『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    価値の尺度を変える時代

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    価値の尺度を変える時代

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

金利を上げない日銀の真意は…

今回は、こんなメールを頂戴しました。

杉並区 貧乏に稼ぎが追い付かれた男 さん (52歳)

物価はどんどん上がるばかりなのに、
日銀は金利を低く抑えたままです。
我々の暮らしはどうでもいいということなのでしょうか。

金利を上げるタイミングは

要するに、金利が低いので資産も増えない…というご趣旨なんだと思います。ただ、日銀が金利を上げないのは、現状、まだ景気がめちゃくちゃいい訳でもないですよね。こういう状況でもし金利を上げたとすると、お金を借りている会社の負担が増えます。そうすると、もっと物価が上がる危険性があるわけです。
金利を上げるなら、景気のいいときでないと、かえって景気が冷えてしまいます。いま実際はどうなのか。物価はどんどん上がっています。でも、景気はどうなのか。数字の上では景気がよく見えますが、皮膚感覚ではそう思えない。こんなときに金利をぐいっと引き上げたら、我々の暮らしはもっとひどいことになるかもしれない。そう考えて日銀は抑えているんですね。

これから暮らしはどうなる

それにしても、これからどうなっていくのでしょう。収入は増えないのに、物価は上がっていきます。賃上げも起きてはいるんでしょう。でも相当な数の方々が年金で暮らしているわけです、年金は「マクロ経済連動」っていう、よくわからない仕組みになっていて、物価が上がっても上がらないけど、下がったときは下げて、それでちょっとずつ水準を落としていく。これまでは政治で、ちゃんとやらないことがあったんだけど、そろそろきちんとやろうとなっている。そうなると、どんなことが起きていくのか…。

時間を軸に考え直す時期

残間さんのお話だと、60過ぎの年金をもらいながらタクシーの運転手さんをやっていた人たちが、コロナもあってっ人生観が変わり、もうあくせく働かなくても、ギリギリのお金さえあればいいと考えるようになって、どんどんお辞めになっているそうです(若い人は若い人で、コロナで収入が減って、これじゃ子どもも育てられないって大量にお辞めになった。それでタクシーの運転手さんが何万人も減っているそうです)。
もうこの時代、何もかもカネを軸にして考えるんじゃなくて、ゆとりというか、時間を軸にして組み立てなおすことが必要になっているように思います。

AI時代に考えるべきこと

昔は、たとえば冷蔵庫が家に来たら、食べ物が腐らなくなったし、洗濯機が来たらずいぶん手間が省けるようになりました。でも最近は、何か発明されると、楽になるかと思いきや、かえって忙しくなることばっかりだと思いませんか。メールがその典型です。
AIにしてもそう。AIが考えてくれるから楽になって、5時に帰れるのかと思ったらそうじゃない。AIのおかげで仕事が3倍くらいこなせるようになって、逆にすごく忙しくなってしまう。

価値の尺度を変えていこう

結局、単位時間あたりの労働から、とんでもなく収奪されてく感じになってくばっかり。これは、お金を尺度にして考えてるからなんですね。でも、時間を増やすっていうふうに発想を変えたら、「こんなに便利になったんだから3時に帰ろう」という方向に行くんじゃないか。
そうやって価値の尺度を変えるところに行かないと、もう経済論ではうまくいかない時代なんじゃないかと思うんです。

今日は「金利」の話から始まって「価値の尺度」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…

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