落語の神様とも呼ばれた五代目古今亭志ん生。短気でズボラな性格とは裏腹に、噺の技術は非常に高く、落語協会の4代目会長まで務めた落語家です。
そんな彼の噺は、「落語をあまり聞いたことがない」という初心者の方にもおすすめ。今回は、特に面白いものを厳選してご紹介していきます。
目次
饅頭怖い(まんじゅうこわい)
落語の中でもっとも有名な話の一つ。五代目古今亭志ん生含む、数多くの落語家が演じています。
あらすじ
男たちが集まって、自分の怖いものが何かを言い合っていた。その中である男が「男のくせにそんなものが怖いなんて」と文句をつける。周りの者が「お前には怖いものがないのか」と聞くと、小さく「饅頭が怖い」と言って、部屋から出て行って寝てしまった。
そこで馬鹿にされた男たちは集まって、饅頭を買いあさり、次々と寝ている男の部屋に投げ込んだ。はじめは怖がる様子だったが「こんなものは怖いから食べてしまえ」と言って、饅頭を食べ始めた。
そこでようやく周りの者たちは、自分たちが男に騙されていることを悟った。そこで本当に怖いものは何だと質問をする。
強情灸(ごうじょうきゅう)
江戸っ子は銭湯でも熱い湯に入り「全然熱くない」と無理をする気質がありました。そんなキャラクターがよく活かされている話です。
あらすじ
よく効くが、あまりにも熱い灸をすえる店があった。ある男がそこに行き、先に並んでいた女に順番を代わってもらって、すぐに灸をすえることになった。
施術の前に「本当に大丈夫か」と確認されるも、そこは引くに引けぬということで、なんと30以上もの灸を一度にやることとなる。
あまりの熱さに飛び上がりそうになるが、周りの人が感心しており、順番を譲ってくれた女にも「こんなたくましい人のお嫁になりたい」と思われているのではないかと考えた。
この話を聞いた別の男が、そのくらいで威張るなと言い出し、もぐさを腕の乗せると火をつけた。あまりにも熱く脂汗が流れるが、「石川五右衛門は、油でゆでられたのに辞世の句を詠んだ」といって耐える。
火焔太鼓(かえんだいこ)
江戸時代から伝わる話ですが、五代目古今亭志ん生が手直しをして、彼が作り上げたといっても過言ではないほど形が変わりました。
あらすじ
古道具屋を営むある男は、商売が下手だったが、女房がしっかりしているおかげで生活ができていた。ある日、彼が古びた太鼓を仕入れると、それを見た女房が「また仕方のないものを仕入れてきた」と文句をつける。
その太鼓を売りに出そうと丁稚にハタキをかけさせたが、調子に乗ってそれをドンドンとたたき始めた。すると一人の侍が駆け込んできて、太鼓の音を殿様が気に入ったから売ってほしいと打診してきた。
女房に「そんな汚いものを売ったらはりつけにされんじゃないか」と軽口をたたかれ戦々恐々とお屋敷に招かれていくと、300両で買ってもらえることとなった。それまで見たこともないような大金に、思わず泣くほどである。
帰宅した男が女房に報告すると、そんな話を信じない様子であった。そこでもらった小判を見せると、ようやく納得し、よくやったとほめた。そして次は何を売ろうか二人で話し合う。
五代目古今亭志ん生の落語を楽しむ
今まで落語を聞いたことがない人は、自分が楽しめるかどうか心配に思うかもしれません。
しかし落語はもともと、庶民のための笑いの場。難しいことは考えず、気軽に触れてみてください。
特に五代目古今亭志ん生は腕が確かな噺家なので、初めての落語デビューにぴったりです。