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PART1 くにまる東京歴史探訪
ONAIR REPORT

10月26日(月)〜10月30日(金)
今週は、「江戸川柳の世界」。
江戸時代、庶民の文芸として、 俳句以上の凄まじいブームを巻き起こした「川柳」。
現代に生きる我々にとって、多少とっつきにくいながらも、 よーく噛み締めて味わうと、
汲めども尽きぬ面白さを持つ 江戸川柳の魅力をご紹介してまいります。

10月26日(月)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
今日のお話は「にぎやかなこと にぎやかなこと」
落語、「雑俳(ざっぱい)」。 ご隠居さんと八っつあんの、珍妙な俳句のやり取りで 笑わせてくれる一席でございます。 現在まで残る江戸川柳の多くは、 こんな風にして、生まれてきたのではないでしょうか。 川柳は、もともと「前句付け」と呼ばれる、 言葉遊びの一種でした。百科事典で「川柳」の項目を引いても、 「雑俳(ざっぱい)の一様式である前句付(まえくづけ)から、 付句(つけく)の五・七・五だけが 独立して詠まれるようになったもの」と、ございます。 「前句付」というと、ちょっと難しい感じがいたしますが、 現在も「笑点」の大喜利などでよく見られる問題。 短歌のように、五・七・五・七・七の歌を詠むのですが、 後ろの「七・七」が決まっているというものです。
たとえば、江戸時代の例で申し上げますと、 「にぎやかなこと にぎやかなこと」。 この七・七に、前の五・七・五をつけるというもので、 こんな川柳が作られました。 「お妾の あんまり産むも 安く見え」 色気が何よりのお妾さんが、あまり沢山子供を産んでしまうと、 どこか安っぽく見えてしまう、という意味ですが、 これに「にぎやかなこと にぎやかなこと」と続くわけです。 「お妾の あんまり産むも 安く見え  にぎやかなこと にぎやかなこと」 このようにして、江戸中期から後期にかけて、 膨大な量の川柳が生まれてきました。
本にまとめられる場合、後ろの七・七は省略されるのが普通。 このようにして、現在まで残る名作川柳の数々が、 生み出されてきたのです。 昭和四十八年(1973年)十一月十八日、 日本武道館で行われた第四回 世界歌謡祭・本選。 グランプリを受賞したのが、 小坂明子さんの「あなた」でございます。 作曲者に三千ドル、歌手に千五百ドルの賞金ということで、 これ、作詞・作曲も小坂明子さんでしたから、 一人で合計四千五百ドル…当時のレートで考えますと、 およそ百四十万円の賞金を手にしたことになります。 実は、川柳も、この世界歌謡祭に似て、 上位に入賞すると、豪華賞品がもらえるという、 コンテスト形式のお遊びだったんですね。 詳しいことは、また、明日、ご紹介いたしましょう。

10月27日(火)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

今日のお話は「切りたくもあり 切りたくもなし」
川柳はもともと「前句付」と呼ばれる、 言葉遊びから始まったもの。 五・七・五・七・七の、後ろの「七・七」にあたる部分が 問題として出題され、その前半部分をいろいろ考えて 工夫してこしらえる、というわけです。 たとえば、本日のテーマであります 「切りたくもあり 切りたくもなし」、 この前句付けとして、作られたのが、 「泥棒を とらえてみれば わが子なり」 続けてみると「泥棒を とらえてみれば わが子なり 切りたくもあり 切りたくもなし」と、こう、来るわけです。 江戸時代「前句付」が盛んに行われるようになったのは、 宝暦から明和、安永にかけて。西暦で申し上げますと、 十八世紀後半、一七六〇年から八〇年ごろにかけて。 田沼意次が老中を務めていたこの時期、 江戸に文化の花が咲き誇っておりました。 先日ご紹介した「蘭学」が盛んになったのと、 ほぼ同じ年代でございます。 この頃の「前句付」、どのように行われていたでしょう。
江戸市中には、たくさんの前句付のお師匠さんがおりまして、 それぞれが主催のイベントを実施しておりました。 中の一人で、もっとも有名なのが「柄井川柳」 (からい・せんりゅう)先生という方。 この先生の句の選び方がまったくもって見事であり、 応募数も群を抜いておりましたので、 後に「前句付」のジャンルそのものが、先生のお名前をとって 「川柳」と呼ばれるようになった、というわけなんですね。 では、この、柄井川柳先生の前句付イベントが どのように行われていたかを、ご紹介いたしましょう。
開催時期は、毎年八、九、十、十一、十二の五ヶ月間。 この間、月に三回、「五」のつく日に、 優秀な句を集めた刷り物が刷り物として発表されました。 お題は五つ、この中から好きなものを選んで句を作れば いいわけですが、前の年から発表されておりますので、 考える時間はたっぷりございます。 参加者は、一句につき、十二文…現在の三百円程度でしょうか、 これを支払って自分の句を提出いたします。 提出先は、江戸市中にたくさんあった取次店。お茶屋さんや、 髪結いさんなどが取次を兼ねることもあったようです。 現在の「toto」のようなものですね。 一等に入選すると木綿一反と賞金五百二十四文、 だいたい一万五千円相当を手にすることが出来ました。 一番下の「佳作」は二十四文で、参加料の二倍。 これはまあ、宝くじの末等のようなものですね。

10月28日(水)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

今日のお話は「花嫁は こわく うれしく はずかしく」
今も昔も、新婚さんというのは、…いいものでございます。 川柳の中にも、新妻や新婚所帯をテーマにしたものが たくさんございまして、たとえば、本日のタイトル、 「花嫁は こわく うれしく はずかしく」 これなど、非常に含蓄のある、いい句でございます。 とにかく「恥ずかしがる」のが、川柳の中の新妻で、 「湯殿の戸 開けるたんびに 嫁しゃがみ」 …まあ、そんなところ、あまり開けたり閉めたりするのも、 どうかと思いますが。 「口説かれる ように花嫁 脈を見せ」 お医者さんに脈を診てもらうときも、 恥ずかしそうにおずおずと手を差し出す、その様子が まるで口説かれているようだという、観察の細かい句です。 花嫁がなぜ恥ずかしいのかと申しますと、 それはもう、直接、艶っぽい話になって参ります。 このあたりを、面白おかしく表現するのも、 川柳の特色のひとつ。 「あら世帯(じょたい) 何をやっても うれしがり」 気持ちはわかりますね。
「宵よりも 今朝かむりたき 綿ぼうし」 綿ぼうしは、花嫁さんが被る、アレですね。 目深に被りますと、周りはほとんど見えないそうでございます。 夕方から夜に行われた婚礼の席で、身に着けていたわけですが、 それを一夜明けた今朝、被りたいものだという。 …今どきは、こんな純情な花嫁さんなど、 もうどこを探してもいないような気がいたしますが…。 ただ、このあたりなど、まだカワイイ方で、 もっとストレートな表現で、お昼前に紹介するのも、 いかがなものか…と思われるような句も、たくさんございます。
「あら世帯 いかなこっても 昼日中」 川柳の場合、「あら世帯」といえば、こういうものだ…という お約束のようなものがありますので、 これは読む人を嬉しがらせる、一種のフィクションなんですね。 こういうのも、ございます。 「その当座 昼も箪笥の 環が鳴り」 箪笥の環、と申しますのは、箪笥の引き出しについている、 あの金具のことでございますね。 その当座、というのは、新婚ホヤホヤの時期。 昼も箪笥の金具が、カタカタカタ…と鳴ってしまう。 最後に、お昼も近いので、もう一句、ご紹介しましょう。 「飯よりも 好きなものだが 腹が減り」

10月29日(木)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

今日のお話は「よい後家が 出来ると話す 医者仲間」
ザ・ビートルズ、ジョン・レノンさんが歌っております 「ジョンとヨーコのバラード」。 歌の主人公であるヨーコ、小野洋子さんは、 世界で最も名高い未亡人、後家さんではないでしょうか。 川柳の世界では、「後家」さんも大人気の登場人物の一人。 現在よりも、平均寿命がぐっと短かった時代ですから、 旦那さんに先立たれた「後家」さんもまた、 現在よりもずっと身近な存在だったのでしょう。 今日のタイトルに使った川柳、 「よい後家が できると話す 医者仲間」。 あそこの旦那さん、私の診立てでは、 もう、そろそろ、いけないようだ。 でも、あのお上さんが、ふるいつきたくなるような、 そりゃいい女でねえ…などと、お医者さんたちが、 身内の気軽さで話している、そんな句でございます。 「よい後家が できると話す 医者仲間」 川柳ならではのブラックユーモアですね。 江戸の町で、男たちが、どんな女がいいか、 バカ話に興じています。
「純情な振袖娘がいいなあ」 「年増がいい」「尼さんもいいぞ」と意見が出ましたが、 「やっぱり後家さんじゃないの?」と一人が言うと、 そうだそうだ、みんな後家がいいと意見が一致。 で、中の一人が 「うちのカミさんも、早く後家にしてえなあ」と言ったという、 笑い話がございます。 「あれまでの 寿命と後家の ほぐれ口」 悲しみにくれていた後家さんが、 「うちの亭主も、あれが寿命だったんでしょう」と、 口がほぐれてくる。これは脈があるぞ、と、回りの男たちは 色めき立ってくるというわけですね。
「去るものは 日々にと後家は さかんなり」 こうなってくると、もう、歯止めは効きません。 「もう後家も やめねばならぬ 腹になり」 あんまりお盛んだと、こういう結果が待っている訳です。 一方で、もちろん、身持ちの固い後家さんもおりまして、 「おかしさは 皆が狙った 後家が剃り」 町内の皆が目をつけていた後家さんが、髪をおろして、 尼寺に入っちゃったんですね。 最後にもう一句、ご紹介しましょう。 貞女、というのは、夫に対して操を守る、 身持ちの固い女性のことでございます。 「惜しいこと いい後家なれど 貞女なり」 …まあ、余計なお世話ですね。

10月30日(金)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

今日のお話は「落語の中の川柳」
勉学に夢中で、固い一方だった若旦那を、 なんとか柔らかくしてくれと、吉原に連れて行く爆笑落語、 「明烏」。 八代目、桂文楽師匠の十八番でございます。 川柳は、落語の中にしばしば登場することで、 親しまれるようになった側面がありますが、 いま紹介された句、 「弁慶と 小町は馬鹿だなァ嬶ァ」 これなど、さしずめ、落語に登場する川柳の代表格。 武蔵坊弁慶や小野小町といった、歴史上の有名人が 題材になるのも江戸川柳の特徴なんですね。 弁慶は、「弁慶の一番勝負」などと申しまして、 生涯を通じ、女性との経験がたった一回しかなかったという。 また、小野小町のほうは、たった一度の経験もなく、 美しいままその生涯を閉じたといわれております。で、 「弁慶と 小町は馬鹿だなァ嬶ァ」 皆さんは、どう思われますでしょうか?
このほかにも、落語に登場する名作川柳はたくさんあります。 たとえば、 「町内で 知らぬは亭主 ばかりなり」 これは間男がテーマになっているわけです。 一方では、こんな句もありますね。 「女房の やくほど亭主 もてもせず」 まあ、大方は、こんなことなんでしょうね。 さて、現在でも有名な川柳の一つ。 「居候 三杯目には そっと出し」 居候、という言葉も、最近ではめっきり聞かなくなりました。 あまり遊びが過ぎて、家を勘当になった若旦那が、 出入りの職人の家などに置いてもらう、これが「居候」。 稼ぎがないので、家賃も食費も何も払いませんから、 食事でも、遠慮しいしい…ということになるわけです。
このほか、落語で有名な川柳を、 いくつかご紹介しておきましょう。 どれも解説の必要のない、わかりやすい名句でございます。 「色男 金と力は なかりけり」 「孝行の したい時分に 親はなし」 「へぼ将棋 王より飛車を かわいがり」 「碁敵(ごがたき)は 憎さも憎し なつかしさ」 「講釈師 見てきたような うそをつき」 いずれも有名な川柳でございます。 さて、今週の江戸川柳特集、最後に一句、ご紹介しましょう。 お正月に、この川柳を聞くと、本当にしみじみといたしますが、 また年末が少しずつ迫って参りました。 「元日や 今年もあるぞ 大晦日

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