過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 8月30日 放送分
「サバがマグロを生む話」
コーチャー/吉崎悟朗さん(東京海洋大学准教授)
大村正樹&吉崎悟朗
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。わが家のキッズは水曜日から学校が始まったので、みんなの中にも、もう学校が始まっている子もいるんじゃないかなぁ。前回はヤマメがニジマスを産むというすごい話だったんだけど、今日はサバがマグロを産むというお話。これまたすごいでしょ。大きさが全然違うものね。最近、マグロの量が世界的に減っているというニュース見たことある?サバがマグロを産んだら、すごいことになるんじゃないかと思うけど。さぁ夏休み最後のサイコーは、先週に引き続き東京海洋大学准教授の吉崎悟朗先生です。こんにちは。
こんにちは。
大村正樹
先生はすごくお魚に詳しいんですけど、東京海洋大学というと「さかなクン」がいる大学ですよね。仲いいんですか?
  よく会いますよ。
大村正樹
やっぱり、あのままの感じですか?
  もういつもあんな感じで元気いっぱいです。
大村正樹
前にこのラボに来てくれて、ものすごいテンションであっという間に終わっちゃったんですけど、東京海洋大学の先生は元気がいい方が多いんですね。
いえいえ(笑)、僕もですか?
大村正樹
フレッシュな感じがします。
  ありがとうございます。
大村正樹
いま先生はサバがマグロを産む技術を研究中なんですよね。マグロは競りに出すと何百万円もするのに、サバって1匹何百円で買えるじゃないですか。夢のようなお話ですよね。
そうですね。将来の水産業が根本的に変わってしまうかも知れない。
大村正樹
でも、何でマグロなんですか?
  皆さん最近テレビや新聞でご覧になってると思いますけれど、いまクロマグロが減ってきています。日本人は元々クロマグロが大好きで、たくさん獲ってたんですね。
大村正樹
よく僕たちが寿司屋さんで食べているのはクロマグロですか?
  え〜と、高級なお寿司屋さんだったらクロマグロですね。
大村正樹
僕はそういうとこにはあんまり行かないなぁ。
  高級じゃなかったら違うマグロかも知れないですねぇ(笑)。
大村正樹
まずいなぁ、どうしよう。それは何マグロですか?
  ビンチョウとか。
大村正樹
あ、トロビンチョウとか食べます。
  そういうマグロも減っているんです。いずれにしても、マグロの仲間はみんな減ってます。
マグロ
 
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大村正樹
ニュースにもなりましたものねぇ。じゃあ、それを解決できる可能性もあるというお話ですね。いま、どういう形で進んでいるんですか?
私たちが目指しているのは数十年前、日本人が世界中にマグロを獲りに行くようになる前、世界の海にマグロがたくさん泳いでいた時代です。まぁ私自身が見たわけではないですけれど、いま明らかに獲れる量は減ってきている。例えば、オーストラリアの近くで獲れるミナミマグロというマグロは、絶滅危惧種に指定されてます。クロマグロも北大西洋の近辺では、本当に数が減っていることが心配されてるんです。
大村正樹
北大西洋というと日本から遠いところですか?
  そうですね。例えばパンダやトキとかの絶滅しそうな動物だったら、食べるなんてことないですよね。でも魚になると、絶滅危惧種に指定されているミナミマグロでも日本人はたくさん食べています。そういうふうな状況を何とか救ってあげなくてはいけない。ひとつには養殖があります。でも私たちが目指しているのは、先週お話したような技術を使って、マグロの赤ちゃんをたくさん海に放す。放流することで、昔みたいに元気なマグロがたくさん泳いでいる海を取り戻したい。それが、私たちがいま目指している研究です。
大村正樹
可能ですか?
  ええと。まずサバとマグロは実は同じサバ科です。
大村正樹
知らなかったぁ。マグロ科ではなくサバ科ですか?
  はい。私たちはイワナという魚にニジマスを産ませることも成功しているんですが、このイワナとニジマスは同じ科だけど違う「属」に属している。サバとマグロも同じ科だけれど違う「属」に属している。遺伝的には非常に似たような関係です。イワナとニジマスができたんだから、サバとマグロもできるんじゃないかと思っています。
大村正樹
ヤマメ、ニジマスだけじゃなくて、イワナ、ニジマスも成功されている。
  そうです。大切なことは、卵や精子の元になる細胞をサバに移植するので、マグロの細胞をサバが育ててくれるかどうか、そこが重要なんです。
大村正樹
お母さんのお腹みたいなものが、マグロを育てる環境にあるかどうかということですね。
  卵巣や精巣が家だとすると、住民はマグロの細胞です。マグロの細胞がサバの家の中で快適に、ちゃんと卵や精子まで育つかということが問題です。
大村正樹
マグロの赤ちゃんが「サバ君の家は住み心地いいなぁ」って、なるかどうかということですね。住み心地はいいんですか?
  実は今、それを調べているところなんです。だから、もしかするとサバはマグロを産まないかも知れない。カツオじゃなければ産まないかも知れないし、逆にサバでも十分だしアジでもできて、もっと小っちゃな魚でもできるかも知れない。それを色々調べています。
大村正樹
だけど、もうすでにヤマメからニジマスを成功されているからノウハウみたいなものがあるわけですよね。でもまだその段階というのは、何か理由があるんですか?
私たちにとって大きな壁のひとつだったのが、サバの卵というのはタラコぐらいなんですね。だから、ヤマメで成功した直径が5ミリ6ミリの卵の実験を、直径が0.何ミリの卵に進化させなくてはいけなかった。僕たちはよく「これは黒電話の技術を最新の薄型携帯にまで進化させるのと同じような技術が必要じゃないか」と言っていました。そこの部分はクリアできていて、サバに細胞を移植するところまでは十分うまく行くようになっています。
マグロ
 
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大村正樹
マグロの卵の大きさはどれぐらいですか?
  1ミリです。
大村正樹
タラコのイメージに近いですね。先週のニジマスの卵みたいに、シャケの卵であるイクラみたいな大きさではない、ということで難しかったんですね。でも、移植まではクリアしている?
はい。あとは、マグロの卵と精子の大もとになる細胞を、いかにうまく集めてくるかを研究しています。
大村正樹
この研究の成果が出る目途はできてるんですか?
  4、5年の内には、サバから1匹でもいいからマグロを産ませたいなと思っているところです。ただ実際に使うには、マグロをちょっとだけ産むサバではダメなんです。要するに、サバはたぶんマグロも産むけど、自分自身の卵もたくさん産むんですね。だから実際に産業的に使っていくためには、マグロしか産まないサバを作る必要があるわけです。そういう意味では、サバが1匹でもいいからマグロを産むというところまではまぁ4、5年でやりたい。マグロしか産まないサバを作るまでは更に5年ぐらいかかるかなと。
大村正樹
じゃあ、10年後ですね。先生、2週にわたってお話を伺って、魚に関する知識がものすごいなと思ったんですけれど、ちなみにお生まれは?
僕は鎌倉です。
大村正樹
海の近くですか?
  そうですね。
大村正樹
少年時代はどんなお子さんだったんでしょうか?
  お魚ばっかり追っかけてました。
大村正樹
さかなクンとよく似たところもやっぱりある。
  そうかも知れないですね。夏休みの宿題で、今も絵日記とかあります?
大村正樹
低学年はあります。
  絵日記をある時に振り返ってパラパラめくってみたら、夏休み40日のうち30日が「今日は釣りに行きました」で始まっていました(笑)。
大村正樹
そうですかぁ。だけど、さかなクンとはちょっとキャラクターが違いますね。どっちが良かったと思いますか?
  まぁ、僕はこれで良かったかと思ってますが(笑)。
大村正樹
僕もそんな気がします(笑)。本当に先生の研究が5年後10年後ニュースになって、テレビでお姿を拝見する日が来るかも知れませんね。楽しみにしてます!
ありがとうございます。
大村正樹
先生がこれを成功させたら、ノーベル賞が取れるんじゃないかな。マグロがいま世界的に少なくなっているのを救うことができたら、絶対何年か後に取れると思うんだけどなぁ。こういうところにノーベル賞のヒントや種が・・・。僕も何か考えよう!
魚の群れ
 
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