『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 銀行や住宅金融支援機構にひとこと
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
いまの住宅ローンは基本的におかしい
以前、この時間に「仕組債」の話をしました。そうしたらとうとう、もう報道されていますから名前も出しますが、千葉銀行、ちばぎん証券、武蔵野銀行の3社が、金融庁から「ひどいことをした」「悪質すぎる」と業務改善命令を受けたんです。実際、預金者の大切な預金で、危ない商品をあまり説明せずに買わせていたということがあったようです。
今日はその話じゃないんですけど、住宅ローンも大きな問題があるということをお話したい。地方銀行でも、もう40年ローンが当たり前になっています。住宅そのものが、特に大手メーカーのものなど、下手をすると去年から1千万くらい値段が上がってきているという背景があります。
住宅の値段が上がっている
住宅の値段が上がっているのは、便乗値上げとかではありません。材料費も上がっているし、土地も上がっています。もう30年ローンだと月々の返済額が高すぎて無理になっています。これまで主流だった35年ローンですら、私は以前から「おかしい」と言い続けてきました。これだって、30歳から35歳ぐらいで借りたとしたら、65から70くらいまで払い続けなければいけない。それを40年となると、確実に75、下手したら80ぐらいまで返済が続いていくわけです。
銀行にとっては、住宅メーカーや工務店は取引先です。銀行がローンを組んでくれなければ住宅は売れないので、取引先が困ってしまう。借りてもらうためにはどうすればいいか、まずは金利を下げる。でも金利はもう極限まで下がってしまった。そこで打つ手というのは、返済期間を伸ばすしかないわけです。
いつまでも返し続ければいいのか
住宅ローンは、年間の支払額を年収で割った比率が一定以上でないと組めない仕組みになっています。住宅価格がここまで上がってしまうと、35年でも誰もローンを組めないようなことになってしまう。そこで返済期間を伸ばす。さらに「夫婦の共有」を勧められます。なぜ勧めるかといえば、共有にして、ローンの総額を二つに割ることで、借りられる額が1千万ぐらい増えるんです。これは単純な算数の問題なんですけどね。
さらに、自動車ローンなんかも借りてたら、「これも住宅ローンと一緒にしちゃいましょう」と、まとめてしまったりするのが、当たり前になってきています。大都市圏だけでなく、地方でも住宅はものすごく高くなってきているので、全国的にこういう傾向が出てきているんです。
「残価設定型住宅ローン」があるのに
私は、老後の支払いが楽になる「残価設定型住宅ローン」をとにかく早く作って、皆さんにご利用いただきたいと思っていました。60代後半以降の支払いを負担にならないような仕組みです。特に、それほど年収のレベルが高くない方にも使っていただけるようにと思っていました。メーカーの方は「あなたは年収が低いから、ちょっと…」みたいな話は言いにくいでしょうから、銀行の方はちゃんと言ってくれて、残価ローンを勧めてくれるだろうと思っていたんですけど、どこの銀行も「これをやるべきだ」とは思ってくれないんです。
住宅金融支援機構も動かない
リ・バース60というものがあります。これは住宅金融支援機構が銀行に対して保証してあげる融資保険です。この仕組みと、残価設定型住宅ローンを組み合わせたら、とてもいい感じになるんです。それで住宅金融支援機構の方に話をしようと思ったんですけど、まったく耳を貸してくださらない。その一方で、省エネ基準を厳しくして、より高いモノを買わざるをえないような形になってきています。銀行は銀行で、目先のローンさえ組んでくれれば後は知らないよ、という感じ。でも仕組債をお年寄りに売りつけるのと、若い人を80まで借金で縛るというのと、同じくらい罪が深いと思います。何とかなりませんか、と、OBの方を通じて金融庁に話をしてもらったんですが…動かない。いったいこの国はこれからどうなっていくのか、いま私はかなり憤っています。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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