真を撮ってるようなイラストが欲しいよ、とか。あとはゲームの背景の素材であったりとか。そういったものに使われています。
大垣 そういうものは著作権がかかっているから、普通に商用で買おうと思うと値段がもっと高いんですねきっと。
小島 そうなんですよ。
大垣 それをプロンプト買ってきて、生成して使えば
残間 基本的に「オリジナル」ってことになるんですね。
小島 そうなんですよ。
AIを使いこなせない人のために
残間 よくそういうこと考えたね。どうしてそういうことが考えられるかが、面白い。どういうときに気がついたの?
小島 一番最初にAIが、ChatGPTがきたときに、これはすごいサービスが出たなと衝撃を受けて、AI関連で何か一つやりたいなと思っていたんです。いろいろ見ているうちに、自分の親であったりとか、友達にも使わせてみたんですけど。うまく使いこなせる人と、使いこなせない人がいることに気づいてしまって。なんか、みんながAIを使えて、人類変わるぞ、みたいなことをすごく吹聴されている世の中ではあるんですけど、実際はそれを使いこなせてない人っていうのがどうしてもいて、そういう人たちのためのサービスになればすごくいいかなと思って。
残間 それは使う人の「指示」が悪いから?
大垣 そうね。昔やっぱりITが出てきたときデジタル・ディヴァイドって言葉が出たの覚えてる? 使える人、使えない人で二極化しちゃうっていう。あれがこんどAIディヴァイドみたいになってるんだね。
小島 そうですね。まさに。
鈴木 置いてかれそうな、私みたいな人を救ってくれようというサービスなんですか。
残間 私たち無理だよ、たぶん。
大垣 もうあきらめられてる。無理だから、っていう人たちは、この中のどれか買えば、っていうことですね。ちゃんとできる人がAIに対する質問を作ってくれてるからね。
残間 数はどれくらいあるの?
小島 いろいろな方々に出品していただいて、現在では累計出品数1000件を超えています。
売り買いは1000円から2000円程度
残間 どうやって儲かるの?
小島 20%のマージンを取らせて頂いてます。
大垣 確かにAIのプロンプトを考えてそれがお金になるっていうところは、ほかにありませんよね。
小島 そうですね。海外には先行事例があったんですけど、国内ですと我々が初めてで、ほかにもいくつか同じようなサービスは立ち上がってるんですけど。
残間 出展した人が値段つけるの?
小島 はい。その20%がマージンです。
大垣 見るとわかるけど、本当に本物みたいな感じの写真だったりイラストだったりするんです。でもイラストレーターが描いてるんじゃなくてAIが描いてる。AIはおバカさんだから、こうしなさいよって言ってあげないとできない。その「こうしなさい」が上手じゃないとうまく描けないので、上手な「こうしなさい」が売り買いされている。
残間 その上手に描けたものが出展されている?
大垣 上手に描けたものじゃなくて、上手に描かせる言葉が出品されている(笑)
残間 難しいなあ。いくらぐらいのものなの?
小島 ヴォリューム・ゾーンは1000円から2000円の作品ですね。
残間 あ、そんなものなの。
小島 そうですね、中には1日に1万円とか買われる方もいらっしゃいます。
残間 でその人は何に使うの?
小島 いろいろ…
大垣 やっぱり微妙なやつもあるもんね。
残間 その仕組みができると誰が困るの?
大垣 (イラストレーターなどの)著作権者。だから何が著作権かわからなくなっちゃう。たぶんね。
遠距離恋愛が生んだテクノロジー
残間 小島さんは前、遠距離恋愛してるときに、その人との会話がなくなってくるんで、たとえば同じテレビドラマを見て話をするのができるようなものを作ったっていうんだけど、それって何をなにで見るの?
小島 そうですね、スマートホンで一緒に画面共有して。いわゆるwebsiteを見て…一緒に「じゃらん」とか見て旅行の計画を立てたりとか。youtubeで一緒に漫才の動画を見て笑ったりとか。ちょうどそのときコロナが来ていて、学校がなくなっちゃったりとか修学旅行がなくなっちゃったり。遊びたくても外に行けない子たちがいっぱいいいて。こりゃかわいそうだなって思って。その時に自分の過去の経験とリンクして、お互いステイホームで家にはいるんだけど、デートしたりとか遊べるような体験を作れたら、きっと彼らハッピーになるんだろうなって思って。
残間 「同じテレビの番組見ようよ」って示し合わせて電話しちゃダメなの?
小島 まさにそれを作ってました。どうしてもいま、若い子たちってあまりテレビ見なくて。
残間 小島さんちはNHKのニュースしか見せてもらえなかったんだって。 お父さん銀行員でお母さん日本舞踊家で。
大垣 みんな一緒に共有してるもんがないから。、スマホ自体が共有物でありなおかつ情報交換の…コミュニケーションの道具だから、それをうまいことやれないといけないんですね。
残間 見てるときはほかのもの使えないもんね。
小島 見ているときは我々がその「いま何分何秒を再生してる」とか。全部高速で同期してあげて、かつ通話とかチャットをつないで。イメージは、離れてるんだけどソファで二人で…
大垣 確かにずれますもんね。微妙に1秒とか。そうすると確かに臨場感ないもんね。で、まるっと自分たちの顔が出てきたりする?
小島 そうなんですよ。しゃべったらいろいろエフェクトが出て。
残間 いまもやってるの?
小島 もう閉じてしまいました。
鈴木 どんどん変わってくんですね。
小島 そうですね。自分の経営者としてのテーマとして、いまやるべきことはなんだろうっていうのを常に考え続けていて。やっぱりコロナ禍のときは、それがすごく伸びたんですけど。どうしてもちょっと自分の経験不足もあって、コロナ終了後に伸ばしきれなくて。いまもやるべきはAIであるし、いろんな人がAIの恩恵を享受できるようにするようないろんな仕組みを作ってあげると、もっといろんな人がハッピーになるだろうなと。
資金調達は細心に
残間 一緒にやってるお仲間は、どういう人たちなんですか。
小島 けっこうバラバラなんですけど。大学時代の友達がメインで、途中で私と一緒にやってくださるようになったエンジニアやデザイナーの方であったりだとか。
残間 みんな会社に所属してる感じなの。
小島 それまで所属していたところをやめていただいて、うちに移っていただきました。
大垣 リモートなんですか?それとも…
小島 いまは半々ぐらいにしていて。リモートでコロナ禍はやっていたんですけど、やっぱりちょっとうまくいかない部分もありまして。
残間 何人ぐらいが関わってるんですか。
小島 いま私を含めて6人ぐらい。
残間 それでそんなことできちゃうの!
大垣 そりゃそうだよね。別に…作ればいいんだもんね。
小島 はい。
大垣 そうするとお金入れたいとかいう人、出てきません?
小島 そうですね。ちょうど今月またプレスリリース出させて頂くんですけど。また数千万、資金調達させていただいて。
大垣 出したい人、いくらでもいるだろうな。でもめんどくさい奴らだから、気を付けないとダメだぜ。
小島 気を付けます!
残間 大丈夫だよ、お父さん銀行員だから。伝授してもらって。
小島 もう隠居してしまったので、ニコニコ、楽しそうに僕の話を聞いてます(笑)
残間 えええええ! でもいいね、そういう新しいことをどうやったらみんなのために使えるんだろうって考えて…印象もいいもんね。さわやかで。大垣さんみたいな人が出てきて今の話をしても…
大垣 大垣さんみたいな人は、こんなさわやかなことは考えない(笑)。めんどくさいことしか。でもこれからだんだんこういうやつは、著作権とかそのへんが厳しくなってくると…
残間 日本の政府もどうしていいかわからないみたいだもんね。
AIで世の中はどう変わる
大垣
みんなこういうのどんどんやれば…って、僕なんかは思っちゃう。でも一方で、ちょっとお聞きしたいんだけど。ビジネスの話になってきますとね。AIがあってパワポのプレゼンとか作れちゃったりするじゃない。そうするとね、過去は出来の悪い子というか、入ったばかりの新人が、「これ作っとけ」とか言われて、3日か4日くらいかかるだろうと思って、温かく見守ってやってたんだけど、最近はもう5分で10個作れとかって。可能ですよね。
小島 可能ですね。
大垣 その感じがね。ちょうどメールが始まったとき、とんでもないと思ったのね。それまで、電話がかかってきたら居留守を使えば大丈夫だったのが。「見ました?」とか言われて。ものすごく仕事の量が増えて、すり切れた感じがしたんですけど。AIって、その「すり切れ度」が…メールの時は時速50キロだったのが80キロぐらい出るようになった感じだったけど、なんか200キロが800キロになったような…なんかギアリングのかかり方が激しいじゃないですか。
だんだんこう…いまトップラインで儲からないわけだから、…人はもう海外に行っても安い労働力はないって話でしょ。で、ストックオプションで、いい加減にうまいことやれとかにもならないってことになると…。一人の人間をとにかくグルグル使いまわして、利益を出すっていうような方向に、経営者っていきがちですよね。こういうのって、僕「すり切れ感」って言葉で呼んでるんだけど。どんな風に思われます? AIをご覧になってて。
小島 そうですね。感覚的には思ったほど、みんなが恐れてるようなAIが来て仕事がなくなるみたいなことはならないだろうなと思っていて。
大垣 増えると思う、僕は。
小島 そうですね。今までAIを使ってこなかった人たちの時間軸を考えたときに、それはもう間違いなく早くなってしまって、上司の期待値も上がっちゃうんですよね。これぐらいならいけるだろうって。
残間 仕事量増えるよね。
小島 蒸気機関が出て、それまで鍬とかスコップでやってた作業が機械になったのと一緒で。みんな機械…今回言うならAIを使いこなせるように徐々に慣れていくことが重要かなと思っています。
大垣 そうしないとね…要するに電卓が出てきたときに「俺はソロバンで行く」とか言ってるわけにもいかなくなっちゃった、というようなことが起こる。
残間 どうしてもついていけない人も出てくる。
大垣 それはディヴァイドっしちゃいますよね。それで僕思うんだけど、そういうときに9時5時、9時7時って時間帯を変えずに、利益を出そうっていう動きがいい会社になるのか? 僕なんかもう最近、AI入ってきたんだったら、9時5時じゃなくて9時3時でいいじゃん。残業代1時間2500円じゃなくて、俺に1時間くれっていう。そんな風にもう、若い人は…なんていうかな、革命を起こしてくるんじゃないかって思ったりするんだけど。
残間 若い人しかダメなの?
大垣 いや、僕らはもう使う側じゃないですか。そうすると、どうでもいいやつでも、このレべルのやつが5つも15分で出るんだぜってなったら、やらせろって話になるじゃないですか。それってもう現場がすり切れるか、ついていけない人が落ちてくか。でもね、だんだん昔と違ってもう価値観がそっちに行くのかなって。おカネほしいっていう風に行くのか、こんなに楽にできるなら時間くださいって、若い人って、なっていかないんだろうか。
小島 僕は時間くださいのほうに行くんじゃないかなって思ってます。
残間 聞いてるとそう思う。
大垣 足りてないのは時間じゃないかと思って。だから時間を生む経営者が、えらい経営者になるんじゃないかなって。
小島 まさにそう思います。
残間 そうなっていけばいいね。
大垣 そうするとなんか、豊かになっていくよね。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
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宛先は、otona@joqr.netまで。
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パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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