『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「金融」という言葉、そもそもの意味は…

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    「金融」という言葉、そもそもの意味は…

Share

情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

金融とは「お金を融通する」こと

まず、リスナーの方からいただいたメールをご紹介します。こんなメールもいただけるようになったんだって、ちょっと感慨深いところがあります。

朝霞市 生活を自衛し隊 (55歳 女性)

「金融」って、金を融かすって書くから、
投資のことなんかを指してるのかなと思ってました。
そうしたら先日、辞書を引いてびっくり!
「金銭を融通すること」、略して金融なんですね。
大垣さんは先刻ご承知かと思いますが、
ちょっと
びっくりしたのでメールしてみました。

確かに、金融って一つの言葉になってしまっていて、日銀がやっていること=金融といったイメージをお持ちの方が多いのではないかと思います。でも実際は、メールにある通りで「お金を融通する」こと。
これは、僕らは「お金の時差を埋める」っていうように説明しています。今お金がいるけど、今なければ借りる。後でお金がいるけど、今は余っているから運用する。お金のいるときと、入るときに時間の差があると、その間を埋める、それが金融ってことなんです。
残間さんは「金融業っていうと、昔のお代官様みたいな、サスペンス劇場に出てくる感じがしちゃう」っておっしゃってましたけど…。

109.5%以上の金利は処罰対象

いまの金利の規制対象、これ以上の金利で貸すと処罰されますよ、というのは109.5%以上ということになっています。109.5って聞くと、メチャクチャな金利みたいな気がしませんか? 100%超えてるっていうことは、1年借りてたら2倍以上になっちゃう。ひどいな、と感じる方が多いのではないかと思うんです。
でも、こういう例を考えてみてください。たとえば残間さんがお財布を忘れて出てきちゃった。で、私に「きょうお財布忘れてきちゃったから、1万円貸して」と言われて、私がお貸ししたとします。残間さんは大垣に借りを作りたくないからとか思って、翌日返してくださるときにこれ利息だから…って、1万50円くれたとします。これ年利にすると何%だと思いますか?
50円は1万円の0.5%。年利はこれに365を掛けるわけです。そうすると…182.5%。刑事事件で有罪になれば懲役5年の処罰を受ける可能性があります。

高金利で借りて回る事業はない

いまの法律は1日だろうが1年だろうが、年間109.5%、日歩では30銭。これを超えると違法ということになってます。
融通という視点で考えてみると、これはなかなか興味深いです。確かに、これから事業をやりますっていう人に100%の金利でお金を貸しても、そんな高い利回りの事業は存在しませんから、貸した瞬間からうまくいかないのは当然わかってます。そこにつけこんで、何か悪いことをしようって考えてるんだな、ってわかります。
でも、来週になったら必ずお金が入ってくるけど、今日の手形が落ちないのでなんとかしのぎたい…っていう場合。昔は「街金」っていう言葉がございました。町の金融業、うちは金利高いよって。なんとか1週間しのぐためだったら、日歩30銭以上取られたって高いとは思わないでしょう?
昔はこういう金融があったんですね。短いところを融通するから、金利に直したらメチャ高かもしれないけど、感覚的には高くない。

「サラ金地獄」で法律が変わった

出資法という法律では、借金の元本が10万円未満なら20%、10万円から100万円未満は18%、100万円以上は15%までと金利が決まっています。
何か事業をやるにしても、15、20%以上の利息を払えるようなものはなかなかありませんから、それぐらいにしときなさいよ、ということなんですね。
それでさっきの例のような「高くてもいいから来週まで何とかお願いします」っていうニーズはあっても、法律に従ったらゴミみたいな金利になる。怖いから誰もやらないわけなんです。
昔は20と109.5の間に「グレーゾーン」っていうのがありまして、短期で融資してくれる「街金」が、相手が任意に払うんだったらそれでいいことにしようね、となってたんです。
ところが「サラ金地獄」とか言われるようになって、払えないなら腎臓売りなさい…とか、そんな問題がいっぱい起きた時期がありました。社会問題になったので、皆様もご記憶かと思います。そうなるとメディアもみんなグアーッとそっちの方向に流れて行って、それでグレーゾーンがなくなることになったんです。でも、その結果倒産が増えました。みんな貸してくれなくなっちゃったから。
またその結果、「過払い金」というものが生まれることになって、いまラジオやテレビで盛んにCMが流れるようになった、というわけなんです。
今日は「金融」について、ちょっと考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

Share

関連記事

この記事の番組情報


大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ

大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ

土 6:25~6:50

楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…

NOW ON AIR
ページTOPへ