【アナコラム】高橋将市「競馬実況に欠かせないもの」
文化放送メールマガジン(毎週金曜日配信)にて連載中の「アナウンサーコラム」。週替わりで文化放送アナウンサーがコラムを担当しています。この記事では全文をご紹介!
▼10月20日配信号 担当
高橋将市アナウンサー
季節は10月。プロ野球が大詰めを迎えようとしている一方で、競馬は秋のGⅠシーズンが本格的にスタートしました。
私は競馬実況も担当しますが、中継の際に欠かせないもの、それがレースの出走馬の馬名や騎手が着る勝負服を記した出走表です。
自分が実況するレースは出走表の雛型用紙に、レース名や芝またはダート・距離などの条件、馬名・性別や馬齢、脚質(レーススタイル)、騎乗する騎手名、その馬のトピックスを記入していきますが、まず先にすることは「その馬に騎乗する騎手が着る勝負服の模様を、色鉛筆で塗ること」です。
野球実況は選手名が出ることが理想ですが、ポジション名のみで実況しても中継としては成立します(例:ピッチャー第○球を投げた、バッター打った、サード正面のゴロ、サードボールを捕ってファーストへ送球、アウト)。
しかし競馬実況で「スタートしました。先頭は馬、2番手は馬、3番手は馬」ではリスナーがさっぱりわからず、中継として成立しません。
従って走っている馬をしっかりと見分け馬名を伝えることが必須となります。そのために必要なのが出走表です。
馬を見分ける目安となるのが、騎乗している騎手が着ている服「勝負服」の模様です。
勝負服の模様は馬主ごとに決まっています。私が先日実況したGⅠ・スプリンターズステークスを例にご説明します。
このレースは1着⑥番ママコチャ、2着⑩番マッドクール、3着①番ナムラクレアでした。
各勝負服の模様は文字化されており、ママコチャは「黒、青袖、黄鋸歯形(くろ、あおそで、きのこぎりはがた)」、マッドクールは「黒、赤十字襷、袖黄縦縞(くろ、あかじゅうじだすき、そできたてじま)」、ナムラクレアは「薄紫、水色一本輪、袖水色二本輪(うすむらさき、みずいろいっぽんわ、そでみずいろにほんわ)」です。文字化されたものを見ながら色鉛筆で塗っていきます。
私の場合、馬名を書いてから色を塗るまでに約1時間かかります。
作成後は何度も何度も声を出しながら見返して頭に入れていきます。
スポーツ中継のみならず放送で間違いはしたくありません。
なので本番は緊張しますが、競馬中継に関しては間違えられないプレッシャーが他の中継・放送の比ではありません。
ただそれだけにやり甲斐があるジャンルです。競馬実況アナはこのような準備をして放送に臨んでいます。
秋のGⅠシーズン、白熱のレースをぜひ文化放送の競馬中継でお楽しみ下さい!