現代人の睡眠危機:睡眠不足による悪影響3選&質の高い睡眠を実現する方法3選

現代人の睡眠危機:睡眠不足による悪影響3選&質の高い睡眠を実現する方法3選

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2023年世界睡眠調査で最も睡眠時間が短い国となった日本。一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状を有しているとも言われ、米シンクタンクによる2016年の試算(注1)では、約15兆円を睡眠不足が要因で損失しており、国民総生産(GDP)に換算すると約3%の損失をしているとされ、「寝不足大国」の覇者として君臨してしまっています。睡眠不足は心血管疾患などの身体疾患や、うつ病などの精神疾患の発症を促進するなど、人生に大きな影響を与えます。そんな睡眠不足が引き起こす悪影響と質の高い睡眠をとる方法を筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史さんの文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」でのお話を中心にこの記事では紹介していきます。

その前に!

まず、人間の睡眠にはレム睡眠ノンレム睡眠という二種類の睡眠があります。レム睡眠では脳の中で記憶と学習に関わる大脳辺縁系が活動しており、レム睡眠時には情報の整理や統合が起こり、記憶の定着が起きていると考えられています。このようにレム睡眠では脳の活動が盛んなことから、浅い睡眠と言われます。一方、ノンレム睡眠では、大脳皮質の神経細胞の活動が低下してき、脳全体の血流も低下しています。体も脳も休憩していることからノンレム睡眠は深い睡眠と言われています。そんな二種類ある睡眠が不足すると起きる悪影響と質の高い睡眠をとる方法を紹介していきます。

睡眠不足が起こす悪影響3選

1 脳の性能が落ちる

柳沢正史さんによると、徹夜明けの脳はアルコール血中濃度0.1度の脳と同じになっているようで、アルコール血中濃度0.1度は完全に酔っぱらっている状態とのこと。また、完徹でなくとも、一日6時間未満の睡眠を一週間続けるとアルコール血中濃度0.1度の脳と同じ脳の性能になってしまうなど連続した睡眠不足は悪影響があるようです。

2  認知症になりやすい

フランス国立衛生医学研究所のセヴェリーヌ・サビアらによる中高年期における睡眠時間と認知症発症率との関連(注2)という論文によると、睡眠時間が6時間の人は7時間の人に比べて50代で約1.16倍、60代で約1.47倍、70代で約1.37倍、認知症になりやすいという結果が示されており、睡眠不足は次の日だけでなく将来にわたって人体に悪影響を及ぼす可能性があるようです。

3 レム睡眠が少ない人ほど寿命が短い

米スタンフォード大学のアイリーン・B・リアリーらによる中高年者における急速眼球運動睡眠と死亡率の関係調査(注3)で、レム睡眠と死亡の関係に影響を与える可能性のあるさまざまな要因を考慮して分析したところ、レム睡眠の割合が5%減少するごとに、あらゆる原因による死亡(総死亡)のリスクは13%上昇することが分かりました。レム睡眠は睡眠時間の後半に割合が大きくなるので、睡眠不足によりレム睡眠の時間が低下すると寿命が短くなるようです。

良質な睡眠をとる方法3選

1 夜はリビングダイニングも暗くする

柳沢正史さんによると、脳の中にある体内時計は目に入る光の量でリセットされているようで、朝早い時間に青空の色(短波長の光)が目に入ると、朝を認識して体内時計が進む一方、夜の時間に強い光を受けていると、まだ昼ですよと体内時計が勘違いをしてしまうので、リビングダイニングや寝室の光を暗くした方が良いと紹介されています。

2 アルコールを睡眠前に飲まない

柳沢正史さんによると、アルコールには催眠作用があるのである程度飲むと寝付くことはできますが、その後は大抵の場合はしばらくすると起きてしまうとのこと。これはアルコールが体内で分解されてアセトアルデヒドに姿を変えますが、アセトアルデヒドはむしろ覚醒機能があり、交感神経を活性化させるため目が覚めてしまう原因となるようで、必ず睡眠の質が悪くなるので夜ご飯で飲酒を止めて、寝る前には覚めかけているくらいが理想的と紹介されています。

3 カフェインを睡眠前にとらない

カフェインはアデノシン受容体への作用により覚醒度を向上させます。これは睡眠にも影響を及ぼしており、日本大学医学部の赤柴 恒人氏による睡眠とカフェインとの関連性についての疫学研究レビュー(注4)では、カフェインの摂取により総睡眠時間は減少し睡眠効率も低下することが分かっています。寝る時間の五時間から六時間くらい前には取らなければ睡眠に影響は少ないでしょう。

終わりに

睡眠は人生の1/3と言われているように、私たちの健康と幸福に重要な役割を果たしています。睡眠不足からくる悪影響を最小限に抑え、質の高い睡眠を確保するために、紹介した方法を試してみてください。良い睡眠習慣を身につけることは、健康的な生活の一環として大切なステップです。

そんな睡眠について、今後ノーベル賞の受賞が有力視される研究者が受賞するという「クラリベイト引用栄誉賞」も受賞している柳沢正史氏などをお迎えした「睡眠は、私たちに何をもたらすのか」はPodcast(前半後半)やYouTube(前半後半)を是非お聞きください!

様々なキーワード基に経営学者・入山章栄さんが様々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」は毎週月曜日 19:00~20:00放送中。

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参考文献

(注1) Hafner, Marco, Martin Stepanek, Jirka Taylor, Wendy M. Troxel, and Christian Van Stolk, Why sleep matters — the economic costs of insufficient sleep: A cross-country comparative analysis. Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2016. https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR1791.html.

(注2)Séverine Sabia. “Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia” Nature Communications 12,no. 2289 ( 2021 ):

https://www.nature.com/articles/s41467-021-22354-2

(注3)Eileen B. Leary. “Association of Rapid Eye Movement Sleep With Mortality in Middle-aged and Older Adults” JAMA Neurol 2020;77(10):1241–1251 :

10.1001/jamaneurol.2020.2108

(注4)赤柴 恒人:健康日本21(第2次)に即した睡眠指針への改訂に資するための疫学研究、分担研究報告書、 睡眠とカフェインとの関連性についての疫学研究レビュー

H25-循環器等(生習)-一般-007(2013)

 https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/22671

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