『VIVANT』の「別班」も話題。スパイがヒーロー化される理由、注意すべき点
9月25日「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」(文化放送)、特集コーナーは「スパイ」について語り合った。先日最終回を迎えたドラマ『VIVANT』、映画『ミッション・イン・ポッシブル』『007』シリーズなど、スパイにフィーチャーした作品は昔から人気である。そんなスパイの実態は、いったいどんなものなのか。
西川あやの「今月17日に最終回が放送された堺雅人さん主演ドラマ『VIVANT』。関東地区での世帯視聴率19.6%となり、この夏のドラマの中ではぶっちぎりの1位、この番組でも話題になりました」
山内マリコ「私、観ました。リアタイじゃなくてU-NEXTで、追っかけで。楽しかった!」
西川「最終回まで観て、公安警察の描かれ方はいかがでした?」
山内「描かれ方……。阿部寛さんが演じていらっしゃって、気になるセリフがあったんですよ。『日本の公安は世界一公平なジャッジをするはずですから』みたいな。SNSで『それはないだろう』という反応があった。公安のポジションが、阿部寛さんが演じているので頭の切れる、仕事のできる有能な、ヒーロー的なポジションだったけど、実際の公安の話からすると、どこまでリアルなのかはわからないかな、という気はしました」
西川「青木さんは『VIVANT』の生みの親、とおっしゃっていましたけど……」
青木理「そんなこと言ったらTBSの人、怒るよ(笑)。でもまったく無縁ではない、というのは先週お話ししたとおり(9月18日分のコラム参照。ポッドキャストで配信中)で。僕、全部は観ていないですよ。ただ先週紹介したように『別班』という、自衛隊の秘密情報機関みたいなものの存在を初めてきちんと書いたのが、僕の先輩の石井暁さんという人なので。スタッフから先週、放送後にリスナーから『うちの子が別班に入りたい』と言っています、というメールが来ていたと聞いて、怖いことだと思いましたね(笑)」
西川「アニメ、マンガの『名探偵コナン』でも、安室透というキャラクターが、警察庁警備局警備企画課、通称“ゼロ”という機関に所属しているんですね。公式サイトでも『公安警察のゼロ』と紹介されているそうなんです」
青木「公安警察というのは警察の一部門なので、なんでもかんでもやっていいわけじゃないんですよ。関係ないような情報収集、調査活動をしたら『これ、あなたたちの任務ですか?』『やっていいんですか?』と問われかねない。公安警察があたかも『日本のCIA』みたいに言われているけど、そういう見方をするのも間違っているし、危ない」
西川「『VIVANT』効果と言っていいのかわかりませんが、青木さんの書かれた『日本の公安警察』という本がメチャクチャ売れているんです」
青木「20年以上前に書いた本ですけどね。メチャクチャは売れていないですよ(笑)」
山内「きのう『NHKスペシャル』で大川原化工機事件(特集)を観ていて、『VIVANT』のやっていた時間だから『ええっ!?』と思ったんですけど、公安の成り立ちや『こういう機関です』っていう説明、それと大川原化工機事件との整合性がとれないんですよ」
青木「いろんなことを調べまくるので、山内さんが言ったことはいい(合っている)と思いますよ。ドラマだとヒーローチックに描かれがちだけど、実態はどうなのか、と」
映画やドラマなどにおける治安機関、情報機関の描かれ方について、青木、山内が『VIVANT』の感想も踏まえて次のように語った。
青木「エンターテインメントの世界は往々にして、(組織を)ヒロイックに描くので、それはちょっと危ないですよ。というのが、『VIVANT』を観た僕の感想でもあるし、僕の先輩の石井暁さんの感想でもある」
山内「本来なら取り扱い注意の、批評的にならなければいけない機関を格好よく描く。ドラマが組織(別班)を知るきっかけにはなったけど、ちゃんと考えて観ていかなきゃいけないんだなと。今までみたいに格好いいものを格好よく描いてみんなが喜ぶ、という時代じゃない。そこら辺はみんな批判的に観ているな、というのはSNSでも思いました」
「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」は毎週月曜~金曜の午後3時30分~5時45分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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