『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    埼玉県の皆さんに考えていただきたいこと

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    埼玉県の皆さんに考えていただきたいこと

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

埼玉県では50歳以下でも利用可能

埼玉県は、移住・住み替え支援機構と協働連係の協定を結んで、普通は50歳以上の方が対象の「マイホーム借上げ制度」を、年齢に関係なく利用できる制度を作ってくださっています。でも、今のところ、真剣に考えてくださる方が少ないので、とても残念に思っているところです。
最近、あちこちの自治体から、講演に呼ばれていくことが増えていますが、ちょっと思ったことがあります。ほとんどの自治体が「空き家」について話してほしい、という要望をされます。講演のタイトルは「住み替えの支援」ですから、ほとんどの聴衆は利用可能な不動産をお持ちの方なんです。ですから、基本的には空き家をお持ちのはずなんですが、「では、この中で空き家をお持ちの方は?」と手を上げていただくと、ほとんどの場合、誰一人として手を上げない。だいたい最初に15分くらい、役所の方が「空き家」のお話をされているのですが、ほとんど右から左へ頭を通り抜けているんですね。

え?私の不動産が「空き家」?

要するに皆さん、親から引き継いだ家はあるけれど、誰も住んでいないだけで、それが「空き家」に当たるとは思わないんです。つまり「空き家」の認識がまったくズレている。皆さんのお気持ちはよくわかるんですけど、最近の定義では「固定資産税がかかっているが、住民登録がない」という場合はみんな空き家なんです。でも普通の感覚だと、かなりボロくなっているものが「空き家」。だからほとんどの人は「空き家」を持っているとは思っていないんですね。だから、自治体がすごくズレた議論をしていて、しかも「取り壊すのに補助も出ますから」なんて話をするのでますます「それはウチには全然関係ない話」と思う。

住んでいない家はすぐ傷む

次に「家を人に貸すと傷むと思いますよね。では、住んでいない家は傷むと思いますか?」って聞くと、たいていの方は「人が住む方が傷む」と答えます。本当は逆なんですとお話しして、次に「今年の夏は暑くて、湿気も多いですよね。人の住んでない家を風通ししないで置いておくと、どれくらいで傷むと思いますか?」と尋ねます。皆さんイメージをお持ちじゃないんですが「たぶん、この夏を越えたらカビだらけになりますよ」って言うと、「へー」という感じ。この番組では何度もお話してますから、リスナーの皆さんはご存知かと思いますが、世間ではそういう話はほとんど出ないので…。ほとんどの人にとって家は、住まない家はケースに入れてある商品と同じで、傷まないと思っていらっしゃる。風通しが悪いだけでダメになるという意識は、ほとんど持ってない方が多いんです。
地方にそういう家をお持ちの方は、ご近所が「風を入れないとダメだ」「庭が荒れ果ててる」とか、いろいろ言ってくださるから、気を遣わせて申し訳ない…と、維持管理に通われる方も多いんです。でも町中だと、隣がどうなっても誰も気にしないので…。

シニア期の所得を考える

65歳以上の所得がどうなっているかという統計があります。年金と、同じくらいの金額の勤労の所得があって、その次に財産からの所得というのがありますが、これが20分の1くらいしかありません。年金が15万ぐらいだとすると、働いて同じく15万くらい、それに対して財産からの所得は1万7千円くらい。ここがあと5万増えると、全然違うんですよ…って言うと、反応が違ってきます。
前はシニア期に入るにあたって、積極に住み替えることで新しい人生を…というお話をしていましたが、最近はもうストレートに「家を貸さないでいられるぐらいお金持ちの方は、もう帰っていただいて結構です」「皆さん本当にそんなにお金があるんですか」とお話します。

人生100年時代のお金

それから女性の方には「90歳になって何%生き残っているかご存知ですか?54%ですよ。この3年で2%伸びました。平成7年には24%でした。たぶんですけど、この先、皆さんが90歳になる頃には、おそらく70%越えると思います。それまで何年あるか、わかってらっしゃいますか。この先、収入が増えるんですか?」このあたりまでくると、だんだん皆さん真剣になってきます。ここまでストレートに言わないと、お分かりいただけない。
最近あまり講演はやってなかったんですが、こうなってくると、もっとどんどんやった方がいいかな、と考え始めています。
昔は、「豊かになるための住み替え」でしたが、今は「空いた家の運用」、それをしないと貧乏になる。家を放っておいて腐らせるほど贅沢できる身分なんでしょうか、と。生きていくのに必要な金額はこれからさらに増える一方です。ですから、ぜひ埼玉の方も利用を考えていただきたい。「自分は家を放っておけるくらい裕福だろうか」と、胸に手を当てて考えるべき時代になりつつあります。

今回は、「空き家の運用」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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